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反知性主義とは?その具体例や反知性主義者とは?


反知性主義とはなにか?


反知性主義とは、知性や知識に対して否定的な態度や思想を指す言葉です。反知性主義者は、データやエビデンスよりも感情や直感を重視したり、知的権威やエリートに対して反発したりします。

反知性主義は、アメリカで生まれた言葉で、冷戦時代に知識人が共産主義者として迫害されたことに由来します。

日本でも、福島原発事故や歴史認識問題などをきっかけに、反知性主義という言葉がよく使われるようになりました。しかし、反知性主義は必ずしもネガティブな言葉ではなく、知性が権力と癒着して社会に不利益をもたらすことに対する批判や抵抗という側面もあります。反知性主義は、社会が変わるチャンスかもしれません。

反知性主義の例

以下のようなものが挙げられます。

  • 政治家としての知性、キャリア、家柄と、どれを採っても遜色なく、元弁護士で弁舌の腕も立ち、知識人からの人気も高かったアドレー・スティーブンソンが、第二次世界大戦中にアメリカ陸軍参謀総長を務めた戦争の英雄といえど、政治経験は皆無で、およそ知的洗練さを表に出さず、むしろ政治家でないことをアピールして、大衆の支持を得たドワイト・D・アイゼンハワーに圧倒的大差で敗れた1952年のアメリカ合衆国大統領選挙。この選挙は反知性主義の象徴的な出来事として挙げられる。

  • 憲法学の泰斗の名前すら知らずに憲法改正につき進む安倍総理を批判するときや、科学的知見を無視して放射能の恐怖を煽る環境活動家を批判するとき。これらは反知性主義者がデータやエビデンスよりも感情や直感を重視したり、知的権威やエリートに対して反発したりする例と言える。

  • 国家規模で知識人層の絶滅政策を行ったカンボジアのポル・ポト政権。この政権は反知性主義の最も極端な例とされる。ポル・ポトは知識人や教育者だけでなく、眼鏡をかけている人や外国語を話せる人なども殺害した。

反知性主義はどのように広まったのか?

反知性主義は、様々な要因によって広まったと考えられます。一つの要因は、社会や政治の変化に伴う大衆の不満や不安です。例えば、冷戦時代には、知識人が共産主義者として迫害されたことが反知性主義の背景にありました。また、福島原発事故や歴史認識問題などをきっかけに、科学的知見や専門家の意見に疑問を持つ人々が増えました。これらの事例は、反知性主義者がデータやエビデンスよりも感情や直感を重視したり、知的権威やエリートに対して反発したりする傾向を示しています。

もう一つの要因は、メディアや情報技術の発展です。インターネットやソーシャルメディアの普及によって、多様な情報が簡単に入手できるようになりましたが、同時に偽情報や誤情報も流通しやすくなりました。これらの情報は、人々の先入観やバイアスを強化することがあります。また、ソーシャルメディアでは、自分と同じ意見や価値観を持つ人々とつながりやすくなりますが、これは (注1)「フィルターバブル」や、(注2)「エコーチェンバー」と呼ばれる現象を生み出します。これらの現象は、人々が異なる意見や視点に触れる機会を失い、自分の信念を盲目的に信じるようになることがあります。

(注1)  フィルターバブル

フィルターバブルとは、インターネットの検索サイトが提供するアルゴリズムが、各ユーザーが見たくないような情報を遮断する機能のせいで、まるで泡の中に包まれたように、自分が見たい情報しか見えなくなることです。フィルターバブルは、以下のような仕組みで起こります。

トラッキング機能:Webサイトに訪れたユーザーを追跡する機能で、クッキーやフィンガープリントなどを用いて、ユーザーの所在地や過去のクリック履歴、検索履歴などの情報を収集します。

フィルタリング機能:トラッキング分析したユーザーの好みや傾向に合わせて検索結果を表示させる機能で、URLフィルタリングやコンテンツフィルタリングなどの方法があります。

パーソナライゼーション機能:トラッキング機能やフィルタリング機能をさらに個人最適化する機能で、ニュースサイトのおすすめ記事やSNSの知り合いかもなどもパーソナライゼーション機能によってカスタマイズされています。

(注2) エコーチェンバー

エコーチェンバーとは、自分と似た意見や思想を持った人々が集まる場(電子掲示板やSNSなど)にて、自分の意見や思想が肯定されることで、それらが正解であるかのように勘違いする現象です。エコーチェンバーは、以下のような仕組みで起こります。

ソーシャル・ネットワーキング・サービス (SNS) を運営する会社(FacebookやTwitterなど)や情報検索サービスを運営する会社(Googleなど)は、一人一人が受け取る情報に、各個人に最適化された特定の情報が含まれるアルゴリズム(機械的な仕組み)を用いており、これが「フィルターバブル」を生じさせる「フィルター」である。

フィルターバブルによって、自分の興味や傾向に合わせて検索結果や投稿が表示されるため、自分と同じ意見や価値観を持つ人々とつながりやすくなります。

自分と同じ意見や価値観を持つ人々と交流することで、自分の意見や思想が正しいと思い込みやすくなります。
自分と異なる意見や視点に触れる機会を失い、自分の信念を盲目的に信じるようになります。

以上のように、反知性主義は、社会的・政治的・メディア的・情報技術的な要因によって広まったと考えられます。反知性主義は、社会に不利益をもたらすこともありますが、同時に知性が権力と癒着して社会に不利益をもたらすことに対する批判や抵抗という側面もあります。

日本で代表的と思われた反知性主義の著名人は?

