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VRワークショップをして何が分かったか

■はじめに

こんにちは橘田です。このノートでは、2023年10月24日のサイエンスアゴラオンラインでVRワークショップを実施した「スナック☆mirai」について、実体験を基に振り返りを綴っていきたいと思います。




■未来洞察×VRで何がしたかったか?

未来洞察は平たく言えば、未来のことを考える活動です。
私たちは、未来を考える空間を用意し、複数人の参加者で代替的な未来や望ましい未来について話し合っています。
そこになぜVRなのか?正直に言うと私自身もまだ明確化できていません。ただ、変わらずあるのは何か強く惹かれるものがあり、その答えに近づくためにVRワークショップをやってみたというのが正直なところです。

この記事を読んでいる方は、未来洞察に興味があるか、ワークショップやデザインに興味がある方だと思います。VRもまだ一般的に普及しているとは言えませんので、VRの一般論から整理して、今回の企画を振り返ってみようと思います


■VRでできると言われていることと未来洞察との関係

VR(Virtual Reality)は、仮想現実を体験する技術といわれています。
その特徴の1つは没入空間での体験にあります。従来のインターネットが画面越しに顔(フェイス)を接しているインターフェースであるのに対し、仮想現実では空間(スペース)に没入したインタースペースである、と表現できます。身体が空間に入っているように感じるので、より臨場感の高い体験が得られることが特徴です。

では、それが私たちの未来洞察にどう落ちてくるのかというと、2つの側面があると思います。
1つは未来を体感するためのメディアとしてのVR
もう1つは想像した未来を形にする創作空間としてのVRではないかと個人的には思っています。この2つの機能について、実際にやってみてどうだったかを体験記として記しておきます。


☆スナックへの来店イベントとしてアレンジしてみた!

兆しカードから代替的未来を発想するという構成自体は、通常のワークショップと大きく変わっていないのですが、その構成全体をマルっと「スナック☆mirai」への来店体験としてアレンジしました。

参加者の方々に体験してもらうにあたり、未来洞察がどうとか、私たちがどういう組織だとか、手法はこうだとかの話は一切しませんでした。あくまでもスナックへの来店であり、未来の兆しをお店のメニューとして、お客様がそれを味わうという設定で行いました。

実際その雰囲気がどこまで作用しているかは対照実験をしてみなければ正確には言えませんが、10年以上先の未来の可能性について話すという非日常的な行為ながらも、参加者の方々はスムーズにお話されていました
日常と異なる空間に包まれる状態やアバターになること自体、良い意味で浮世離れする作用があるので、こういった遊び心がある体験にアレンジしてみたのは想像力を刺激する意味では良い設定だったのではないかと思います。


スナックで兆しカードを注文する様子


☆付箋を使わずに着想を絵として定着してみた!

アイディエーションといえば付箋ですよね。対面でもオンラインでも、物理付箋やデジタル付箋はおなじみではないでしょうか。
しかし私が知る限り、VRの中にはテキストを打ったり、付箋をペタペタと貼ったりといった行為が快適にできる環境がまだ整っていません。いろいろと試しましたが、どれもVRならではと言えるような水準の付箋体験を作ることができず、最終的には付箋を使わないプログラムにしました。
振り返ってみれば、付箋はいわゆるオフィスワークを想起させるものなので、スナックの店舗イベントとして成立させる上ではなくして正解だったのではないかと思います。

ただそれだと、着想した未来のイメージを定着させるものがありませんので、代わりに使ったのは絵です。
兆しカードから発想する未来のイメージを参加者の方に語ってもらい、その時に生まれる新しい言葉や表現を、BingAIに「○○な絵を描いて」と依頼し、その場で生成された画像をVR空間に表示して全員で鑑賞しました。

これが結構盛り上がりました。絵によって発想が広がるのと、生成された絵が想像とズレている部分もあり、その違いについて話すことが面白かったです。
これは、創作空間としての機能と、その絵を媒介にしてまた自分の中のイメージを感じ取るメディアとしての機能の両方が高まっているように感じられました。


生成された絵を鑑賞しながら対話する様子


☆集合写真撮ってみた!

