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二人目の子ができてからの閉塞感、そこから見えたかすかな光、セックスレスの妻に13年ぶりに「したい」と言った話。

二人目の子供を仕込んだのが妻との最後のセックス。
正直に言うとこの時期のセックスは「タイミング的に今日だから今日するよ」と言われて「こっちおいで」と呼ばれて終われば余韻もなく部屋から出ていくという、種付けしてるサラブレッドのように、ただ入れて出すというだけ。
妻の方も「前戯とかいらないから早く終わらせて」と言われるくらいに義務感でしかなかった。
セックスが楽しいと思ってたのは付き合ってから結婚が決まり最初の子供ができるまでだったような気がする。
妻は完全に育児へと目が向き、俺も仕事と育児へと目が向いていたので妻との関係性については後回しになっていた、というか向き合おうとさえしなかった。
新婚時代はまだ恋愛時代の延長戦で通用するが結婚生活が日常になると本当の素の自分が出てしまう。
こちらの圧倒的片思いから始まった恋、何とか気に入られたいと無理もしたので時間とともにその反動が出てくる。
元々、何でも抱え込んでしまうタイプで自分の本音をさらけ出すことができない超後向きな性格。
妻と付き合うために必死になった時にも悩んだ事はたくさんあったがこの時は「恋愛ブースト」で常にポジティブに物事を捉えられていたし、主体が「妻に気に入られたい」だったので無理もしてたと思う。
全然彼女ができずに「もう俺なんか付き合うこともなく結婚できずに死んでいくのかな?」なんて思ってたから。
でも人間なんて勝手なものであれだけ惚れて一緒になれたのに現状には満足できなくなる。次の欲が出てきてしまう。

そんなことで二人目の子ができて以降、元々持っていたネガティブな性格に支配されていく。
自分の中の小さな価値観、それも自分本位な価値観に。
妻に自分の思いを伝えようともせずに自分の中に溜め込んで。。

