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読書感想文「何故エリーズは語らなかったのか」

ゴールデンウイーク連続投稿、4日目です。お付き合いいただき感謝です。

森博嗣氏のWWシリーズの最新刊。ネタバレを含んでいそうなので、未読の方はお気をつけてお読みください。

今回のテーマは多分「忘」

前巻で、グアトとロジに子供ができたことで、二人の考え方や行動が変わっていって、本人たちは当然のことながら至って真面目なんだけど、そこが可愛いやら可笑しいやら。
ロジに至っては、今まで無慈悲に始末してきた攻撃してくるロボットたちに対して哀れみ?同情?を感じ優しさを見せるようにまでなってしまっている。

親になって20年ほどの私から見ると、
「あなた(ロジ)も人の親になったんだねぇ」
としみじみと感じてしまう。(おばちゃん目線)
今までの、任務に実直で無慈悲なロジも好きだったんだけどなぁ。

子供という存在から「命」や「未来」が思考の中心となりつつあるグアト、当然その裏側に対する「死」や「過去」にも思い至る訳で。

誰かが死んだらその人は居なくなるけど、その人の周りの人たちの記憶には存在していて、周りの人たちが記憶を継承していく限りその人は死なない。記憶の中に生きている、という状況である。
でも人の記憶である、代を重ねる毎に薄れ、最後は光の散乱のように消えていく。

ではWWシリーズでは当たり前に存在している、ヴァーチャル空間ではどうなるのか?
ヴァーチャル空間でも人は死ぬことは可能だと思う。単純な方法であれば永遠にアクセスしなければ、それは死も同等と思われるだろう。
ではヴァーチャル空間にその人が居た/活動していた、という記録は?
ヴァーチャル空間はデータなので消えない。サーバがクラッシュしない限り永遠に記録は残っていく。

リアル空間を模したヴァーチャル空間で、リアル空間では消え行く記憶がヴァーチャル空間では記憶が永遠に残っていく矛盾。

きっと、もう少し先の未来には真剣に「忘れられる権利」を話し合わなくてはいけない世界になると思う。
じゃないと死んだ後も「思い出し笑い」ならぬ「思い出しきゃあ(赤面)」な言動/事象や、「中学生のころに書いた詩」なんかが残っているなんて、死んでも死にきれないでしょ?

あと読んでいくと、「すべてはFになる」が頭によぎることがあるかもしれません。私はありました。

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読了、ありがとうございます。
今日がお仕事の方、おつかれさまです。私もです。

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