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地域と観光ーインスタ映えの時代だからこそ求められるリアリティとは

地域創生の事業は、まちの景色を活かしたPR動画の作成、美しい景色の写真を利用したチラシ、古民家の再生など、各自治体では着手しやすい事業から多額の予算を必要とする事業まで様々な動きがある。では、本当の意味で持続可能なビジネスとして大事なことは何だろうか?

2017年4月に宮崎県新富町で設立された地域商社「一般社団法人こゆ地域づくり推進機構(略称:こゆ財団)」代表理事の齋藤潤一さんに伺った。

誇張された地域に求められるリアリティー

-地域資源を活用したビジネスで、今求められていることは何だと考えていますか?

齋藤:世の中には、俗に言う“インスタ映え"するものが増えすぎています。ないものをあるように見せ、物事を誇張して伝えすぎている感覚があり、僕はそれに警笛を鳴らしたいのです。

綺麗な写真やポスター。面白おかしく伝えられたチラシ。そんなものじゃなくて、本当に地域にあるリアリティを伝えていき、持続可能なビジネスにすることがすごく重要だと考えます。

ありのままの風景に物語をつけるロケツーリズム

-確かに観光メディアに惹かれ、現地に行って幻滅するという経験が少なからずあると思います。では、具体的にどのような伝え方があるのですか?

齋藤:宮崎県新富町には日本遺産に選ばれた古墳があります。新富町の新田原古墳群に207基、宮崎平野全体だと約700基。古墳周辺を歩いているだけで、過去に戻った気分になれるような良い風景が残っているのです。

これまで、地元住民の中では何ともない景色が日本遺産として注目されていますが、僕たちはそれを単純に観光地化するのではなく「あるもの」を「あるがまま」活かすことを大切にしたいのです。

その1つとして考えられるのがロケ地としての活用です。古墳を舞台にしたドラマや映画、小説などができるというのを促進していく「ロケツーリズム」の発想は、地方で稼げる事例になると思います。

地域の中間支援団体のサポート力

-選ばれるロケ地になるためには何が必要ですか?

齋藤:僕自身、地域をブランディングするお仕事をさせてもらっていて、地方ロケに行くことも多々あります。たくさんの地域を見ている中で、ロケツーリズムやロケ地として成功している地方は、受け入れ態勢が充実しているのです。

こゆ財団は、お問い合わせをいただいたら専門スタッフがヒアリングさせていただき、宿泊の手配やロケ地の案内、ロケ班のお手伝いもさせていただきます。ロケ当日には役場との連携や地域住民への周知、放映されるタイミングでの後方支援やプレスリリースの発行など、これまでの実績をもとに中間支援団体としての機能を思う存分発揮できるのです。

当たり前の景色だけど“見え方”が違う

-古墳だけではなく、農産品も充実していて、海にも隣接している新富町ですが“稼げる地方のモデル”にするためには、どんなことが必要だと考えていますか?

齋藤:まずはインバウンド。日本人から見る風景は当たり前のものかもしれませんが、海外の方が見た場合、その風景は『憧れの日本』にある日本遺産となるのです。

だからと言って誇張する訳でもなく、あくまで「あるもの」を「あるがまま」活かすことがロケツーリズムで重要です。つまり光の当たり方が同じでも見え方の違う人たちが訪れるのです。

そこに日本語だけでなく、英語、中国語、韓国語でストーリーを伝えていくことで付加価値が上がっていき、外国人観光客に向けた観光誘致をすることで、日本の人たちの付加価値を高められた時、稼げる1つの要因になると考えています。

地方に“お金”と“笑顔”のバランスを

-稼げるロケ地ビジネス(ロケツーリズム)を構築できたら、そこで得た収益をどのように活用したいですか?

齋藤:しっかりお金を稼ぐことで、持続可能な“お金”と“笑顔”のバランスが取れた地域づくりができてきます。こゆ財団としては、ロケ地だけでなく観光事業やインバウンド事業としても活かしていき、今ある日本遺産を守って次世代に繋いでいきながら、イベントの開催や物語の伝承など、子供たちの教育に活かしていこうと考えています。

“まち”と“ひと”を繋ぐハブ、中間支援団体として地方創生に取り組む宮崎県新富町こゆ財団。この町を舞台にした物語とともに、地域が活性化され、さらには地域の子供達にとって自慢の故郷となる。

当たり前に“あるもの”に光を当てることで地方はもっと面白くなる。

テキスト:有田 匠興/古墳画像:Yutaro Masuda
転載元:MACHI LOG

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