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感染症導入

こんにちは、黒です。最近、ワーホリなど薬剤師と関係のない記事ばかり出していたので、薬剤師としても勉強はしているよって意味で勉強したことをまとめたいと思います。

かなり専門的な内容を個人的にまとめているだけなので、多くの人にとっては必要性がない記事です。ご了承ください(笑)。

感染症って何?

感染症の定義:体の中に菌やウイルス、微生物が侵入し、体の中で増殖し症状が出ること
体の中には実は菌がたくさんいる。例えば、お腹にいる腸内細菌叢は便を作って体を守ってくれる。ただ、症状が出ないから感染症ではない

難治性感染症の一例は術後感染症がある。例えば、筋肉の中に膿瘍ができる場合がある。細菌は何千種類といるが、筋肉の中に膿を作る菌は一定の相性がある。細菌と臓器は鍵と鍵穴である。

ということは臓器と菌を考えるのが抗菌薬選択に重要となる。


抗菌薬とは

抗菌薬はカビ(真菌)やウイルスにはほとんど効かない。とても基本なことではあるが、医療の現場ではこれがごっちゃになる。例えば、熱が出て、菌が悪さしているのかもしれないが、菌かウイルスか考えなければならない。

医療従事者は抗菌薬を出す以前に選択する部分から考えなければならない。例えば、20歳位で風邪症状が出るのであれば、原因はほとんどウイルス性のものが多い。

そうなると対処方法は対症療法でしかないので、咳→デキストロメトルファン、痰→カルボシステインのように免疫機能を助ける薬が処方される。しかしながら、まだ風邪をひいて抗菌薬が出る場合がある。

話が逸れるが、肺のレントゲンをみて、異常を見つける場合は、左右同じ濃さでないとならない。病院で医師の画像をみる機会があれば、ぜひ見てみると良い。

感染症の結果は約2日後にすぐ薬の選択が正しかったかの結果が分かる。逆に言えば、事態は急変するので、抗菌薬が効いていなかった場合は患者を命の危険に晒してしまうこともある。


抗菌薬の種類

抗菌薬はめちゃくちゃ数がある。どうやって覚えればよいかは、患者に頻繁に使用される薬剤から覚えた方が良い。その後に、難病に使われる抗菌薬などを覚えた方が良い。

頻度の高い薬剤はβーラクタム系は主役となる。これを押さえれば臨床で使う7~8割は判断できるようになる。以下では、βーラクタム系を中心として、覚える箇所をまとめていく。


ちょっと小話

ランソプラゾールという薬とメロペネムっていう薬がある。どちらもブロックバスターになっているベストセラーの薬だが、この2つの薬には大きな違いがある。

ランソプラゾールの適正使用は聞いた事がないと思うが、メロペネムの適正使用は聞いた事があるだろう。ランソプラゾールは1日何万錠1つの病院で処方されようが患者の副作用だけしっかり確認すればよい。

しかし、メロペネムが1日何万錠1つの病院で処方されたら止めなければいけない。片や患者の副作用モニタリング、片や病院全体の問題になるこの違いは何だろうか。

抗菌薬は、use it, lose it ルールがある。
これはyou use it, then you lose it.
何日も連続して使えば使うほど確実にメロペネムが効かない菌が残る。つまり使えば使うほど耐性菌が残る。これは国レベルの問題になる。

例えば、僕たちの体の中は先述した通り菌だらけである。それが何かの拍子で特定の菌が増え、症状が出ることを感染症というが、基本的に体の中にはほとんど耐性菌はいない。そこに抗菌薬を入れると極僅かだった耐性菌のバランスが変化する。

つまり、抗菌薬を入れると耐性菌のバランスが変化することがある。体の中で菌同士は仲が良いわけではない。感受性菌がたくさんいるときは耐性菌は大人しくしている。しかし抗菌薬で感受性菌がいなくなったらここぞとばかりに耐性菌が陣取り合戦を始める

