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【92.水曜映画れびゅ~】"SHE SAID"~#METOOに火を着けた大スクープ~

"SHE SAID"シー・セッド その名を暴けは、今月から劇場公開されている映画。

先日発表のあった英国アカデミー賞にて、脚色賞と助演女優賞 (キャリー・マリガン)にノミネートされた作品です。

あらすじ

ニューヨーク・タイムズ紙の記者ミーガン・トゥーイーとジョディ・カンターは、大物映画プロデューサーのワインスタインが数十年にわたって続けてきた性的暴行について取材を始めるが、ワインスタインがこれまで何度も記事をもみ消してきたことを知る。被害女性の多くは示談に応じており、証言すれば訴えられるという恐怖や当時のトラウマによって声を上げられずにいた。問題の本質が業界の隠蔽体質にあると気づいた記者たちは、取材対象から拒否され、ワインスタイン側からの妨害を受けながらも、真実を追い求めて奔走する。

映画.comより一部抜粋

ハリウッドの闇を暴け

ハーヴェイ・ワインスタイン
MIRAMAXの設立者であり、『イングリッシュ・ペイシェント』(1996)や『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997)、『恋におちたシェイクスピア』(1998)など数々の名作映画の製作を手掛けてきた、ハリウッドの大物映画プロデューサーだ。

そんな輝かしい功績とは裏腹、彼には黒い疑惑があった…

MIRAMAXの女性社員や女優への性的暴行である。

それは疑惑…というよりも、業界内では周知の事実。
しかし、ハリウッドで絶対的な権力を有するワインスタインを怖れ、誰も声を上げることができずにいた。

そんなハリウッドの大きな闇に、ニューヨーク・タイムズの記者ジョディカーターが立ち向かう。

#METOOに火を着けた記事の裏側

2017年にニューヨーク・タイムズがすっぱ抜いた、ハリウッド界の大スクープ。

大物プロデューサーからの性的被害とその口止め工作を、勇気ある実名報道で暴き、ワインスタインの逮捕までつながりました。

この事件を機に、性被害を告発する#METOO運動が誕生。運動は世界中へと広がり、現在に至ります。

ワインスタインの事件はハリウッドが生んだ性被害の闇ですが、アメリカ映画界の著名人は事件以降に性被害撲滅運動を推進。「(性被害を)もう終わりにしよう」という意味が込められた #TIMESUP が広がり、性的暴行を告発されたウディ・アレンやケヴィン・スペイシーなどハリウッドの大物が次々と追放されました。

そして事件翌年のアカデミー賞では、ワインスタインを告発した三名の女優が登壇し、多様性を訴えました。

また、その年の主演女優賞を受賞したフランシス・マクドーマンは、スピーチにて女性ノミニーに起立を求め、彼女らとともに"Inclusion rider"多様性を受け入れる契約を主張しました。

エンドロールで、さらに驚く

そんなハリウッド、そして世界を変えた実名報道を、事件発覚からわずか4年で映画化。しかも、こちらも実名というのは…

『スキャンダル』(2019)もそうでしたが、アメリカ映画界のスピード感と思いっきりの良さには毎度驚かされます。

驚いたと言えば、本作のエンドロールで、私は鳥肌が立ちました。

それは、劇中でワインスタインの性被害を告発する人を演じた俳優の、このようなクレジットを目にしたからです。

Ashley Juddアシュレイ・ジャッド          HERSELF彼女自身

アシュレイ・ジャッドは、ワインスタインの性的暴行を告発した女優の一人なのですが、本人役で出演しているとは…感動しました。

ゾーイ・カザン×キャリー・マリガン

そして本作で忘れてはいけないのが、このスクープの中心となった二人の女性記者ジョディとカーターを演じたゾーイ・カザンキャリー・マリガン

私にとってゾーイ・カザンは、『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』(2009)でディカプリオの愛人役を演じていたことくらいしか印象になかったのですが、今回でガラッと見方が変わりました。

丸っこい顔は昔のままですが、気骨さを魅せる真摯な眼差しに引き込まれました。

そしてキャリー・マリガンは、「さすが!」の一言。

かつて『17歳の肖像』(2009)や『わたしを離さないで』(2010)で清純派な演技を魅せていましたが、『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2020)など近年は無骨な役にシフトチェンジ。

本作でも、ジョディ・フォスターを彷彿とさせる姉御肌あねご全開の演技に痺れました。

・・・

ということで今回は、#METOOに火を着けた大スクープ報道を描いた『SHE SAID シー・セッド その名を暴け』を紹介させていただきました。

性被害という重たいテーマではありますが、そこから目を背けずに戦う女性たちの姿に心震える素晴らしい作品ですので、ぜひ多くの方にご覧になっていただきたく思います。

日本も他人事ではありません…


前回記事と、次回記事

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次回は、「心高鳴る感動!」を求める人に届けたい"Dream Horse"ドリーム・ホースを紹介させていただきます。

お楽しみに!



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