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オープンソースにコミットしていい会社が近所にあった話

こんにちは、じゅんです。
Hokkaido MotionControl Network (#DoMCN)というHoloLens・VR技術好きの技術者コミュニティの勉強会を運営していて、開発者の知見の交流を促進しています。また、元・物性研究者として、研究機関に所属する若手研究者でxRに興味を持つ人を見つけてはHoloLensを被せに行き、開発者コミュニティへの橋渡しを行う事を続けています。これらを適切に表現する職名が無いので、勝手にScientist/Developer Relations と名乗っています。

今回は位置空間情報を取り扱うMIERUNEさんという会社の方とお会いする機会を道外の方がわりと精度よく繋いでくれましたので、経緯も含めて残しておこうと思いました。先方に記事内容確認・公開OK頂くのも早くて大変助かります。

お話を聴いて、体験内容を決める

 現地に着いてからは、応接スペースに通してもらい、そこで会社の事業紹介などを聴かせてもらいました。都市データのビジュアライズのプラットフォームや、川などの自然物の周りの数値シミュレーションの可視化、建設予定のCADデータの地形データへの合わせこみなど見せていただきました。地図プラットフォームへの360°写真の埋め込みなどもありました。
 地図を2D,3Dどちらでも扱っていて、どう人々の暮らしに役立てられる拡張を行えるかを模索・発信している会社という印象を受けました。
 最近xR業界で盛り上がりを見せているフォトグラメトリやLiDARスキャンなどの3Dデータ化技術との親和性を確認しました。

体験会

 大まかには↑の順番で体験会をすることにしました。今回、xR側からの体験提供の目的としては、「xR分野と位置情報の分野は根底で繋がっているのでちゃんと接点がある」事を伝える事を目標にしました。GISの人たちに向けた体験のセットは以下の意図で組み立てられています。

⓪MiracastでHoloLens主観映像を映しての、私による操作の実演

 数名の皆さんの前で、実物を動かすところまでモタモタと進め、何もない空間に向けたエアタップの仕方をレクチャーしました。普段はスキップしがちですが、壁をエアタップした時に壁面にシュワーンと広がるメッシュの様子をしつこく見せました。Kinectの空間把握能力でもって部屋内を仮想的な3D空間としてすぐ構築していて、その中を私が動いた時に相対位置が正しく検出できている事を印象付ける事を目的にしました。

①Microsoft Meshで #大阪駆動開発 と遠隔セッション

 大阪駆動開発の宮浦さんに予め協力して頂けるようお願いして、13:30からの30分程度のあいだMicrosoft Meshのデモを朝日社長以下、希望者のみなさんに体験してもらいました。

 コラボレーティブコンピューティングを実際に体感して次の仕事のスタイルを想像してもらう事を目的にしました。
 Room内にみやうらさんに入ってきておいてもらい、私はHoloLensでの基本操作・3Dオブジェクトの操作・お絵描き・奈良の宮浦さんとの会話・それに伴う翻訳・字幕表示・視線検出機能(アバタ―と目が合う体験)・立体音響などの要素をそれぞれ案内しました。
 今回はさらに、小部屋を出て遠くまで歩いて行ってもらうテストを行ってもらい、HoloLensによる自己位置検出が破綻しない事(呼んだオブジェクトの位置が急に飛んだりしない事)を確認してもらいました。広いエリアの壁や机などの配置が記憶できているので位置を見失わないという事を理解してもらう事を目的にしていました(飛んだら残念だったけど大丈夫だったらしい)。

②HoloLensでの位置合わせを見せるために mixpace by @HoloLabInc


 途中、質問があり、地下など位置情報が取れない空間での精密な位置合わせにはどうしているのか?という内容だったと思います。これも実際に見ていただくのが早いので、mixpaceのアプリで実例を紹介しました。

 HoloLensには常時、視界に入ったQRコードを解読する機能があります。mixpaceでは3Dの建築データなどの位置合わせ用にQRコードをマーカーとして用いていて、呼び出したオブジェクトをQRコードに任意で吸い付かせることが出来ます。

