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Love the way you have トイストーリー4から初めて悪役がいなくなった理由

前章のForkyに続いて、あの恐怖の人形に関する考察

Gabby Gabbyの物語

4は、初めて「悪役がいない」トイストーリーとなった。登場シーンから「シャイニング」のオマージュで登場し、身の毛もよだつ悪役に見えたGabby Gabby(以下GG)。Woodyと同じ50年代に生まれ、恐らく同じ工場で作られたGGとWoody。しかし、かたや20年近くAndyに愛されたWoodyに対して、ボイスボックスが不良品だった為に誰にも愛される事なく店で埃をかぶるだけのGG。彼女の願いは

「(オモチャとして生まれた以上)一度でいいから(子供に)愛されてみたい

カッコを取れば、それは人の願いと変わらない。外見がめちゃくちゃなのに愛されて生まれたForky、同じ工場で生まれたのに愛され続けてきたWoody、自分の願いの為に店を出て行ったBoと比べ、愛されたいという基本的欲求が満たされずに、店に残り微かな希望に身を委ねるGG。「かわいければ」と化粧を欠かさず、「かわいい声さえ出せれば」とボイスボックスを求める。「誰かに求められたい」と選ばれるのを待ち続ける。

しかし、この努力は「旧時代的」だ。GGが生まれた50年代では「魅力的になる努力をして幸福が訪れるのを待つ」行為は女性として「それしか選択肢がなかった」時代。70年近く経った今がそうでないという主張は、このGGと後で語るBoとの対比で描かれる。

彼女に望んだ幸福が訪れた理由は、けして「待った」事ではなく「誰かを助ける為に勇気をもって行動した」からだった。うまくいくかどうかわからないまま、迷子の子供に勇気を与える為、身を投げ出したGG。

この時彼女が思ったのは「愛されたい」ではなく「この子を助けたい」だった。

愛されるのを待つのではなく、人を幸せにする事で愛されるという「能動的な幸福の追求」がGGが背負ったメッセージだ。

Woodyとの関係

GGは、Woodyに取って「自分がなる可能性だったもう一つの人生」である。同じ工場で同じ時に産まれたのに、不良品だからと愛される事なく過ごしてきた「孤児」だ。彼女の「一度でいいから私も愛されたい」に心を動かされる。

原文では「 I’d anything to be loved the way you have. 」「あなたがこれまでAndyに愛されてきたように」私も愛されたいというニュアンスがある。

それによって自分はこれまで他のオモチャがなかなか得られない「十分に愛されてきた幸福な存在」だという事に気づく。そして今ならそれを目の前のオモチャに渡してもいいと思えるようになった。このボイスボックスの移植は「オモチャとしての幸福を引き渡す」儀式で、3でAndyがBonnieにした事とも重なる。3でAndyが大人になったように、4でWoodyは「自分の為ではなく、他者の幸福の為に献身ができる」という大人になり、その為にオモチャとしての現役を引退する事になる。それまでの「Bonnieの役に立つ事によって自分が愛されたい」と言う自分の為の努力ではなく「BonnieがForkyによって幸せになり、GGがボイスボックスによって幸せになるなら、それでいい」という無私の愛だ。

もう紐を引っ張ってもけして出る事のない声の代わりに、Woodyは自分の意志という「内なる声」を手に入れる。そして自分の意思でBoと一緒に過ごす事を選ぶのだ。

次回は対照的に「現代的」女性の象徴、Bo Peep。

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