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「え〜!え〜!え〜!」

 友人宅へ車で向かう途中。
前を走っている水色の軽自動車の後に、双葉の初心者マークが貼られている。そのマークの横には昔のタイプの高齢者マーク、いわゆる紅葉マークが並べて貼ってある。
『高齢者で初心者か?』
ま、無いことはないわなあ。運転免許を取得するのに年齢の上限は無い。
 近頃、高齢者に対する運転に対してえらく厳しい目を向けられている。が、この高齢者マークを見る度に、もっと年寄りに気を使ってやれやと思う。

 初心者マークは黄色と緑色のホントに若葉色。
それに対して、高齢者マークは茶色と黄色。どう見ても枯葉やろ。
 更に初心者の形はこれから元気に伸びていく矢印形。
一方、高齢者の方はどう見ても涙が落ちている、しずく形である。
 ここまであからさまにするか、と思うのは年寄りのひがみか。
『しかし、よう考えてあんのはわかるんやでえ』

 そんな会話をしていると、その二つのマークを付け、安全運転をしていた車は、いつの間にかいなくなった。
 替わりに、真っ赤な普通車が目の前を走っている。
 片側二車線の左車線を走っていると前方に四差路の交差点。
すると前の赤い車が右にウインカーを出す。右車線に変更するのかと思いきや、ウインカーを右に出したまま交差点に入る。
さらに右折ではなく、ナント反対に左折をするではないか!
「え〜!」「え〜!」
助手席に座っている奥様も思わず二人で叫んでしまう。(道路交通法第53条合図制限違反)
「なんちゅう運転してるんや!全く逆を出す?」
年寄りでもせえへんで!

こちらは、そのまま直進して通り過ぎるが、興奮冷めやまぬ。

 続いて次の交差点が目に入る。
右車線には白い普通車がこちらと並行して走っている。
 信号が黄色から赤色に変わったので、ゆっくり減速し横断歩道の手前で停車する。
が、並行して走っていた隣の白い普通車は、減速する事もなく、そのまま交差点に突入するではないか!
目の前の信号は赤色のままだ。
「え〜!」「え〜!」
『と、止まらんの!?」
またもや二人して絶叫する!
(道路交通法第7条信号機の信号等に従う義務違反)
 幸い、左右から交差点に入ってくる車も、横断歩道を渡る者もいなかった。
何故か、こっちがホッとする。
交差点を通り過ぎた白い車が、ようやく気づいたのか、驚いたのかその先で停車している。
 信号が青色になり、発車する。
未だ停車している白い車を横ぎると、よっぽど驚いたのか茫然自失状態。
大丈夫かと思いながらも、そのまま通り過ぎる。
 何もぶつかる事無く良かったわと他人ごとながらホッとする。

 普段ありえないシーンを続けざまに目の前で見て、今だ興奮マックスの奥様と私。運転しててこれだけ心臓バクバクしたことないわ。

 次の交差点、信号が赤色でまた停車する。
 今度の交差点はなんと6差路もある。どんな交差点かと見ていると目の前の信号が青色に変わった。
前にいたバイクが、一度発進したもののなぜか直ぐに止まる。
「?」
後ろから黒のワンボックスカーがせっついて、クラクションを鳴らしてくる。
前のバイクは停まっているものの信号は青だし、そのバイクを追い越そうと前に出た瞬間。
ナント、左から飛び出して来たのは、非常灯を点滅させサイレンを鳴らしてきた救急車!
「え〜!」「え〜!」
本日3度目の絶叫!
(道路交通法第40条緊急車妨害違反)
慌ててブレーキを踏み急停車!
脇の下からたらりと冷や汗が出る。
ブレーキを強く踏んだまま、前を横切る救急車を見ながら
「サ、サイレン聞こえた?」
と奥様に確認すると
「いいえ、聞こえなかった、、」
と目が点になっている。

何ちゅう日や〜!
スリル連続のジェットコースターにでも乗っているような気分。
まあ、誰も事故無く怪我せんでホンマに良かったけど、こんなにも続けて起こると、
「二度ある事が、三度あったけど、まさか四度目は無いよね?ね?ね?」
と隣の奥様に同意を求めようと覗き込む。

「ね!は、ええから、ちゃんと前向いて運転せんかい!」
「ハイ〜い」
(道路交通法第99条奥様命令遵守義務違反免許返納!)

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