③Voxelkeiさんの #ProjectJAPANELAND のVRChatワールド

https://twitter.com/hashtag/ProjectJAPANELAND?f=live

 ガジェットをPC VR(Samsung Odyssey+)に移行し、日本列島VRの地図の上に多数のフォトグラメトリワールドへのリンクが張られたポータルサイトでもあるJAPANELANDに案内してみました。
 MIERUNEさんでは、PLATEAUなどのデータをPCのモニタで見ていました。3Dで表現された地形情報を2Dのモニタ上ではなく、3DのVR空間から実際に行くようになるとどうなるのか?という一例がこのJAPANELANDだと考えているので、プラットフォーム屋さんに是非体験してもらおうと思い至り、出発前の午前中に急遽Voxelkeiさんに使用の確認をして準備をしました。
 VR空間のいきなりの体験はそれまでの経験が薄いと刺激が強いため、まずはMR、その後VRという手順を踏むようにしています。今回も同様に組み立てましたが朝日さんとしては酔うかも!という反応でした。
 帰ってきて思い返していたら、PCを繋いだ電源タップの電源がONになってなかったので、GPUの性能がフルではありませんでした。今度からはちゃんとFPS表示が出てる事を確認してからHMDを被せることにします。

④ゴーグルレス立体視でLooking Glass

 ここまでやると、3DのCGが体験できたのはいいんだけど眼が疲れたねって事になる事が多いです。見る負担の少ない3Dもあるという事を紹介するために、Looking Glass Portraitを持ってきました。

 立体のデータを複数のアングルからの画像に分けて書き出したものを合成してレンチキュラーレンズ付きの特殊ディスプレイに映すと、モニタからの角度によって見え方の異なる二組の像が見ている人の眼に入り、その二組を脳が解釈して元の立体像に感じる仕組みのものです。複数人で見てそれぞれで立体感を感じることが出来る事が製品の特長なので、朝日さんに持ってもらって社員さんたちに自ら見せて回ってもらいました。
 手軽かつ低負担なので、今回の中ではこれがかなりウケていたように思いました。値上げ&円安でなければその場で買われてたような勢いでした。

⑤RICOH UCS 360 VR Live

 冒頭で会社のサービスのお話を聴いた時に、地図に配置された自オフィスの360°映像を見せてもらったので、「もしかしたらライブストリーミングも需要あるかな?」と感じ、家で待機させておいたRICOH UCS 360 VR Liveアプリに私のスマホから会議呼び出しをかけて、私の部屋の中のリアルタイム360映像を見てもらいました。PCのディスプレイが映っており、それをTHETAが捉えている映像をスマホで見ることが出来ますので、我々のアクションに対する表示遅延などを体験してもらえました。

ここまでの体験で伝えたかったことはxRにおける位置情報技術の重要性

 VRはモーショントラッキングの技術で自己位置を高速で検出して視界に反映させています。ARにおいては、マーカー認識、SLAMなどで3DCGの空間位置合わせを行っています。これを屋内外での利用に拡張するためにはGPSやVPS、GISなどの併用が必要になってくるため、将来のxRにとっての基礎技術から外れることが無いのが位置情報技術です。技術がつながっているということを印象付けるための体験会メニューになりました。伝わったでしょうかね。

 こないだ学んだGeospatial APIの技術でオフィスの窓からAR Fukuokaの旗を立てて見せようかとも思っていましたが、よく考えたらどの窓が一番近いのか知らないため辞めましたw

話題はコミュニティに関しても及んだ

体験会をしながら合間合間で挟んでいった会話では、HoloLensまわりの製品の話やXRコミュニティの話、自分のコミュニティで連携先を増やしていっている話などを中心にしました(後述)。


