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新「公用文作成の要領」影響その2 企業はお役所文章を真似ている?!(後編)

前回▼に続き、「公用文作成の要領」が企業に与える影響について書いてみます。

お役所文書の書き方が文章のお手本?

どんな企業も、その業務の「所管庁」というものがありますよね。
建設業なら国土交通省、ICT関連なら総務省……などなど。
そのため、役所からの通知類を目にすることもあるはず。

それは、とてもわかりにくいことが多いのですが(笑)
かといって、「わからなった」で済まされません。
きちんと読んで、ルールに従って業務を行いますよね。

そんなわけで、
役所の文書が正式なもの=正式な書き方
……というカン違いをしてしまうのではないかと思うのです。

例えば、公式な文章では、
タイトルを「~について」としたり、
文語調(古文みたいな言葉)で書いたり、
「及び・並びに」とか役所っぽい言葉を使ったり……
前回、ご紹介した例文もその一つです。

「公用文の分類」は民間の文書にも応用できる

2021(令和3)年3月、国語の専門家会議から、
新しい「公用文作成の要領」が提案されたことは、
これまでにお伝えしたとおりです。

この案では、「読み手が誰か」によって、
公用文を次の3つに分類しています。

(1)告示・通知等(例:告示・訓令、通達・通知、公告・公示)
読み手:専門的な知識がある人
(2)記録・公開資料等(例:議事録・会見録、統計資料、報道発表資料、白書)
読み手:ある程度の専門的な知識がある人
(3)解説・広報等(例:法令・政策等の解説、広報、案内、Q&A、質問等への回答)
読み手:専門的な知識を特に持たない人

令和3年3月12日「新しい「公用文作成の要領」に向けて(報告)」
文化審議会国語分科会

これは、行政だけでなく、
民間企業にも応用できるかと思います。

例えば(1)は、契約書や約款でしょう。
法的根拠をもって厳密に書くので、専門的で難しい。
だから、「重要事項説明書」※が
必要になったりするわけです。

※不動産、車を購入したり、保険や携帯電話の契約をしたりするときに、数ページの書面を渡され、説明を受け、「読みました、承諾しました」みたいな署名をさせられる、アレです。

(2)は、財務内容や事業・営業の概要などで、
行政や投資家、株主向けでしょうか。

ただし、(1)も(2)も、
顧客向けの説明も必要ですよね。
そこで、やさしくかみ砕いた書き方が必要になります。
それが(3)です。

公用文の分類に民間の文書を当てはめてみると……

中小企業や個人事業にも当てはまると思います。
ご自身の業務に置き換えて、
「この文章の読み手は誰?」を考えてみてくださいね。

そんなことを書いているうちに、「公用文作成の要領」ではなく、「公用文作成の考え方」(令和4年1月7日文化審議会建議)になりました。。。

詳しくは、拙著『令和時代の公用文 書き方のルール―70年ぶりの大改定に対応』(学陽書房)をお読みいただけるとうれしく思います^^


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