日本の著名人で反知性主義者と呼ばれる人はいるかもしれませんが、それは必ずしも客観的な評価ではなく、論敵や批判者によるレッテル貼りの可能性もあります。反知性主義という言葉は、知性や知識に対して否定的な態度や思想を指すものですが、その定義や基準は曖昧で、時代や文化によって変わることもあります。したがって、反知性主義者というのは一概に決められるものではなく、個々の事例を具体的に分析する必要があります。

ただし、一般的には、データやエビデンスよりも感情や直感を重視したり、知的権威やエリートに対して反発したりする人々を反知性主義者と呼ぶことが多いようです。また、政治的・社会的・メディア的・情報技術的な要因によって、反知性主義が広まったと考えられることもあります。例えば、戦後日本に対する憎悪や改憲への情念が反知性主義の起源であるという意見もあります。

日本の著名人で反知性主義者とされる人の例としては、以下のような人々が挙げられます。

  • 安倍晋三:元首相。集団的自衛権の行使容認や憲法改正を推進したが、その根拠や論理は不明確であり、専門家や学者の意見を無視したり歪めたりしたと批判された。

  • 櫻井よしこ:ジャーナリスト。保守派の論客として知られるが、歴史認識や外交政策などにおいて事実に基づかない主張を繰り返し、学問的な根拠や批判に対して耳を傾けないと非難された。

  • 池上彰:ジャーナリスト。ニュース解説者として有名だが、自分の見解を正しいと断定し、異なる意見を持つ人々を馬鹿にしたり罵倒したりすることがあると指摘された。

以上の人々は反知性主義者と呼ばれることがありますが、それは必ずしも正しい評価ではないかもしれません。反知性主義は一面的なレッテルではなく、多面的な現象であることを理解することが重要です。

橋本徹元大阪府知事・元大阪市長の発言

橋下徹氏の反知性的発言とは、知性や知識に対して否定的な態度や思想を示す発言のことです。反知性主義という言葉は、英語でanti-intellectualismと言い、知的権威やエリートに対して懐疑的な立場をとる主義・思想を指します。橋下徹氏は、自分が反知性主義者と見なされることに不満を持ち、その言葉を使ってはいけないと強く主張しました。

橋下徹の反知性的発言の例としては、以下のようなものがあります。

  • 「そうやって学者さんのように政策を細かく分析するのは国民の中の1%だけで,残りの99%はそんな政策なんていちいち気にしてないですよ。 時間のない有権者は『肌合い』で投票するんです」。この発言は、データやエビデンスよりも感情や直感を重視する反知性主義的な考え方を示しています。

  • 「選挙で勝った方が正しい」という「擬制」を受け入れることが民主主義の基本だという趣旨の発言。この発言は、選挙の勝者が正しく善であるというポピュリストの論理を採用し、異なる意見や視点に触れる機会を失う反知性主義的な姿勢を示しています。

以上のように、橋下徹氏の反知性的発言は、知性や知識に対する敬意や理解を欠き、感情や直感に基づく判断や行動を正当化するものとも指摘されました。

今後、反知性主義はどうなるか? 


反知性主義は、今後も先進国や発展途上国の両方で存在し続けると考えられます。反知性主義は、社会や政治の変化に伴う大衆の不満や不安、科学的知見や専門家の意見に疑問を持つ人々の増加、メディアや情報技術の発展による偽情報や誤情報の流通、ソーシャルメディアにおけるフィルターバブルやエコーチェンバーの現象など、様々な要因によって広まっています。これらの要因は、今後も消えることはなく、むしろ強まる可能性があります。

反知性主義は、社会に不利益をもたらすこともありますが、同時に知性が権力と癒着して社会に不利益をもたらすことに対する批判や抵抗という側面もあります。

反知性主義は、社会が変わるチャンスかもしれません。しかし、そのためには、反知性主義者と知性主義者との対話や協働が必要です。互いに敵視したり排除したりするのではなく、異なる意見や視点に触れる機会を増やし、自分の信念を盲目的に信じるのではなく、客観的なデータやエビデンスに基づいて判断することが大切です。

結論としては、反知性主義は今後も存在し続けるが、それを否定するのではなく、それを理解し、対話し、協働することで社会の変革につなげることができるということです。


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