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ダメ元で起業したら四年も生き残れてありがたかった話

こんにちは、じゅんです。
Hokkaido MotionControl Network (#DoMCN)というHoloLens・VR技術好きの技術者コミュニティの勉強会を運営していて、開発者の知見の交流を促進しています。また、元・物性研究者として、研究機関に所属する若手研究者でxRに興味を持つ人を見つけてはHoloLensを被せに行き、開発者コミュニティへの橋渡しを行う事を続けています。これらを適切に表現する職名が無いので、勝手にScientist/Developer Relations と名乗っています。最近はCommunity Relationsとも勝手に言っています。

 先日4回目の確定申告が終わりました(3/14日提出)。応用物理学会出張などもはさんでアウトプットが遅れましたが、4年目はどうだったのかを去年の差分に着目して書いてみようと思います。今回も去年同様、「なぜか生きてるあの人の活動の裏側」みたいな感じでとらえてもらえればと思います。各お仕事先から公開OKを頂きました。ありがとうございます。


「バイトした」

 今年度も株式会社金星さまのお手伝いをしました。通年でいろいろな情報収集をして、社内の課題に沿った話題提供をして過ごしています。
 また、福岡のKOALA Techさまからは、現地の社内でのHMD体験会のご依頼や、新規提案内容の壁打ちなどのご依頼をいただき、出張先でのアルバイトみたいな実績になりました。
 東京のエンジニア&技術コミュニティ運営者の田中正吾さん(@1ft_seabass)からもご依頼をいただき、昨今のHMDを含む面白ガジェットの調達方法などの知見共有をオンラインで行いました。札幌来訪の際には、札幌市内でイベントが出来そうな会場へ同伴して、活動紹介などをして道内の営業補助などもしました。
 大阪のGONENGO鈴木さん(@gonengollc)からは大学主催のハッカソン運営に関してお誘い頂き、実施期間中の参加者間コミュニケーションの促進や、発表会イベントのツイート発信などにチャレンジしました。オンラインコミュニティの文脈でのお手伝いという感じです。
 去年より多地域での要請を頂きました。皆さんありがとうございました。ご依頼を頂ければちょっとはいい結果が得られるように頑張りますので、お気軽にお声がけください。


「バイトしなかった」

 北海道立総合研究機構(道総研)さまとはそろそろ長いお付き合いになってきていて、今年はXRの体験会イベントも復活したのでコミュニティメンバーで機材を持ち寄ってお手伝いをしたりもしました。私自身は出展者という形でブース常駐のタスクを負うより参加者として現場の実況をした方が会の様子を後々まで記録に残せると考えた結果、お仕事のお誘いは辞退させていただいた上でイベントに関与しています。


収益構造の変化:東京以外が少しだけ増えてお小遣いが得られた一方で札幌はゼロ継続

 2022→2023年度の収益の状況を帳簿でみると、総売上の変化はほぼ変わらずでした。
 収入源の地域分布については、96%程度が東京のお客さんから、2%ずつ福岡、大阪という感じです。去年は東京が99%でしたので、地方にニーズが生まれたことを実感しています。
 今年は地元アカデミア関係のお仕事も復活するかなと密かに期待していた部分もありましたが、大阪案件の方にわずかにかすった程度に留まりました。惜しいですね。

心構えの変化もなくマイペース

去年の記事でも書いた6項目について今思っている事がこんな感じです。

人のまねをしない
 
身の回りで起こっていることを程よく観察して、自分のオリジナリティを減らさない範囲かつ自分が面白いと思う事を実行し続けていくと、良くも悪くもキャラは立つということは実感してきています。
 正直なところ去年はかなり困っていました。情報が自分の行かないところで回るようになっていき、置いてけぼり感を抱く頻度が上がっています。その流れのある場所に頑張ってついていくという人真似をするのではなく、流れ自体が自分に向かうようにするにはという視点で全国各地のイベント会場確保などの奇行を進めています。つまり情報発信を手伝うことで、発信したい人のハードルを下げつつ自分も情報のそばにいられるようにしています。