ここからの10年くらいは本当に苦しかった。俺の煮えきらない曖昧な態度や意思表示しない状態が続けば妻も必然的に距離をとってしまう。
そうなると負のループ。
家にいれば常にピリピリした空気に怯えて妻の顔色を伺いながらなるべく刺激しないで穏便に過ごそうと気配を消そうとさえしてしまう。
なぜそうなったのかを考えずに現実逃避することに必死だった。
俺はますます卑屈になり「俺の主張は何を言っても受け入れられる事はないだろうなあ」と殻に籠もり続ける事で家の中に居場所を見いだせずにいた。
仕事が終わってもまっすぐ家に帰ることができずに公園で時間を潰したり、趣味に没頭してなるべく顔を合わせないように意識的にしていた。
子供がいるし遊園地へ行きたいと言われたら家族で行くことはあったし、家族で旅行にも行った。
外から見られてる限り普通の家族と見られていたとは思うが、子供という存在を通してでしか妻との関係は構築できなかった。
そう、気持ちは完全に離れて家庭内別居状態。
俺も男なので性に対する欲求がなくなることはなかったが「セックスはしたい、でも妻以外の女性とやりたい」と思うようになってた。
妻と関わることが怖かったのだ。
そうなると妻にも行動に変化が出てくる。
夜に食事会と称して家を空けることも多くなる。
最初は子供が寝るまでには帰ってきてたが終電前になり、終電なくなったからママ友の家に泊まってくるといい、それが連絡ないまま朝に帰ってくるようにも。。
名目上はママ友と行ってるとの事だったがそのママ友にも家族があるわけで……
でも問い詰めることはしなかった、というかできなかった。
もし妻の不貞行為があったとしてもそれは「俺の不甲斐なさに原因がある」「それで捨てられても仕方がない」「それで気分が晴れるなら家庭の環境も変化するかな」なんて思ってたので。
そう、俺の性格はこんな感じで女々しい奴。
ある時、妻からぼそっと「ああ、失敗だったわ」って言われたことがあった。
俺とのことを言ってるのはすぐにわかった。でも返す言葉が出てこない。
子供という存在がいなければもうとっくに終わっただろうなあ。正直、楽になりたかったとも思ってたし。でもその決断すら相手に投げていた。
情けなすぎる。。
その後、何が変わったわけでもなく日常は流れていく。子供が学校へ行くようになり妻は相変わらず仕事と家事と育児をこなしている。
俺も相変わらず何かを起こす勇気が湧くわけでもなくただ惰性でつかず離れずな時が過ぎていった。
そうすると俺の方に問題が起こる。
家業を営んでいたけど兄弟間で修復不可能な事があり、俺が去ることに。
兄弟間のいざこざは妻も以前から知っていて「私は関わりたくない」とはっきり言われていたので相談することはできなかったし、する気もなかった。
ただ俺が夫として家族にするべき事、これができているので、かすかな細い糸ではあるが繋がっていると勝手に思っていた、家へお金を入れるということすらできなくなってしまった。
もう正社員として雇ってもらえるには厳しい年齢、そんなに多く貰ってたわけではないが今の収入を確保できるのか?
妻には仕事を辞めたことすら言えない。
よく話に聞く、朝いつものように出かけて公園などで時間を潰して夜になれば何食わぬ顔をして帰宅するなんてことをリアルにやってた。
妻と気持ちで繋がってるとは思っていなかったので不安しかなかった。
俺が唯一持っていた「家にお金を入れる」事で家族の一員になれてると思ってた気持ちが音を立てて崩れていく。
それでも妻に正直に話す気にはなれなかった。
完全に捨てられるなと思ったから。というか捨てられることよりも俺という存在価値がなくなってしまったと感じたから。
公園生活が続くとメンタルがもう耐えられなくなっていつも涙を流していた。
給料は妻に渡していたので俺に残ってる預金なんてたかがしてれる。
「家族にお金を残してあげられる方法はないのかな?」俺が家族に対する義務として思ってたことくらいはやりきりたいな、そんなことしか思えなくなってしまった。
家のローン、保険、なるべく迷惑かけずに……と色々と調べた。
車かバイクでの自損事故かなと自分の中での結論は出た。
残される妻や子供の気持ちまで考えることができないくらいに追い込まれていた。
妻には「こんな俺と結婚してくれてありがとう。あなたの思ってるような素敵な結婚生活をさせてあげることができず申し訳ない」
性格的に俺と似ている上の子には「俺みたいになったらいけないよ、妻のことを支えてほしい」
下の子には「みんなで仲良くしてね」みたいな手紙を書いた。
雨の日に決行しようかなと天気予報とにらめっこしている時に趣味を通じた友人に会った。その人は何も言わないけど俺の異変にはすぐ気づいた。家でいるときは妻に悟られないように気を張っていたが。
ただ寄り添ってくれて、この界隈で一番大きな精神科病院を教えてくれた。
「予約無しで行けるからカナラズイケヨ、常に確認するから」
そう言って立ち去った。
翌日その精神科病院に足が向かってた。
だいぶ待たされたがまずカウンセリングということで部屋へ通された。
20代の若い男性が話を聞いてくれた。最初は上辺だけを語っていたが包み込むような安心感を感じてしまい、これまで人生で誰にも見せたことのない本当に思っている腹の中を洗いざらい話していた。
涙も止まらない、号泣しながら。。
なにも関係のない第三者だから話せたのかもしれない。
診察してくれたのは30代の女性医師で包み込むように話を聞いてくれた。
診断は適応障害で薬も処方された。
俺は妻には言えないとずっと訴えていたが、医師は妻の気持ちも俺が思っているのとは違うことを思ってるのではないかな?と心の扉を少し開けてくれた気がした。
帰宅後妻に向かって「精神科病院へ行ってきた」とぼそっと声に出し反応を伺っていた。
妻「そうなの…」
俺「うん…」
長い沈黙の後
妻「言ってくれてありがとう」
俺「えっ??」
意味がわからなかった。
気づけば仕事を辞めたことをはじめ、カウンセリングで話したようなことを全部話してた。
聞き終えた妻は
「まずはゆっくり休もうか」と一言。
思ってもみなかった言葉に頭が混乱してる。
「大丈夫、少しは蓄えもあるし」と妻が言ったときには俺の気持ちを理解してくれた上で背中を押してくれたような気がした。

