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【56.水曜映画れびゅ~】"The Lost Daughter"~謎に満ちた美しい傑作~

"The Lost Daughter"ロスト・ドーターは、12月31日よりNetflixで配信されている映画。

昨年のヴェネツィア国際映画祭において脚本賞を受賞した作品です。

簡単なあらすじ

※日本語字幕の無いトレーラーです。

海辺の町を訪れたひとりの女性。近くの別荘に滞在する若い母親の姿を目で追ううちに自らの過去の記憶がよみがえり、穏やかな休暇に不穏な空気が漂い始める。

Netflixより

ミステリアスな、ある女性の物語

本作は、ギリシャの海辺の町で一人気楽にバカンスを楽しむレダという女性の目線で物語が描かれます。

レダは町の人々とも少し距離を置いたように接し、あまり多くを語りません。

なので、オーディエンスである私たちも、彼女がどんな人物なのかが掴めないままに物語は進んでいきます。

レダは同じビーチで過ごすある母娘をいつも目で追うように眺め、気にかけている様子があります。その理由は、なにやら彼女の過去にありそうなのは感じるのですが、それがどんなわけなのかということはやはりわかりません。

そんな???が増え続ける物語序盤。

しかし、ある出来事をきっかけにしてレダはその母娘や町の人々に少しずつ心を許し、自分のことについて話すようになります。

それに伴い、私たちも彼女の過去に触れ始めます。

その過去とは…彼女と彼女の娘たちとの物語。

それは明るい記憶ではなく、どことなく暗い影を落とすような記憶ばかり。

彼女はいったい何者なのか?

彼女と娘たちに何があったのか?

そんな疑問がますます深まっていく一方で、徐々に彼女の過去が現在の彼女と繋がります。

そして、その疑問への答えが次第に輪郭を持ちはじめ、明らかになっていきます。

マギー・ギレンホール、鮮烈な監督デビュー作

本作の原作は、イタリア人作家のエレナ・フェッランテ著作。

その映画権を獲得し、本作において監督を務めたのがマギー・ギレンホールです。

これまで女優として『クレイジー・ハート』(2009)でアカデミー助演女優賞にノミネート、また馴染み深い作品で言えば『ダークナイト』(2008)でレイチェルを演じていた方でもあります。
(ちなみに、ジェイク・ギレンホールのお姉さんですね。)

そんな彼女が初めてメガホンをとったということですが…

ほんとに初監督作品?!って感じです。

ストーリーも自ら脚本を執筆したということは、びっくりしました。

謎に満ちた始まりから少しずつもやを晴らすように過去を見せていく丁寧な展開に、完全に引き込まれました。

映像や音楽なども素晴らしく、傑作としかいいようがないです。

本作によるギレンホールの評価は非常に高く、冒頭で触れたヴェネツィア国際映画祭脚本賞やニューヨーク映画批評家協会賞新人監督賞を受賞したほか、先日行われたゴールデングローブ賞の監督賞にもノミネートされていましたね。

そして米アカデミー賞監督賞へのノミネートも確実視されています。

『レディ・バード』(2017)のグレタ・ガーウィグ然り、『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2020)のエメラルド・フェネル然り、女優から映画監督になる方ってのは、なんでこんなにも良い映画が作れるのでしょうかね?

オリヴィア・コールマン、さすが!

そして本作で主演務めたオリヴィア・コールマンも、忘れてはいけません。

2019年のアカデミー賞にて『女王陛下のお気に入り』(2018)で主演女優賞獲得して以降、Netflixオリジナルドラマ『ザ・クイーン』などの出演により、破竹の勢いで賞レースを席巻している英国が誇る名女優です。

受賞スピーチが面白いことでも有名ですね(笑)。

そんな彼女は、いわば顔で演じる方です。

『女王陛下のお気に入り』では「顔を二分割にして表情を使い分けている」と評されるほどでした。

本作でも持ち味が発揮されており、セリフは大して多くはないですが、ワンシーンワンシーンでの表情で多くのことを訴えかけてくる印象でした。

コールマンもゴールデングローブ賞主演女優賞(ドラマ部門)でノミネートされており、米アカデミー賞でのノミネートもほぼ確実とされています。ノミネートされれば、昨年の『ファーザー』(2020)に引き続き2年連続、ここ4年で3回のノミネーションということになりますね。

またコールマン演じるリダの過去の姿をジェシー・バックリーが演じていますが、彼女もまた素晴らしかったですね!

ラストに残る大きな謎

物語が進むにつれ、主人公レダの謎が少しずつ解き明かされるように展開していく本作。

その謎がすべて晴れたかのように思えたラストシーンで、実は大きな謎が新たに生まれ、そのまま映画は終わりを迎えます。

その謎については、様々な解釈が可能だと思います。

この記事であまり深く語ろうとは思いませんが、私が思う真理は「レダは許されるべきかどうか?」ということではないかと…

許されるべきだと思えば、そう解釈できるし、
許されるべきと思えなければ、そうとも解釈できる。

あなたは、そんなラストにどう考えるでしょうか?

ぜひご覧になって、考えてみてください。


前回記事と、次回予告

先週投稿した記事はこちらから!

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来週は、話題沸騰のスパイダーマン最新作"Spider‑Man: No Way Home"スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホームをレビューする予定です。
お楽しみに!