つまり、抗菌薬を使うと耐性菌がメジャーになるチャンスを与えることになる。でもこれだけでは国レベルの問題になることに疑問を感じる人もいるだろう。問題なのは耐性菌は伝播するということである。

患者が治療のために抗菌薬を使用する→耐性菌を持つ→医師・看護師が体に触れたり、着替えをさせたりする→次の患者に向かう。もちろん、感染症対策は講じていると思うが100%はなく、すり抜けて伝播する。

その繰り返しにより、患者が転院などにより地域に広がる。つまり、菌は環境ですら変える力を持っているということである。これが胃薬や血圧の薬を服用継続しているからと言って効かない体質になることはない。

だから慎重に使用する必要がある。逆に上手くコントロールできれば、良い環境にも持っていけるということである。


抗菌薬の認識

以上のことからも、抗菌薬では新しい薬がでても喜んではいられない。常に耐性菌の問題が付いて回るからだ。国内の医療用医薬品の売り上げランキングというものがある。

抗菌薬はかなり使われるはずなのに、抗菌薬はランキングに挙がってこない。そこそこ薬価もあるはずなのにである。実は、抗菌薬は資本主義のビジネスでは上手くいかない。

なぜなら、売れれば売れるほど耐性菌の数を増やしてしまうので安易にたくさん作れないジレンマがある。では、薬剤師としてどうするかというと、今ある抗菌薬の耐性菌を増やさないことが大切である。

だから、20年後にはレジュメですら更新されていく抗がん剤と違い、抗菌薬の治療方針は変わらないだろう。今あるもので本当に適正使用ができていれば、既存の薬だけで多くの患者を救うことができる。

もちろん、耐性菌の問題は無くならないが、ある意味できるだけ使わないことが救うことに繋がる。だが、医師は患者を救いたいから、5%の可能性でも抗菌薬を使ってカバーしたいという人もたくさんいる。

そこの部分の衝突は難しいから、なるべく耐性菌を減らすことが患者安全の第一になる。耐性菌がいると治療効果が下がり、死亡率があがる。抗菌薬は菌を0にはできない。減らすだけで、完全に0にするのは免疫反応である。

薬剤師にできることは、耐性菌の少ない治療環境にして医師の治療成績を上げることが大事である。


抗菌薬の選ばれる条件

よく言われる感染症のロジックは、感染臓器、原因菌、抗菌薬の3つが挙げられる。菌は好きな臓器が決まっていて、抗菌薬は菌を殺せて移行性があるか考える。

さらにuse it, lose itの原則から無くなっても良い抗菌薬から使っていくことが重要である。つまり最小スペクトルのものから使っていく必要がある。そして菌について知ることである。


菌の簡単な理解

まずはグラム陽性菌グラム陰性菌である。グラム陽性菌はペプチドグリカンが厚いので良く染まるが、グラム陰性菌はペプチドグリカンが薄いので少ししか染まらない。これは抗菌薬を選ぶために必要である。

臨床でよく出てくるのは、グラム陽性球菌グラム陰性桿菌である。そして薬が効きやすい順で並べることにする。

グラム陽性球菌
以下に示すのは上に行くほど抗菌薬が効きにくい。
代表的な菌のみ載せる。耐性菌は除く。
・ブドウ球菌(MSSA)
・連鎖球菌(連鎖球菌、肺炎球菌)

グラム陰性桿菌
以下に示すのは下に行くほど抗菌薬が効きにくい。
代表的な菌のみ載せる。耐性菌は除く。
・腸内細菌科細菌(PEK、non-PEK2つに分けて覚える)
・ブドウ糖非発酵菌(緑膿菌)

ここでPEKについて簡単に触れておく。3つは別格で覚える。
P:プロテウス
E:大腸菌
K:クレブシエラ
なぜ、PEKがまとめられているかというと、一般生活の中でも感染を起こすぐらい毒性が強いからである。ただ、抗菌薬は結構なんでも効く。

non-PEKは覚えられない場合があるのでPM-SECで覚える。
non-PEK=PM-SECである。
P:プロビデンシア
M:モルガネラ
S:セラチア
E:エンテロバクター
C:シトロバクター

