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【71.水曜映画れびゅ~】"Interstellar"~なぜ私たちはこの映画に魅了されるのか…?~

サブスクで映画を観ることが多くなった昨今。特に一昨年は、ステイホーム期間などがあったことで、私の周りにもNetflixやAmazonプライムに加盟した友達が増えました。そんな友人たちに「最近観た映画で、何が面白かった?」と聞くと、高確率で、とある映画の名前を挙げます。

それは…

『インターステラー』

実際にそれは私の周りに限った話ではなく、Twitterの映画垢の皆さんの「好きな映画まとめ」ツイートなどを拝見しても、この作品のファンという方がめちゃくちゃ多いんですよね。

そこで今回は、なぜそこまで『インターステラー』が私たちを魅了するのか、を深堀りしていきたいと思います。

あらすじ

異常気象に襲われ、砂漠化した地球が舞台。
農作物が育たず、飢饉、さらには疫病の流行で人類は滅亡の危機に瀕し、地球は人間が住める状態ではもうなくなっていた。そんな状況下でNASAは宇宙の別の惑星へ人類を移住させるラザロ計画を極秘に遂行。すでに何人かの研究員を宇宙に送り込み、いくつかの惑星で人類が存続できると報告された。その最終確認を任されたのが元宇宙飛行士のクーパー。地球に帰還する保証はないにもかかわらず、クーパーは2人の子供に必ず帰ると言い、宇宙へ旅立つ。

ストーリーは難解...

この作品の監督は、バットマン3部作『ダークナイト・トリロジー』や『インセプション』(2010)などを世に送り出した、現代SF映画界の鬼才クリストファー・ノーラン。

私も彼の作品が大好きで、1年ほど前には特集記事を書きました。

そんな彼の作品は、その圧倒的な映像の迫力を武器に世界中のファンを魅了してきましたが、それと同時にその難解すぎるストーリー性が、多くの観客を混乱に陥れもします。特に近年公開された『ダンケルク』(2017)や『TENET テネット』(2020)は、「何回観てもストーリーが理解できない」という感想がTwitterなどで散見されます。

そして、今回の『インターステラー』もそういった節が見受けられます。というのも、宇宙を舞台にした本作は、スタンリー・キューブリック監督の超名作かつ超難解映画『2001年宇宙の旅』(1968)に多大な影響を受けた側面が見て取れ、そこでキューブリックが挑戦した天文物理学理論の映像化に、再び挑んでいるのです。

なので、相対性理論やらワームホールやら、なんやかんや難しい専門用語が劇中でも飛び交い、正直理解がついていきません。

ではなぜ、このような難解な設定なのに多くの人がこの映画を愛しているのでしょうか?

愛される理由⓵:
究極の愛を描いた映画

その最大の理由は、この映画は設定こそ難解ですが、そのテーマ自体はとてつもなくシンプルで、普遍的なものだからです。

そのテーマとは、親子の愛

この映画の中心は、人類を救うために宇宙に旅立った父と、その娘。
生きて還ることが約束できない船出である一方で、それでも再会を願う父娘の愛こそが、一貫して本作で描かれるメインテーマであり、それこそが多くの人々にこの作品が響く根源となっていると言えます。

実際に、私自身この映画は何度観ても、涙腺が崩壊してしまいます。

愛される理由⓶:
難解さを逆手にとった美しい伏線回収

つまり本作は、そういった誰の心にも刺さる物語を完成させるための味付けとして、小難しい相対性理論などを利用されているのですが、これも実際のところ全く理解できないわけではないんですよね。

なぜなら、この作品の部分部分にはそういった難しい理論を背景とした伏線が張り巡らされ、それを後半にわかりやすく回収していくんですね。なので、「なんか、むずいぁ~」と序盤は思うのですが、中盤から終盤にかけて「そういうことだったのか!」というスッキリ感が半端なくあるんですよね。

それは、決して全体像を理解しきれているわけではないのですが、ストーリーを理解するうえで押さえておくべき部分がしっかり伝わるように組み立てられているため、理論の理解度など全く問題にならないんですよね。

そんな脚本のキーマンは、本作で監督のクリストファー・ノーランと共同脚本を担当した、弟のジョナサン・ノーランだと思います。

というのも、同じく共同脚本を担当した『プレステージ』(2006)などでもわかるように、このジョナサンが関わると、妙に伏線が回収が綺麗になるんですよね。クリストファー・ノーランの出世作『メメント』(2000)も彼が書いており、もしかしたら作家的な才能はジョナサンの方が上かもしれませんね。