競争にしない
 
今できる範囲の事をやった先に、なんらかの競争に巻き込まれるという予感があったときに早々に降りる判断をしています。自分の貧弱リソースを効果的に使うためには競争には加わらず、評価軸が一つ増えるみたいな活動を優先して行うと後に活きると思います(一つの科目で70点→90点にする努力をしないで、勝手に新たな科目増やして0点→20点取りに行くみたいな感じ)。技術同人誌にLTの仕方について寄稿してみるなど、隣接領域での貢献を新たに増やしました。

ステークホルダ最少を目指す
 『刺さらんマン状態』の脅威を日に日に感じるようになってきました。課題を共有していることにしつつも実際は共有できていない人には提案が機能しません。オフライン回帰の背景もあり、一般の人でもオフラインの現場にいる間は連絡が付きにくくなったりしてる状況ですが、刺さらんマンも同様でコミュニケーション上のボトルネックになります。企画の遂行において自分が消耗するかしないかは刺さらんマンが居ないかどうかにかかっています。ガチやる気パーソン(GYP)が居るとよい事はもちろんですが、札幌で活動しているうえでGYPに会える事は極めてまれなので、刺さらんマンに注意する方が長期的には効いてきます。

痕跡を残す
 技術者イベントに参加した時のツイート実況にはさまざまな意味があります。去年は外部イベントの貢献の可能性を感じると書いていました。実際に今年は依頼がいくつかあったりして、コミュニティへの直接的な貢献として認めてもらえる場面も増えてきました。
 『こんなことがあった』とコミュニティ外の人に後で紹介したい時にこれらの記録を添える事で、新しく資料を作ることなく協力を得やすくなるので、運営者としても活用しています。

あらゆる仕事をコミュニティまたぎに
 今年の大きな変化は道外出張の増加でした。オンライン開催だった学会が現地開催に回帰したことに伴い、全国各地の会場に行くことになりました。単に学会だけに行くのではなく、旅程の中でXRコミュニティやDevRelコミュニティのイベントも作りながら過ごしていたため、オンラインの時にはなかったその土地その土地の解像度などを自分の中で上げる事ができました。
 私が行って回るだけではなく、関心の近い知人が現場に訪れられるように経路を作っていったのも後半のメイン活動でした。Community Relationsという去年ぶち上げた単語(後述)が形を持ち始めている感じがします。

Share through the Community
 自分や他の人の経験の中で、コミュニティに活かせそうなものをどんどん共有していく考え方でこれまでやってきました。共有したものがまた別のコミュニティに共有されていく連鎖構造をイメージしていました。最近は一次の共有先が複数に増えてくる場面が多くなってきて、Share through the Communities になってきたかもしれません。

コミュニティ間の"越境"人口を増やす

 去年の中頃くらいまではコミュニティの数を増やすと楽しいのかもしれないという仮説で動いていました。関与したコミュニティのいくつかは実際にいまも残っており、楽しい話題が流れてきたりします。
 一般には、特定の話題で集まった人たちは単一コミュニティに閉じこもる状態がよくできがちなのですが、これだと、Discordではそれなりにやっているのに外からは見つからないみたいなもったいない状況になりがちな事も分かってきました。
 複数のコミュニティにまたがって活動している私の今の役割は、コミュニティ間の人の出入りを活性化して全体のアウトプットを増やしていくことかなと考えています。この活動自体には短期的な利益が一切出ないことから、企業で行う事はとても難しいだろうと思っています。

便利な図 再掲

(余談:北海道のITコミュ育て人の西原さんが今年1月にDeveloper Concourseという概念を発明しました。コミュニティ間の構造をノードとパスと見た時にノードを大きくたくさん育てる傾向があるのがDeveloper Concourseで、既存or新興のノードを見つけてパスを張って太らせるのがCommunity Relationsかなと思っていたりします。どちらも結果は↑の図に近づいていきます)

地元の意思決定層からは自分達は見つからない問題 その2

 よく、コミュニティマーケティングの領域で「想起される存在を目指しましょう」という事が語られます。「〇〇といえば△△さんだな」と思い出してもらえる状態を指しますが、5年間地元で活動してこの状態へのほど遠さを感じているのが最近の課題です。
 理由はいくつかありますが、地元でのxRイベントが少なすぎて、偉い人とxRの文脈で話す機会が作れない事と、大型イベントがあっても一般人に情報が降りてこなくて気づかないうちに終わる事などが起きています。また、役所系の若い人と知り合えた際に活動内容を紹介して一定の支持を得ることはできますが、上の階層の人に伝えてくれるまでは至っていないような感じもあります。したがって直接もダメ、人づてもダメという構造に陥っています。この辺の問題は5時間くらいしゃべれると思うので興味のある方は連絡ください。