妻から子どもたちにもうまく話してくれてしばらく自宅で休養することになった俺。
気分の上下はあり、気持ちがすぐに晴れやかになることはなかったけど心のモヤモヤをしまい込んでいた時とは違い前を向ける時間も増えてきた。
次の診察時には涙を流しながら話すこともなくなってた。
通院はしばらく続いたが初めて来たときの絶望感はもうなかった。
妻との会話は少しずつ増えていった。
内容のある話をしてるわけではなかったが俺の心の中に染み込んでくる安心感が感じられた。
妻は仕事のことは何も言わなかったが、俺がそろそろ行けるかなと就活して社会復帰した。
だが、なれない職場というのを差し引いても心の浮き沈みはあった。
でもそんなことも妻とは話せるようになっていた。今までは仕事のことなんて一言も話さなかったのに。

あの時、俺は妻に助けられるとは思っていなかった。でも妻はほぼ精神科医の言ったような行動で救ってくれた。
妻には感謝してもしきれない。
ただこれで一気に夫婦円満になったかと言われれば?
家族の絆は深まったとは思うし、妻との会話が増えた様子に子どもたちも嬉しそう。
俺が子供時代そうであったように子供たちが親を観察してる感性は敏感。
きっと幼いながらに心配してくれていたんだろうなあ。。

俺は妻に対する感謝を持つようにはなった。ただそれは人間として助けられたからと言う側面が強い。
実際、精神科医に通って通院が終わって数年間は妻と家族としての存在感は増してきてるとは思うし少なからず充実感もあった。

俺は妻には感謝してもしきれないし、好きかと聞かれたら好きですと答えるのは間違いない。でもそれは人間としての妻。
ただ夫婦という形態が続いている以上、これまで封印してきた?妻を女性として見ているのだろうかという疑問が湧いてきた。
同時に妻が俺を男として見てるのだろうかということも気になってきた。
結婚して17年、セックスレスになって13年、俺はまた妄想含めて色々と考えだした。
これまでは性欲といえばもっぱらAV。それすら一人でする回数も考えなれないくらい少なかった。
ましてや感情のある人間相手に興奮するという気持ちになるのが怖かった。
俺は相手とともに悦べるのか?
もっと言うならも俺を相手してくれる女性はいるのだろうか?
童貞時代みたいなことを考えたりもするが、セックスしたいという感情が湧き出てきただけでもメンタルが回復できてると実感する。
とはいっても禿げてないくらいでルックス的には若い時以上に醜くなったおっさん。
性的興奮ということだけを考えたら好みの子としたいなあと思うもお店以外でそんなチャンスは皆無。
妻とセックスする事を考えるなんてもうないと思っていたが付き合っていた時の楽しかったセックスが頭に浮かぶ。

俺はセックスがしたいのか?
俺は妻とセックスがしたいのか?

そう問われた時に、妻としたいと即答できるかと言われたら……
俺の中では妻がまだ1番可能性があるからかも、と頭によぎったりもした。
それでも俺が妻に対して異性として意識したのは本当に久々のこと。

しばらくはそんなことを妻に言うこともなかったが1週間くらい家を空けることになり一人の時間が増えた。
今までなら妻に経過を連絡することなんてなかったが、声が聞きたいなと思ってしまい電話することに。
その時、電話に出た声がすごいかわいかった。こんなこと思ったの久しぶり。
その時に「俺は妻としたい」ととっさに思ってしまった。
この気持ちを全部ぶつけたいと思った。
この気持ちの高ぶりがあるからこそセックスは気持ちのいいもの。
風俗で処理しても、この気持ちの部分のエクスタシーは得られない。
もう止まらない。
とっさに前フリもなく妻に「したい」と口走っていた。
「えっ????、何言ってるの(笑)」
って感じで話を逸らそうとしてくるが、かつて感じていたような妻との壁みたいなものは感じなかった。
「まあ、帰ってきてから……」とYESともNOともなく電話を切ることに。

気持ちを言ってしまったことに後悔はなかったけど、どういった答えが返ってくるのかという部分では不安のほうが大きかった。
時間を置いて考えれば、俺のことを異性として見ているのかという根本がわからなかった、そしてその部分は全く自信がなかった、俺の想いを勢いに任せての一方通行……
日常生活だってだらしない部分が普通に晒け出していた。元々だらしないし(笑)