逆に、ここ最近はジョナサンが脚本としてかかわっていないから、ノーラン作品のストーリーがただただ超難解になっているのかも…。

愛される理由③:
圧倒的映像体験と、ハンス・ジマーの音楽

そしてなんといっても、その映像が美しすぎる。

コンピューター・グラフィック映像によるアンリアリステックな映像を忌避するクリストファー・ノーランは、『2001年宇宙の旅』というスペース映画原点に立ち戻り、ミニチュア・エフェクトでリアルな宇宙映像を追求。その映像は、今までの観た映画の中でも類を見ない圧倒的な美しさです。

また、この映画では宇宙の静寂を表すためしばしば無音の瞬間が訪れます。その瞬間こそ本作最大の見どころの一つで、その息を呑むほどの圧倒的映像美と純粋に対面し、映画に没入してしまいます。

また、その映像に花を添えるのがハンス・ジマーの音楽。

ハンス・ジマーは、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズや『それでも夜は明ける』(2013)など多くの話題作で作曲をした方で、今年のアカデミー賞では『DUNE/デューン 砂の惑星』(2021)にて2度目のアカデミー賞作曲賞も受賞しました。

そんな彼はクリストファー・ノーランと盟友で、前出の『ダークナイト・トリロジー』や『インセプション』などでも作曲を担当。

そして本作でも作曲を務め、宇宙という広大かつ未知に溢れる世界観を、どこかミステリアスな雰囲気を漂わせた音楽で表現。それは作品と素晴らしくマッチしており、なんといっても聴いていてとても心地良いんですね。

そんな『インターステラー』の音楽は、数あるハンス・ジマー作曲作品でも特に人気が高く、Youtube上にアップされているメインテーマの動画は、映画音楽としては異例の1億超えの再生回数となっています。

愛される理由④:
超豪華俳優の共演

そして忘れてはいけないのが、超豪華俳優たちの共演、そして名演。

主演を務めたのは、『ダラス・バイヤーズクラブ』(2013)でオスカーを受賞したマシュー・マコノヒー

最近は、テキサス州知事選出馬の公言や作家活動など、俳優業以外でも忙しくしている彼ですが、この『インターステラー』公開時は、『ダラス・バイヤーズクラブ』をはじめ、『マジック・マイク』(2012)や『MUD -マッド-』(2013)、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2013)といった作品で怪演や名演を魅せていた、キャリアとしてノリノリの時期。

そして本作でも例外なく素晴らしい演技を魅せており、宇宙に旅立った後で家族からのビデオメッセージを観るシーンの彼の演技なんて、もう…言葉にならないくらい素晴らしいです。

また、アン・ハサウェイジェシカ・チャステインケイシー・アフレックなど、今考えたら凄すぎるオスカー俳優だらけのキャスト。

もちろん、ノーラン映画の守護神マイケル・ケインも出演してます。

また個人的にツボなのは、当時ほとんど無名に近かったティモシー・シャラメがケイシー・アフレックの少年時代の役で出演しているところですね!

演技が申し分ないことはもちろんですが、そもそもこういった豪華キャスト陣が共演していること自体、映画オタクの私の心を躍らせます。

クリストファー・ノーラン最新作:
『オッペンハイマー』

ということで今回は、人気クリストファー・ノーラン監督の大人気作『インターステラー』の魅力を紹介させていただきました。

現在(2022/04/27)、NetflixとAmazonプライムでも配信されていますので、「まだ観ていない」、「また観たくなった」という方々はぜひご覧になってください!

そして、そんなクリストファー・ノーラン監督の『TENET テネット』以来の最新作が、すでに動き出しています。

最新作は『オッペンハイマー』

マンハッタン計画を主導した「原爆の父」として知られるオッペンハイマーの自伝映画となっています。

主演は、『バットマン ビギンズ』(2005)や『インセプション』、『ダンケルク』といったノーラン作品に度々出演してきたキリアン・マーフィーと決まっており、その他ロバート・ダウニー・Jr.、マット・デイモン、ゲイリー・オールドマン、フローレンス・ピューなども出演するとのこと。

公開は2023年とまだ先の話ではありますが、すでに私の胸は高鳴っています!(笑)


前回記事と、次回記事

前回投稿した記事はこちらから!

これまでの【水曜映画れびゅ~】の記事はこちらから!

来週は、史上最高峰ともいえる演技合戦作品"American Hustle"アメリカン・ハッスル(2013)を紹介させていただきます。
お楽しみに!


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