これらは院内感染で問題になる場合が多い。そして抗菌薬はPEKより選びにくいのが特徴である。

この上のものをまとめたものが下になる。

・ブドウ球菌(MSSA)
・連鎖球菌(連鎖球菌、肺炎球菌)
・スタート地点
・PEK
・non-PEK
・緑膿菌
・耐性菌(ESBL産生菌)

抗菌薬に強い弱いはない。スタート地点から手が伸びるか伸びないかである。薬剤師は診断はしないが、診断プロセスは知っておくべきである。

第一世代セフェム(セファゾリン:CEZ)

ブドウ球菌(MSSA)
・連鎖球菌(連鎖球菌、肺炎球菌)

・スタート地点
PEK
・non-PEK
・緑膿菌
・耐性菌(ESBL産生菌)

太字のものに効くのがセファゾリンである。これはグラム陽性菌には手が伸びるが、陰性菌はPEKにまでしかいかない。だが市中肺炎にまでカバーできる。

第二世代セフェム(セフォチアム:CTZ)

ブドウ球菌(MSSA)
・連鎖球菌(連鎖球菌、肺炎球菌)

・スタート地点
PEK(Han-PEK)
・non-PEK
・緑膿菌
・耐性菌(ESBL産生菌)

セフォチアムは手の長さは第一世代と変わらないが、あえて言うならHan-PEKに手が伸びる。Han:Haemophilus influenzae, Moraxella spp
これらは肺炎や中耳炎を起こす。耳と鼻と肺は繋がっているので同じ起因菌になることが多い。

第三世代セフェム(セフトリアキソン:CTRX)

ブドウ球菌(MSSA)
・連鎖球菌(連鎖球菌、肺炎球菌)

・スタート地点
PEK(Han-PEK)
non-PEK
・緑膿菌
・耐性菌(ESBL産生菌)

第三世代が肝で、CTRXとCAZを分けることが重要である。ここを分けないと抗菌薬の理論は崩壊する。まずはセフトリアキソンから。CTRXは始めてnon-PEKまで手が伸びるので、院内で起こした感染にとても使える。

第三世代セフェム(セフタジジム:CAZ)

・ブドウ球菌(MSSA)
・連鎖球菌(連鎖球菌、肺炎球菌)
・スタート地点
PEK(Han-PEK)
non-PEK
緑膿菌
・耐性菌(ESBL産生菌)

緑膿菌にまで手が伸びるようになったのがCAZである。セフタジジムは緑膿菌もカバーするが、陽性菌の手はばっさり切れる

第四世代セフェム(セフェピム:CFPM)

ブドウ球菌(MSSA)
・連鎖球菌(連鎖球菌、肺炎球菌)

・スタート地点
PEK(Han-PEK)
non-PEK
緑膿菌
・耐性菌(ESBL産生菌)

そうすると陽性菌もカバーしてよって声が聞こえてくるので第三世代と比べて陽性菌もカバーしたのがCFPMである。全部手が伸びるように見えるが、耐性菌の中でもESBLには手が伸びない。

つまり、セフェムを全て分解するのがESBLになってくる。ESBLの特徴として、PEKが耐性化することが多い

カルバペネム(メロペネム:MEPM)

ブドウ球菌(MSSA)
・連鎖球菌(連鎖球菌、肺炎球菌)

・スタート地点
PEK(Han-PEK)
non-PEK
緑膿菌
・耐性菌(ESBL産生菌)

全てを網羅するのがカルバペネムである。裏を返すと、最後まで温存したい抗菌薬はカルバペネムである。


まず患者情報で確認するもの(模擬症例)

年齢性別である。例として尿路感染症ではないかと医師に言われた架空の患者がいるとする。主訴は腰と背中の痛み。既往歴は右腎結石(5年前)と糖尿病(HbA1c:8.8)まずは本当に尿路感染症かプロセスを確認する。

