安倍政治の検証

  7月の選挙の最中、暗殺された安倍元総理の国葬が9月に催された。その後、8年弱に亘って続いた安倍政治が全く議論の対象にならなくなっている。まるで、それに触れるのがタブーであるかのように。
 確かに安倍氏が存命中は、その威光があり、御用学者や御用メディアは、彼に対する批判は控えていたのだろう。しかし、歴代最長の期間、総理大臣を務め、日本の方向性を決めてきた結果、日本が今の状態にあるのだから、詳細な総括、検証が必要であることは論を待たない。
 とりわけ、いつの間にか世界から「衰退先進国」と目されるようになった理由の一端は、その長期政権下の振る舞いにあるのだろうから、なおさら、解明は必要だ。
 
・経済面
 今の日本のインフレの元凶は、日銀が世界がインフレ対策に中央銀行の利率を上げ続けているのに、世界で一人ゼロ金利を維持することによって円安が過度に進んだことに拠るのだ。その原因は、いわゆるアベノミクスだ。安倍元首相が日銀総裁に黒田氏を任命し、そのコンビで採った政策だった。それで紙幣をジャブジャブに国内にばらまくために、国債を見境なく発行し続けた。その結果が今の日本経済なのだ。
いわゆるアベノミクスの功罪を掘り下げる必要がある。
・行政執行面
「内閣人事局」が2014年に創設されて以来、官邸が人事を恣意的に扱ったことで、官僚は官邸の顔色を窺うようになり、官僚からやる気を削いでしまった。忖度が酷くなり、公文書破棄、改ざんなどという違法行為に手を染める官僚も出てきた。
 結局、抜本的な改革は出来ず、アベノミクスの目玉であった規制改革は当然官僚の抵抗に遭って日の目を見たものはわずかで、日本のシステムの旧態依然とした状態は存続している。
・倫理面
公文書の廃棄、改ざんが日常茶飯事に行われ、今なお、公文書の取り扱いが杜撰で問題になっている。
さらに、安倍政治はお友達に対する依怙贔屓が顕著だった。その典型が「森友学園」、「加計学園」問題だった。さらには、税金を使って、自分の後援会活動に利用していた「桜を見る会」、今回の国葬を設定した業者も桜を見る会を運営していた業者と同一ということだ。
・コロナ対策
コロナ対策では、突然、全国の学校を休校にして、現場が混乱した。アベノマスクの唐突な発表と業者の選定の不明瞭さなど、振り返らねばならない政策がある。
 専門家会議の人事にも触れないと行けない。日本の感染症対策が厚労省の医務官僚の思うままに動かされていて迅速な対策が打てなかった。また、コロナ対策として実施したGOTOトラベルなどの様々な対策の効果の検証もなされなければならない。
・旧統一教会
また、今回の安倍暗殺によって、浮上してきた旧統一教会と自民党の関係は、かなり根深いものがあることがこれまでの調査で明らかになってきた。さらに明らかになった事実では、岸信介元総理以来三代に亘る浅からぬ因縁があることも判った。
・東京オリンピック疑惑
文藝春秋11月号では「五輪招致委員会の銀行口座の履歴には、高橋氏の「コモンズ」に13年2月から開催決定後の14年5月までの間に計8億9千万円を支出した痕跡が残されていた。ロビー活動としては破格の金額だ(P197)」など、トンネル団体の存在や暗躍した人物名が列挙されている。そして、電通という一私企業が全体を取り仕切っている実態にも迫っている。まだまだ明らかにしないといけない事実が眠っている。

これら、もろもろのことは安倍氏の死去で沙汰闇にしてはいけないことなのだ。安倍政治8年の徹底総括をしなければならない。
 ここに「失われた30年」の解決の糸口があるのかもしれない。

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