 ↑の状況を改善する方策は今年も見つかりませんでした。札幌においてVR/ARの絡んだ企画が無いわけではない事は分かっていて、時々体験イベントもあります。しかしどこをフォローしておけば自然に告知が流れてくるのか分からず、私自身は札幌イベントを結構取りこぼしています。そんな状況ですので、自治体関係などでVRを取り入れたいという発注者側の方へのアクセスは確立できていません。

実家に帰ったことで他県に行く余裕が出来た

 2022年の末に部屋を引き払って札幌辺縁の実家に戻りました。札幌駅前の住居維持にかかっていた固定費を居候の代金に圧縮したことにより、(当初は)月一回ほどの道外出張の資金に充てる事が出来ました。コロナの拡大期は出張を控えて、浮いた分の予算でガジェットを買って手持ち機材を更新するというやり方で無理なく活動しています。
 満員電車のリスクが少ない地域への出張をメインに展開して、福岡・熊本・北九州・名古屋・豊橋・島根などに遊びに行きました。年末のXRKaigiだけは仕方なく東京に行きましたが近いホテルの確保などでやり過ごしたりしながら過ごしていました。
 インバウンドの影響か、5000円程度で泊まれていたビジネスホテルが行き先のどの地域からもほぼ無くなってしまい、体感では2, 3倍になっています。よって、1か月前くらいの告知に対するホテル確保が間に合わなくなってきています(3か月くらい欲しい)。北海道にお誘いする側としても、他県に行く側としても厳しい状況が続いていて、今後の出張ペースは確実に減らさざるを得ません(売上はそんなに簡単にあがらないので)。本当に困っています。

うれしかったことは自分が居ないところでの紹介

 今年は、ものづくりの文脈の出張も初めて行ってみました。その出張先で交流した企業さんが自分の事を憶えてくれていて、全然別のイベントで出会った会社の人に自分を話題にしてくれていたらしいと分かり、嬉しかったです。
 あとは、中の人のご協力で某大学に定期的に寄れるスペースが夏頃に出来ました。VRの話題が出るまでは大人しくしていますが、なにか必要があればその場でデモをして技術への理解を促す活動を非公式に行っています。大学の職を辞めた時からの構想の一つではあったので、6年経って実現してようやくといったところです。

 また、あんまり紹介はされないけど私自身は関心の近そうな人・組織を見かけたらどんどん紹介していく活動をしているので、そういう活動が可視化されると喜びます。


会社化のタイミングは今年ではないっぽい

 私の移動範囲に限った話ではありますが、地元の企業さんからXRにまつわる課題を共有してもらえる例がほぼなくなり、したがってお手伝いできる事も特にない状況になっています。むしろ道外の方が相談が多い状況で、この傾向は今後も続くだろうと考えています。
 以前はガジェット類を購入する資格として法人格を求められることも多く、そのために購入できず機会を逸する事もありましたが、販売元から直接レンタルを活用する方法がいくつか見いだせてきており、購入資格のために急ぐ必要がなくなりました(資金もない)。
 自治体ではスタートアップ優遇とか色々施策があるらしいものの、VCなどのビジネスモデルとも無縁ですし、年齢などの理由で支援を受けられる対象外だったりするので、事業にブーストをかける余地もないようです。いや、あるのかもしれないですが、お得な儲け話があるのでしたら誰か教えて下さいm(__)m
 やれることをやりながら信頼を積み重ねていくスタイルで今後も頑張っていこうと思います。黒字も無ければ赤字もない、そんなゆるふわスタイルで4年経ちました。
 法人化する時の社名は決まっているので、状況が改善すればまた考えます。

