絵ができるまで⑥
これまで絵ができるまでの記録を連続して投稿してきました。
絵ができましたので今回で終わりです。
不定期になりますが、これからも制作記録の記事を書いていこうと思います。
これまでも電線を主題にした制作をおこなってきました。
私は現実の都市を取材して都市を築き暮らす私達について考えることに関心があります。
この電線の連作は密集する電線が植物の蔦や根など自然界の形態へと近似していく様子に興味を持ち、始まりました。それは意図せずに人工物が自然の形へと還ってしまった、人工と自然との境界が曖昧となっている瞬間です。
電線を醜い物とする意見も多くあります。電線のどのような点が嫌悪の対象となっているのでしょうか。
現代都市の基盤となる電力網の末端である身近な電線は、しばしば毛細血管と例えられます。細やかに各住宅や施設へと電力を供給するその役割に伴って形態までもが毛細血管と重なります。そのような形態を持つ電線は私にとっては興味深い対象です。動物において血管は皮膚の下で守られるべき器官ですが、電線は都市の表層にむき出しで設備されています。
本来内部化されるはずの電線が垣間見せる生き物の生々しさ、露わとなる生への切実さが都市には似つかわしくないのでしょう。自然での天敵に怯える厳しい生存競争や、不条理な自然災害の力から脱出したかのような感覚を都市生活は与えてくれます。ですが私達は私達のままであることを電線は示します。
今回は見上げるような視点で電柱と電線を描きました。
都市においての人間像が揺らぐ電線は興味深い題材としてこれからも観察していきたいです。
「絵ができるまで」の記事にお付き合いいただいた方々、ありがとうございます。
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