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なぜ『鬼滅の刃』は幼い子供にまでウケているのか、考察してみた

前回書いた文章(「鬼滅の刃―遊郭編―」について)で、「小学校低学年や未就学児にまで人気が広がる」ことへの思いなどを書きました。

今回は、そもそもなぜ「鬼滅の刃」が小学校低学年や未就学児にウケているのか、自分なりに考察してみようと思います。

私はストーリーと舞台設定、あとは作者独特のセリフ回しと、無惨様の最恐なのに小物感が好きです。
アニメ版は作画と音楽の良さと、原作への理解度の高さが分かる演出と脚本が好きです。

「エヴァ」「進撃の巨人」「呪術廻戦」はこの年齢にはウケません。「呪術廻戦」は週刊少年ジャンプの読者層に入り始める小学校高学年くらいになるとウケる子もいると思います。
「幽☆遊☆白書」が中二病の元祖と言われるように、ジャンプは中高生をメインターゲットにしていると思いますが、アニメの影響で小学校高学年もジャンプを読みます(「銀魂」の銀さんや「こち亀」の両さんは、いい大人になってもジャンプの愛読者です。ある意味ブレがないように思えて、素敵な生き方をしているように見えます)。

この年齢の幼い子供にも人気が出た深夜アニメは過去にもありました。例えば、「ハレ晴レユカイ」(涼宮ハルヒの憂鬱)は小学校低学年にもウケましたが、京都アニメーションの素晴らしい作画技術からなる「ハルヒダンス」と呼ばれたリズム感のある楽しげな動きが、ウケたのだと思います。


結論から言うと、この年齢の幼い子供は「鬼滅の刃」の「主要キャラクター」にウケていると考えます。

「炭治郎」はアンパンマン並に優しく強いです。
親なら安心するほど真面目で行儀よく、家の手伝いもできます(「炭治郎」のような礼儀正しい振るまいができる子供は大人から褒められると思います)。
人への想いやりがある行動もとれる、清々しい性格の長男であり、主人公です。
なお、「鬼滅の刃」のキャッチコピーは「日本一慈(やさ)しい鬼退治」ですが、「慈しい」のは「炭治郎」が主人公だからです。

「禰豆子」はプリキュア並にかわいく強いです。
性格は素直で優しく、家族想いの妹で、頼れる兄である炭治郎を慕っています。
炭治郎からは大切にされていて守られています。
また、鬼にさせられてかわいそうですが、彼女は耐えて、鬼だけど人を守ります。
アニメ19話でお母さんの呼びかけに応じて、相討ち覚悟の兄を救うために覚醒して、血鬼術『爆血』を使ったシーンには感動しました。彼女の血鬼術は鬼にしか危害を加えません。

「善逸」と「伊之助」は見た目が分かりやすく、コミカルでバカな行動もよくして、面白い存在です。
ただ、二人とも鬼との戦いでは技がカッコよく、炭治郎と同じくらい強いです(「善逸」はずっと寝てたらいいんじゃないかという声に応えるのが遊郭編です)。
彼らは友人であり仲間である炭治郎を慕っており、炭治郎も二人を頼りにしています。
真面目な炭治郎がこの二人に振り回されているのを見るのは楽しいです(「クレしん」で「しんのすけ」に振り回される「風間くん」と同じです)。
あと「善逸」は禰豆子が好きなことを公言しており、禰豆子を率先して守ります。

「義勇」や「しのぶ」もウケているんですよね…おそらくお兄さん・お姉さんキャラ扱いされているのだと思います。
二人は炭治郎達より少し年上で、炭治郎達よりも強いです。炭治郎達に優しく、ピンチの時に助けてくれる先輩です。炭治郎は二人を尊敬しています。
あと「しのぶ」さんは現代で言うと「薬剤師」であり聡明な人です。物腰が柔らかく頭が良さそう(キレたら怖そう…)です。

子供向けのDX日輪刃の第2弾が「胡蝶しのぶ」の刀なので、「しのぶ」さんは人気だなと思います。
「禰豆子」は格闘タイプなので… 竹筒で。

以上のような感じで、主要な登場キャラそのものにウケている(感情移入している)と思います。
単に必殺技を真似るだけでなく、お気に入りのキャラそのものを真似る傾向が強いように思います。