今年は地方コミュの乱立と爆速消滅に注意している

 去年同様、地方都市の技術コミュニティにとっては向かい風の環境が続くと思っています。さらに悪いです。
 上の方でも少し触れましたがホテルが高騰しすぎていて(都心のビジネスホテルが当日予約で2,3万する)、自分の動きに影響が出ています。具体的には遠隔地でイベントがアナウンスされた段階で飛行機・ホテルを一式押さえる事が増えました。今までは旅の自由度を上げるためギリギリまで取ってない時も多かったのですが予算をオーバーするのでこうせざるを得ません。後からイベントがアナウンスされてももう参加できないという状況が何回か続いています。
 個人の環境はこんな感じな一方で、いよいよ対面交流をメインに据えた新規イベントを開催する動きがいたるところで起きています。カンファレンス大好きな皆さんは地方を回って楽しそうです。一方で新規の参加者はどのくらいいるのでしょうか。残念ながらイベントの総数は東京圏が圧倒的に多いため、移動できる体力のある人はそちらに行っていて、地元のイベントは参加していない、という事も考えられます。配信があれば東京から地方イベントに参加もできる余地はあるものの、大半の運営陣は配信の体制を削っている所が増えました。それぞれの地域でクローズドな勉強会をやっていて、構造としては一昔前のDiscordコミュニティが林立してた時の状況に似ていると感じます。
 杞憂であることを望みますが、地方のイベントは開催総数が一時的に増えるものの情報拡散が不十分だと開催の様子が可視化されず他のニュースに埋もれがちになると予想しています。埋もれた結果、効果が薄く感じられた場合にはシリーズの2回目以降が起きない状況が増えると予想しています。特に、エンジニアの囲い込みを目的とした会においてこの効果は顕著でしょう(告知情報すら全然流さないから)。参加者側も、関与した時の体験満足度が下がってコミュ離れする年になるだろうと思っています。そこを見越したうえで、今後の貢献内容を考えていきます。

お手伝いの幅を広げていくうえでベンダーへの転職も視野に入ってきている

 今年も好奇心駆動の人々をアシストする活動を引き続き続けていきます。直近ではVRChatのエンジニアコミュニティとの合同LT会などを再び始めて新しい交流経路を増やすようにしてみようと思っています。
 4月29日開催の #NT函館 の応援も勝手にしています。ポスターの拡散・貼り作業などをお手伝いしています(以前の自分たちのポスター貼りを思い出しなつかしさを感じながら)。ものづくりをキーワードに集まる会という希少な機会ですので、今後も続いていってほしいです。#俺得の祭典 という彼らのキャッチコピーがものすごく気に入っています。
 8月に #XRMie のワイクウーデザインさんが札幌に来るタイミングでコミュニティとして何かやろうと準備しています。続報をお待ちください。
 
 ほぼソロとして4年活動してきて、ミートアップ運営・ハンズオン設置・ハッカソン運営協力・体験会開催・コミュニティ支援と展開してきました。個人としてコミュニティにお手伝いできる事は大体経験したような気がしています。
 先端技術の導入支援という文脈はそのまま続けるつもりでいますが、ベンダー側に行った方が実はもっと手広く開発者・研究者支援できるのでは?と思う場面も最近は結構あるため、そういう間口をお持ちの方からのお誘いなどがあれば検討してみようと思っているところです。
 人が技術に触れて行動全体が変わるところを見たり助けるのが私は好きだという事は分かりました(直近だと福岡のもふるねさん)。というか、好奇心があるのに環境の制約を強く受けていて動けずモヤモヤしている状態が嫌いであるということかもしれません。

 

まとめ

 いつも謎な私と遊んでくれる方には感謝しております。
 2024年の流れとしては、出張費をひねり出して地方を回って自分のニーズを見出してきたものの、後半は息切れしてまた工夫を考え中です。
 最近見たスライドの中にわかりみの深い図が出てきました。左下の『技術的好奇心』について、ここを育てるのがもっとも難しいという事がかつての大学での指導業務のなかで痛感したことです。そして技術的好奇心がある人は居るにもかかわらず地元ではどうにもキャリアもオンボーディングのパスも無い(ので転出される)というのが地方の現状です。このギャップを埋めるため、私自身を実験台にしながら、コミュニティを手段の一部としていろいろ模索しているのが現在の私、ということになるかと思います。

(2024/4/11 初稿 5858字 3days
 2024/4/12 予測パート追加 6645字
 2024/4/19 各社公開確認→公開 7450字)