それでも妻とのセックスがどんなものになるのか、脳内妄想だけは抜かりない。男子高校生のような感じ。

翌日LINEで返事が来た。
結果を先に言えば「NO」
要約すると、もうセックス自体に興味がない、更年期も始まりそうで身体も心も変化しそうな微妙な時期なので期待はしないで、といった感じ。
そして文面には俺のことについては述べられてなかった。
妻なりの気遣いは感じられた。
俺は当然のように落ち込みはした。
でもどうしても額面通りに受け取れない。
心と身体のバランスの部分は本当にそうなんだろう、また不安に思ってるんだろう。女性とは〇〇と一括にできないという前提で、好きな人とは触れ合いたいとは思うはず、それは年齢に関わらず。
そう思ったときに悟った。

異性としては見られてはいなかった。

でも落ち込んだと同時に自分なりに整理できたので自然と前は向けている。
少しでも考えれば、かつて妻と付き合ってそうなるまでも、一生懸命自分をアピールしてそれが実り付き合い、また時間をかけてゆっくりとお互いを知り、結ばれたわけで。
それを夫婦だからというだけで、異性としてお互いに認められたその先にあるセックスを、セックスする事で認めさせたいと思ったのは完全に順番が逆。
セックスレスの原因に悩むのは一方が夫婦だからやらせてくれて当たり前とどこかで思ってるだからだろうなと。
俺もどこかで期待はしてた。
でも今、妻に付き合いたいと告白しても間違いなくフラれるはず。
かつてのように付き合いたいからと妻に向けた情熱はなかったし、情や夫婦だからという形に訴えただけ。
家族として日常生活をしていて妻にだけ目向けていくのは現状不可能。子供のこともあれば仕事のこともある。
でも自分の中ではその事に気づけたのは大きかった。だからこそ落ち込んだが前を向けている。

正直に言うとこれから先、今は妻が興味ない俺とのセックスに対してどう気持ちを向けようかという感情は今はあまりない。
俺自身が生活していく上で1つでも充実してるな、楽しいなと思えることを見つけて心を晴れやかな気持ちに持っていきたい。そうすることで妻に対しての態度も変わってくるかなと思ってる。
「まずは妻の笑顔が見たい」という目標を勝手に掲げたのでそれに向けて頑張っていく(笑)

ここまでは偽りのない本音だが、だたもう一つの本音として雄(オス)の部分での本音もある(笑)
色々と苦しいことがあった俺の気持ちが前を向いた時に出てきた「性への欲求」は不謹慎かもしれないが活力にもなった。
妻との気持ちの入ったセックスには到底及ばないが、異性と触れ合いたい欲求は倫理上の事を除けばほとんどの人にあるはず。
「それくらいは本能で抑えろよ」ごもっともな意見です。
ただでもイケてない俺が遊び相手を見つけるなんてことも容易じゃないし、もしうまくいくことがあったとしてもそれには相当量のパワーを打ち込まないと不可能なことなんて自分でもよくわかってる(笑)
でも性への欲求が再び湧き上がったときに思ったのが、体力的にもセックスができる最後のチャンスかなと思ったのも事実。
いい年になってきたら若いときのような持続力に自信がない(笑)
薬、精力剤的なものはまだ使ったことはないがどこまでの効果があるのか、個人的には怪しいと思ってる。若い時でさえ緊張して萎えたことのある、「男は脳でセックスする」を信じる身としては(笑)
50歳になっても学生時代のように、漠然とセックスしたい、女の裸を見たいという気持ちを本能とどう整合性を合わせていくのかというのも今後の課題(笑)

話は逸れたが長期に渡るセックスレス夫婦が「したい」とお願いして断られた時の感情って皆はどんな感じなんだろう?
俺みたいな感情になるのは「バカ」と思う人もいるだろうなあ。
でも自分の中での答えを見つけられたので(この答えが正解かどうかはわからないが)スッキリはしてる。

もうこの先、妻とセックスすることはないかもしれない。
寂しい気持ちがないかと言われたら嘘になる。
でも肉体で触れ合わなくても、心で触れ合うようなセックスができるようになれば嬉しいな。

13年ぶりに妻に「したい」とお願いしたが結果は却下される。
落ち込んだのは確か。でも気持ちを整理することができたのはよかった。
妻の気持ちが聞けたことも嬉しかった。
だから前を向いていきたい。













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