アニメは色々な人食い鬼が出てきて炭治郎達が戦うのをヒーロー物の感覚で見ていて、ダークでレトロな雰囲気は「まんが日本昔ばなし」を見る感覚で楽しんでいるんだろうなと思います。

たぶんストーリーは理解できていないと思います(「舞台設定」以前の問題で、そもそも「炭」が何かすら分かっていないと思います)。
私はマンガから入っているので、ストーリーの中でキャラクターを把握していますが、この年齢の子供とはここが根本的に違います。

ただ、鬼も元は人で最初から悪くなかった者もおり、炭治郎がやっつけてから最後に許してあげていることは理解しているかもしれません(鬼にとっても「救い」になっていることまで理解できているのかは分かりません)。

「許す」のが「アンパンマン」ぽいと思います。
「アンパンマン」は未就学児のウケがハンパない作品です(「アンパンマン」の作者である、やなせたかし先生は偉大です)。
「アンパンマン」が未就学児にウケる理由として、丸い顔のフォルムという見た目がよく挙げられますが、私はそれだけでなく「罰を与えるが罪を許す強く優しい存在」というキャラクター性が大きいのではないかと考えます。

「アンパンマン」は、悪さをして迷惑をかけた「バイキンマン」を一回パンチして星にすれば必ず許します。追い打ちをかけたり、粘着して家にまで押しかけることはせず、悪さをしていなければ「バイキンマン」に普通に接します。「バイキンマン」がピンチなら助けます。
その優しさにつけこまれ、大変な目にあわされた時でも、一回パンチして星にすれば「許してくれる」のが「アンパンマン」です(「パンチ」も「バイキンマン」を吹き飛ばす程度で、次の話には「バイキンマン」は何事もなかったかのようにピンピンしています)。

子供は怒られるのが恐く、悪いことをしたり迷惑をかけたりしても、怒られるのは一回だけで済んで、後は優しくされたいという心理が働いているのかもしれません。

あと「炭治郎」と「アンパンマン」は、真面目で行儀よく、家(アンパンマンの場合はジャムおじさん)の手伝いができており、慕われている点も似ています。

リーダー「煉獄」さんは、子供にもウケやすいかなと思います。
忍者「宇随」さんは、子供にウケない気がします。ただ、fateで鍛えられたufotableのバトル演出で、子供も夢中にさせるかもしれません。
天才「無一郎」は、子供にウケるかもしれません(炭治郎と年齢が近く「時透君」と君付けで呼んでいます)。ただ、刀鍛冶の里編の敵となる鬼は厄介ですがショボイです。ベタですが、「無一郎」は、未完成の天才少年が格上で熟練の強敵に挑む構図になっている、無限城編での戦いが一番アツいです。

ジャンプの主人公は「煉獄杏寿郎」や「時透無一郎」のように父親(又は祖先)から強いパターンもありますが、炭治郎の父親(炭十郎)は「炭作り職人」であり、炭治郎自身も「炭売りの少年」でした。
竈門家は先祖代々「炭焼き」を生業にしてきたという平凡な家系で戦闘とは無縁ですが、「ヒノカミ神楽」という舞と太陽が刻まれた「耳飾り」を受け継いできました。
この主人公の設定も興味深いです。
主人公設定が近いのは、「ヒカルの碁」の「進藤ヒカル」かなと思います。サラリーマン家庭の勉強が苦手で無鉄砲気質の小学6年生「ヒカル」は、祖父の家で偶然見つけた古い碁盤に憑く、平安貴族の霊「藤原佐為」に出会い、囲碁を始めます。「ヒカル」の家族は囲碁界と無縁(じーちゃんがテレビで見る程度)です。
親や先祖の描写がない「緋村剣心」のような主人公もいますが、家系を描写したが平凡そのものという主人公は、バトル系の少年マンガでは珍しい設定のように思います。
それでも炭治郎が強くなれた理由は、人を想う気持ちに他ならないと私は思います。

「鬼滅の刃」がストーリーにおいて家系上の因縁や先祖からの継受を重視しているのは、「ジョジョ」の影響かなと思います。「ジョジョ」よりも因果応報の要素が濃いです。


以上のとおり、「鬼滅の刃」が小学校低学年や未就学児にまで男女問わずウケている理由は、登場するメインキャラクターにウケているからと、私は考えます。


長文になりましたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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