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障害者雇用に息づく「文化」:「分ける」ではなく「知る」に宿るもの

先日、久しぶりに障害者雇用の勉強会に参加する機会をいただいた。そこで私は、日本という同じ国にいながら「文化」の違いを感じることとなった。

障害者雇用を「雇用率」で語る文化。

障害者雇用を「人」で語る文化。
である。


障害者雇用を「雇用率」で語る文化

私は、前職(就労継続支援A型・移行支援)を離れてからというもの、専ら後者でしか障害者雇用を考えて来なかった。でも、現実社会は、まだまだ前者の文化が深く根付いているのだと思う。以前の記事でも書き綴ったが、障害者雇用の現場で働く人たちが疲弊しているという現実がある。これは、障害者雇用を「雇用率」で語る文化が、日本社会に当たり前に根付いてしまっているからではないだろうか?

障害者雇用の現場には、想いのある職業人がたくさんいる。だからこそ、障害者雇用を「雇用率」だけでは考えていないと仰る方々は、私の周りにも多くいる。しかし、現実的には、行政・会社から雇用率は求められるし、その事実は無視できないので、一人ひとりの職業人が抱く高尚な気持ちと現実との狭間で疲弊していくのかもしれない。そして、障害者雇用を「雇用率」で語る文化が、日本の社会に深く根を張っているからこそ、障害者雇用はコストとして考えられたり、特例子会社の存在がグループ内での地位向上につながらない現実がある。

先日、特例子会社に自ら異動希望を出して、念願かなって配属が決まった方とお話をした。その方曰く、異動発表の後に、同僚から「XXさん、よく特例子会社へのオファーを受けましたね。」と声を掛けられたという。この現実が、特例子会社制度が誕生した1987年から今日に至るまで、37年の歳月をかけて日本が築き上げてきた障害者雇用の「文化」なのかもしれない。

障害者雇用を「人」で語る文化

では、障害者雇用を「人」で語る文化だったら…?
まずは、私たちの「みる」視点が変わる。
雇用率という数字を「見る」ではなく、一人ひとりの個を「観る」ようになる。
「個」を観るようになれば、自然と一人ひとりの声を「聴く」機会が生まれる。
声を「聴く」機会が増えれば、私たちの語る「言葉」が変わる。
職場で使われる「言葉」が変われば、職場に息づく「文化」が変わる。

私は、いま、そんな風に考えている。

個を「観る」。それは、私たち一人ひとりが有する個人差を考慮して、一人ひとりが成長するための環境に目を配ることだと思う。まさにEquity(公平性)の前提になる、個を活かす上で必要な私たちの基本的な行動だ。

そして、その土台があってはじめて、私たちは誰かの声に耳を傾けられるようになる。それこそが、「聴く」である。私は、これまでの対話企画を通じて、様々な疑似体験をさせていただいた。「聴く」ことで、自分自身の想像力を高め、普段、何気なく使う「言葉」に対して、繊細さと敏感さを持ち続けることの大切を教えていただいた。つまり、一人ひとりの声を「聴く」という行為こそ、一人ひとりが有する「違い」の尊重につながる。そして、話を聴いてもらえるからこそ、私たちは、自分が大切にされているという実感も得られるだのと思う。まさに、inclusiveness(受容)だ。そして、その環境のもとで使われる「言葉」こそが、誰しもが安心感を抱けるコミュニケーションの場を創り出すのだと思う。

障害のある人の前に、ひとりの「人」である。
一人のこころをもった「人」である。

日本の障害者雇用は、「分ける」ことが当たり前にされてきたからこそ、私たちは、いつしか、そこで育まれてきた「文化」を無意識に受け入れ、どっぷりと浸かり、その現実に違和感を抱いても動けなくなってしまったのかもしれない。それが「文化」の怖さなのかもしれないと感じている。

誰しもが一人の「人」

最近は、障害者雇用の質にも注目が集まっている。障害のある人のキャリア開発も、そのテーマの1つかもしれない。障害のある人のキャリアを考えること、それは、私たちのキャリアを考えることと何ら変わらない。特別なニーズがあるところは、会社と本人、場合によっては、本人にとって大切な人も含めながら対話をし、両者の間に橋をかけていくことが基本になるのだと思う。

まずは、誰しもが一人の「人」。
その前提に立って、障害のある人を雇用し、
どんな人、どんな社員であっても成長し、活躍してもらいたいという期待を寄せる。その結果として、すべての社員が、私は大切にされているという感覚を抱けるまで、組織を耕し続けることが障害者雇用の未来を語る上で欠かせないように感じている。そして、これからの障害者雇用の文化を築く最初の一歩が、私たちが日々発する「言葉」に宿るのだと思う。

誰しもが、こころをもった一人の「人」である。
その前提にたった言葉を発していきたいと思う今日この頃だった。

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