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『結局、あらゆる物事は、自然発生的に始まることが、一番長続きし、強い。』

「お店を自分で始めるなんてすごいね」とよく言われるのですが、謙遜ではなく、自分ではあまりそう思わないのが正直な気持ちです。

反対に、私をよく知ってくださっている人には「ヌルっと起業したね」と言われました。この表現、とても好きです。

私の営んでいる住職書房は、ゲストハウスだった場所を古本喫茶とシェハウスに作り替えたものです。まさに空いた隙間にヌルっと入り込むようにして始まりました。

一時的なブームで消費されるのではなく、ヌルヌルっと細く長く続けられるような店を目指したいと思っています。

『マイペースといえば、聞こえがいいですが、本当にマイペースだとたぶん沈んでいきます。なので、僕は水面から口だけ出して一生懸命足をバタつかせているのです。』

細く長くとは言っても、細くなりすぎて最後には消えてしまってはいけません。実際、消えないために必死です。お客さんがお店に来ないときはネットで古本を売ったり、喫茶の新メニューの開発、住人の募集、そもそもはじめての個人事業主で分からないことだらけ。息つく暇もありません。

それでも、変に焦ったりして、並べたくもないような本を並べたり、ぎゅうぎゅうに住人を住まわせたりはしたくないのです。

消えないために必死だけど、焦ってる感じを悟られたくなかったり、かといってお客さんが来ないと何をしていいか分からなくなる。そんな時に本を読んで文章を書いたりしております。せっかく書くのなら誰かに読んでもらえたらと思い、このような形で発信しております。

『いつまでもあると思うな、店と親』

私は買い物は投票だと思っています。残ってほしいお店に投票する感覚でごはんを食べたり物を買ったりします。なので、そこに安いとか高いとかいう基準はあまりありません。もちろん誰だって安くておいしいものが食べたいのは当然です。だからといってマクド(マクドナルド)に行列を作るような人には、私はなりたくない。

『その最後の日の惜別に満ちたものすごい売り上げを見て、店主は思うかもしれません。いつもこれぐらいの売り上げがあったらこんな日は迎えずにすんだのになぁ。』

紳士服屋って、何回閉店すれば諦めがつくのでしょうか。

人間は(日本人は?)限定とか、最後のチャンスとかに弱いのは分かります。実際に、私の店でも期間限定で京都のコーヒー豆を使ったり、新メニューもどんどん開発したりしています。

しかし、お店全体として考えたときに、特に古本屋なんかは常に開かれていて、日常の中にこそあるものだという意識があります。週末限定の営業の方が効率は良いのかもしれませんが、細く長く続けるためには、いつでも開いているお店を目指すべきだと思っています。


引用:山下賢二・松本伸哉『ホホホ座の反省文』ミシマ社

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