55歳女性
#1 腰背痛(持続的)
#2 悪寒
#3 糖尿病
#4 右腎結石
#5 尿中白血球
#6 亜硝酸陽性

尿路感染時に確認する部分
・発熱があるかどうか
・排尿時痛
・頻尿かどうか
・尿の色
・細菌の検査結果

潜血2+:ネフロンの血管が破れたら出血→糸球体の炎症
尿タンパク±:腎の異常なし
白血球2+:感染症起こしている
亜硝酸2+:腸内細菌科細菌いれば+

そして、この患者は意識はぐったりしており、緊急の治療が必要でありそうな様子である。

ここで一旦腎臓の話。尿路感染症は広義なのでもっと確実に臓器を絞る。腎臓と腎盂の境目はないので、ここに炎症があったら腎盂腎炎になる。尿管は感染症をおこさない。菌は単なる管は好きではないから。

膀胱炎、前立腺炎があり、精巣炎はおたふくだけ、尿道炎は性感染症という風に基礎疾患のあるなしがとても重要である。

尿路感染症に関しては、単純性と複雑性の2つしかない。今回の場合だと単純性尿路感染症は簡単に言うと若い女性の膀胱炎である。起因菌はPEKである。

複雑性は閉経前の女性以外の尿路感染症と覚えるのが良い。起因菌はPEK、non-PEK、腸球菌、緑膿菌など色々ある。

なので、外来で閉経前の若い女性がきたらとりあえずPEKに絞って治療をするのが良いのではないだろうか。複雑性はどうするべきか。言っても大腸菌が1番可能性が高いのは変わりないので、大腸菌を想定することが重要になるのではないだろうか。

話に戻ると、今回の場合は病原体を考えて、エンピリックセラピーを行う。疫学とすぐに入手できる情報(試験紙、グラム染色)を使って行う。今回の場合は亜硝酸が2+なのでPEK、non-PEKをカバーできる薬剤が適切か

ここで一旦考えてほしいのは、CTRXだったり、CEZという選択肢が出てくるだろう。耐性菌を考えるとPEKまでカバーするCEZもありだし、念のためnon-PEKもカバーできるCTRXでも良いだろう。

選んでほしくないのはCAZやCFPMであろう。緑膿菌までカバーしたとしても今回は腸内細菌科細菌ということが判明しているので、そこまで手を伸ばす必要性がない。

ここで患者のqSOFAを診てみる。今回、菌が判明する前にエンピリックセラピーを行っているので、qSOFAを根拠にして提案する。

qSOFA 敗血症かどうかの基準
①収縮期血圧100mmHg以下
②意識障害(ぐったりしている)
③呼吸数22回/分以上

≧2点で死亡率10%の院内死亡率を持つ。今回の患者は2点だった。そしてリンパ球、CRP、WBC、腎臓の画像診断なども合わせて、細かい部分は省略するが、結局、抗菌薬は何を選ぶべきだろうか。

qSOFAと血圧が下がってショックの時、抗菌薬の投与が1h遅れると7.6%生存率が低下することを根拠にして提案する。そうすると、ESBLもカバーできるMEPMも候補に挙がって提案できるのではないだろうか。

耐性菌を作らないことも大事だが、この患者の菌を判明するまで3日間待てるかと言われれば死ぬ可能性がある。であれば、まずは患者を救う観点で広域スペクトルの抗菌薬を選択することもある。

後日、MICの判定結果が出た。セファゾリンにSが出た。そうするとセファゾリンにデ・エスカレーションしていくことが大事である。

あくまで一例である。ちなみに判定がSであればMICの大きさは関係ない。
なぜなら薬によって投与方法や投与回数が変わってくるからだ。あくまでSならその薬剤が使用できる。

であれば、判明後はスペクトルができるだけ狭い薬剤を選択するのが最善手ではないだろうか。

とくに病院薬剤師など医師のカルテ情報を共有できる場合であったりするときは薬剤師による薬の提案は大きな力になる。そのためにもスペクトルや、耐性菌も考えながら薬の特徴を知っておくことは薬剤師に必須である。


















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