経済力がないせいでモラハラ夫と離婚できない主婦の日常③【超ショートショートまとめ】
料理中に手を滑らして指を切ってしまった。
「痛っ…」
小さく呻くと、夫とお義母さんが、
「おぉっ!?血が出てるぞ?」 「あらヤダっ」 と慌て始めた。
衝撃だった。
どうやら目に見える傷しか認識できないらしい。
あなたたちとの長年の生活で、私の心はもっと深く傷ついているのに。
〈玉中和子のプロフィール〉
地球人を調べにきたという宇宙人から様々な質問をされた。
震えながらも丁寧に答えている中に、印象的なやり取りがあった。
「『家庭』という集団単位は何だ?」
「子供を育てるための、両親を中心に構成される数人の集団、でしょうか」
「数人?なぜ皆で育てないんだ?」
「え~と……」
お義母さんに介護が必要になったとき、
夫は「母さんの面倒は自分たちで見る」と宣言した。
私は、(自分たちって言うけど、結局私一人でお義母さんの世話をすることになるんじゃ…)と嫌な予感がしていた。
しかし私は見当違いしていた。
現在私は、お義母さんだけじゃなく夫の世話もしている。
マイバックを忘れたのでビニール袋に大量の食品を入れて帰る羽目になった。
持ち手が指に食い込んで痛むが、両手が塞がっているので持ち替えられない。
夕日に照らされる人気のない坂道が、途方もなく長く感じられる。
なぜ毎日頑張っているのだろうと、蓄積した精神の疲労が自覚される。
年々、一息ついた後に立ち上がるのがしんどくなっている。
特にトイレに入ったときが問題だ。
四方を壁で囲われているトイレでは、夫と義母からの視線を感じないため、脱力し切ってしまう。
用を足した後、ただドアノブを眺める時間がある。
(この向こうに帰りたくない)と思いながら。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?