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【フォトアルバム】画像でお花見 vol.2 オオシマザクラ、エドヒガン

Prunus speciosa(オオシマザクラ)
ソメイヨシノの片親です。木は大きく育ち、たくさんの花をつけます。
開花時に少し葉も出ます。
若葉を塩漬けにして桜餅を包むと、クマリンの香りを楽しめます。
咲き始めはほぼ白で、散り際は中央部が濃いピンクに染まります。
左はソメイヨシノ、右はオオシマザクラです。
ソメイヨシノのほうがピンク色が濃いのがわかります。
Prunus itosakura(エドヒガン)系統
ソメイヨシノの片親です。木は中サイズで、たくさんの花をつけます。
葉がない状態で花を咲かせるので華やかです。
花色は濃い目のピンクです。

写真の木の幹には「エドヒガン」というラベルが掛かっていました。
ここでは「エドヒガン系統」という同定に留めています。

インターネットにおいて、エドヒガンを吹聴する木の形質は多様です。
コヒガンザクラ(マメザクラ×エドヒガン)を思わせる写真も多いです。

エドヒガンは交雑しやすい(種子親になりやすい)ように見えます。
親木がエドヒガンであっても、交雑した実生苗を見本樹として継承すると、原種そのままの遺伝子を保持する木は減っていくでしょう。
この交雑を許容する性質がソメイヨシノの作出を可能にしたとも言えます。

2種のよいとこ取りのソメイヨシノ

ソメイヨシノの学名は、Prunus × yedoensisです。
種小名の前についている「x」は、ハイブリッドを表す記号です。
・種子親(母方)は、エドヒガン Prunus itosakura。
・花粉親(父方)は、オオシマザクラ Prunus speciosa。
とされています。

Prunus × yedoensisという学名は、上記の交雑を示しているだけです。
実際には掛け合わせると、形質が微妙に異なる様々な子が出るはずです。

江戸の植木屋さんが作出した品種、ソメイヨシノは、
 ・葉が出る前に咲く性質をエドヒガンから、
 ・大樹に育つ性質をオオシマザクラから、
受け継いだ、ただ一つの個体です。
この個体のクローンであることを指し示したいときは、
学名を書いたあとに'ソメイヨシノ'と品種名を付記するとよいでしょう。


ソメイヨシノの花色はとても感じがよいです。
 ・塊になって咲くときは、春の始まりを思わせる暖色、
 ・1枚ずつ舞い落ちる花びらは、雪を思わせる白っぽさ
 ・全体として儚さを思わせる淡さ(ペールな色合い)

ソメイヨシノの花色は、オオシマザクラとも、エドヒガンとも違う。
マメザクラとも、ヤマザクラとも違う。
遺伝では通常、片親、どちらかの性質が出ますが(顕性/潜性)、
花色の遺伝では、不完全顕性(中間色が出る)も知られています。
アントシアニンの発色には複数の要因が絡んでいて、
細胞のpHで、金属イオンで、糖で、微妙に色調が変わります。

作出者は、複数の雑種を作り、
その中から最も好ましい花色を選抜したかもしれません。

サクラはPrunus属。
Prunus属は、花に対してタネ一つです。
(花がそっくりなMalus属(リンゴ)は、タネが複数入ります)

オオシマザクラの花粉をつけたエドヒガンの雌しべに対して、タネ一つ。

作出者は、花ごとにタネを一個、採取して、土に蒔いたことでしょう。
複数の花にしるしをつけ、いくつもタネを集める様子が思い浮かびます。

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