VRChatでは写真文化が根付いています
きれいなワールドも沢山ありますし、アバターの服を着せ替えてファッションを楽しむ方もいます。また、VRChatで開催されるイベントでは最後に集合写真を撮るケースが多いようです。

撮った写真を見返すと、風景だけでなくその時の自分のアバターがそこに写っていることで「ああ確かに私はこの時ここにいたんだ」という実在感があります。

ですので、スナック☆miraiでも、未来の可能性を探索した後は全員で集合写真を撮りました
写真撮影はとても大事な体験だと思います。
準備段階でも、何度か運営メンバーだけで最後に集合写真を撮っていたのですが、実験が失敗して「また思い通りにならなかった」「もうだめだ」と暗い気持ちになることがあっても、最後に気持ちを奮い立たせて「最後に集合写真撮りましょう」と言うと、少し元気が出るのです。
そしてなぜか、後で見返すと「大変だったけど、いい思い出だったな」と感じるのです。

思えば昔のワークショップをわざわざ思い出す体験ってそうはないと思うのです。「自分の口から言った」ことを思い出すきっかけが余韻として残るのは良いなと思います。


最後はみんなで集合写真


☆VR空間なら飲み会もできる!

多様な参加者に対し、未来を考える機会を開いていくには、今までとは異なるアプローチが必要です。
未来を考える体験も、楽しくなければ誰も続けたいと思ってくれません。
だから、最初と最後は楽しいことでサンドイッチすることが重要だと思います。

理想のイメージは「お祭り」です。
太鼓の音が聞こえると、何があるかを知らなくても、「行ってみるか」という気になりませんか?子供の頃、お祭りにいって屋台でおいしいものを食べたり、欲しいおもちゃを買ってもらえたりした楽しかった原体験が大人になっても記憶の奥底で影響しているのだと思います。

それと同じで、未来を考えることを社会に開いていくには、楽しい記憶や体験の積み重ねが大事だと思います。
そんなわけで、スナック☆miraiの店舗の外側には飲み会場を用意しました。参加者の方々もお誘いして、皆で小一時間ほど楽しい時を過ごしました。これも写真撮影と同じ話かもしれませんが、「あんなことあったよね」と思い出として残るアクティビティがしやすいのもVRの良さだと感じました。


飲み会で参加者の方とツーショット


■結局何が分かったか?

未来を体感するメディアとしてのVRと創作空間としてのVRについて振り返ってみましたが、どちらも私たちの想像力を高めてくれることは確かだと思いました。
そして、外せないのは集合写真や飲み会にあるような情動的な体験の実在感で、それがあるからこそ個々の体験がちょっと思い出深いものになるというか、心に残る記憶になるのだと思います。

思えばオンラインワークショップが当たり前になって、扱える情報量は対面よりも向上し、移動を伴わずにプログラム設計できて、複製保存も思いのまま。その利便性には随分助けられてきたと思います。
しかし、ビデオ会議とオンラインホワイトボードを組み合わせて「お顔を拝見しながら対話しています」と言いつつも、実のところホワイトボードばかり見ているのではないでしょうか。
ワークショップの主人公は人なのに、ホワイトボードをずっと見てるって、なんだか大切なものを忘れている気がしませんか?私たちは体を使って未来を感じ、そこに向かって生きるのですから。

これからも未来を考えることが、より自然な行為になるように、さまざまな活動を続けていきたいと思います。それではまた。


最後になりますが、VRでスナック☆miraiのお客様として参加くださった方々には本当に感謝です。この場を借りてお礼申し上げます。


※出展が決まった時の記事

※準備をしている時の記事



この記事を書いた人
橘田
ゆとりと遊びに溢れた自然が好きです。隙間や端っこを見つけて、そこで落ち着く傾向があります。関心…子育て/世代間ギャップ/VR/サブカルチャー/美味しいもの/キャンプ/虫取り

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