経緯

 オープンソースカンファレンス(OSC)北海道を観戦・実況していた25日の土曜日のお昼にぼんやりしていたら、24日のNianticの技術イベントに出席していた東京の小磯さん(@sumina_inxr)から連絡があり、会場で北海道の人見つけたから繋いでよいか?という内容でした。よいですよと返すと、14時くらいには早速チャットグループの場が立てられていて、夜にはやり取りを開始しました。
 翌日、訪問日が火曜日に決まり、情報交換のための場をもってもらうことになりました(はやい)。

段取りもマッハ

 行くことと場所は決まりましたが、何を話したらいいのかも初対面なのでわかりません。今回は実験的に、提供したら良さそうな話題を4択くらいまでこちらで絞って(事前にすこしHPをチェックして)、関連の公開事例をそえて訊ねてみる事にしました。こちらに回答いただけたことで、私に対する関心度合いもある程度把握でき、当日までに必要なアクションを見積もることが出来ました。

 リアルタイム性の強い現場デモ中心でやればよさそうと分かったおかげで、本番用の資料作成はゼロで行きました。アプリが動く確認とワールドのショートカットを生やしただけで済みました。


事後のアクションにつながりそう

 面会の結果ある程度の関係値が出来たようなので、再来週のイベントのお誘いをもらって、参加予定です。また、XRに興味のあるGISエンジニアさんに来月のXRミーティングに来てもらえるかもとのことで、今回の面会はとてもいいものになりました。


もう一つの目的はDevRelとしての情報交換

 ここまで書いておいて、実はもう一つの目的がありました。技術だけでなく技術コミュニティ支援の文化の調査です。

 MIERUNEさんのHPには、オープンソースに積極参加することと、コミュニティの発展を支援するという明記があります。これは札幌のIT系企業であまり見られない特徴です。というか私は初めて見たかもしれないです。

 私自身は社員さんが情報を積極的に出すという事と社のビジネスが衝突する事例をいくつか見てきたため、一方でMIERUNE社でその文化が認容されている状態までにどんな事があったのかも訊いてきました。

 FOSS4Gのコミュニティで知り合ったことがきっかけの3名が会社を作ったから今の文化になっているという点において、東京のHoloLens関連の会社のでき方によく似ているなあと思いました。先輩だ先輩だ。

 完全にノンアポ状態でしたが、AWS DevTools Heroとして活躍されている桐本さんにもお話を伺うことができました。技術コミュニティの運営ってめっちゃ難しいのに短期的利益出ないから長期的な戦略と実施者のクレイジーさが両方ないと続けられないよね、みたいなお話で大変盛り上がりました。こんな話を共有できるDevRel職の方を札幌で見つけられるというのは驚きでした。せっかくのご縁なので #DevRelJP のコミュニティにスカウトしてきました。

まとめ

 今週のイベントは以上のような感じでした。今回のイベントの一番すごいところは、大阪・東京拠点の小磯さんと帯広の岩間さんが接点になった東京のイベントで札幌のコネクションが出来たという点です。
 自分のイベント運営・参加の範囲を全国に広げてなければ大阪の人が私を紹介してもらえることは無かったでしょうし、いわまさんが居なければ多分GISの分野を私が勉強してなかったと思うので会話が成立しなかったと思います。いろいろやってて良かったです。

 体験面では、話題提供のための補助資料がネット上にある為、これらを活用して段取りを秒で進められたことです。これはお互いが情報をオープンで扱い、かつチャットなどの非同期ツールでやり取りが出来る文化を持っていたからこその速度であり、片方が秘密主義では決してできない事です(電話のみの時代はやってたのかもしれないけど)。オープンソース文化のいいところがこんなところにも、という感じです。

 道外の人が雑に私を紹介してくれる流れは大変ありがたいです。ちょっと閉塞気味なのでいい機会を与えてくれてありがとうございました。私の雑な段取りに付き合っていただいた大阪駆動開発 宮浦さん、JAPANELANDの確認にも即レスくれたVoxelkeiさんにも感謝です。あと、同じくGIS領域で活動されている小野さんにざっくり雰囲気を教えてもらいました。

(2022/6/29 第一稿 4819字 120min
 2022/6/30 公開)