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 ちいさなちいさな「ありがとう」

いやあ
世の中には たまに面白い場面がある。
それは大抵 しんどいことで、こころが弱っているとき出会う。
ほんま 笑えるくらい 神様は1パーセントのしあわせ感を
それはそれは 絶妙なタイミングでくれるものだと思う。
 もう あかん
限界を見て これ以上頑張れないと さーっと見ている景色の色が
変わる時。
あれほど 空の色 庭のあおさ ひとの語らい こどもたちのさんざめく声に こころ癒されてたのに さーっと引いて行くこころ。
波のようなこころ。電車の中で覚悟を決めた。いや あの事務所を
出てからか。

 もういい。
 もう 十分。

そう 観念した。
そして 家に着いて ぼんやりしながら ふと思った。
 「送らなきゃ、あの人に。」
昨日 注文した本が届いたんだ。
 切手 買いに行かなきゃ。
すると  夫が言う。
「切手買っといたよ」
 いやあ ありがとう。。
小さな小さな本を送るため やっとこころ立て直し 郵便局へ行けた。
17時を過ぎていた。明日から GW。もう 郵便屋さんもおやすみ。。
あのかたへ届かない。。。。そう 思いながら それでも送ろうと
向かった。 顔を上げると一組のカップルが 局の前に立って
おられる。閉まった扉に胸が痛い。
 「ああ 郵便局 もう 終わりですよねえ」とつぶやくと 彼女が 「ああ でもATMはあいていますよ」と答えられる。「えっ?」とわたし。
つぶやきに 応えられるとは思わなかったので なんかうれしかった。「そうですねえ、でも郵便なんです」「お休み中は 取りに来ませんよねえ」というと「いやあ そんなことないんじゃないですかあ?それに 今日は遅れてるかして まだきてませんよ、私たちも待ってるんです」と彼。
「ええ?そうなんですか?いやあ うれしいです。これ 大切なかたに早く届けたいんです」というと ふたりは笑って 「よかったですねえ、連休ですもんねえ」と。
みんなで笑いあいました。見知らぬ人たちです。 そのあたたかさ。
さっきまでの それとは真逆の殺伐とした同僚との関係の後味の悪さが消えていく。まるでラムネ菓子のよう。
 ここにはもう いられませんと管轄の上司にメールした。
なんと 見知らぬひとのあたたかさか。なんて 神様は素敵な時間の贈り物を下さるのだろう。
休み明け、異動か退職か。いずれにしても 結果が出るまで地獄のような日々が大口を開けて待っている。そんな恐怖の中 ひとさじの甘さ、素早く消えるラムネ菓子の甘さにしても 素敵な素晴らしい時間を得た日だった。

もし 心に留まって下さったら、、、本を出すと言う夢に使わせていただきます。