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[NPO経営のセオリー]非営利組織が大口寄付者を大切にすると良いこと

ファンドレイジングに関わっている人であれば、一度は耳にしたことがあるかもしれません。支援者の2割の人が金額総計の8割を占めるという「パレートの法則」(2:8の法則)です。あまりにも有名な話で「もう聞き飽きたよ」という方も多いと思います。

近年、米国でのファンドレイジングにおいては、この法則が前提で話されることが多いようです。それはデータで示されて、実感値としても多くのファンドレイザーが感じているからのようです。

~AFPという全米最大のファンドレイジングイベントを開催する組織が提供している記事~

何千ものドナーデータから得られた数値
寄付金の88%を、ドナーの12%が占める
さらに寄付金の76%が、ドナーの3%が占める
「The 80/20 Rule Is Alive And Well In Fundraising」(2015)
http://afpfep.org/blog/8020-rule-alive-well-fundraising/
上記の根拠をもう少し丁寧に説明しているサイトもあります。
「Major Gift Fundraising By The Numbers」(2015)
https://bloomerang.co/blog/infographic-major-gift-fundraising-by-the-numbers/

この割合を前提に考えると、大口寄付者への対応が重要に見えてきます。特に人的リソースが限られた組織においては、レバレッジポイントと捉えてもよいかもしれません。

1.大口寄付者対応の特徴

組織として大口寄付者対応を始めようと考えたときに、多くのファンドレイザーが戸惑うことがあります。それは、通常の寄付獲得と比べて、大きな違いというか、特徴があるためです。

特徴1.時間がかかる
支援者の視点に立つと、金額が大きければ大きいほど寄付行為は慎重になります。そのため、通常の寄付獲得に比べると、どうしてもリードタイムが長くなってしまいます。例えるならば、日用品を買う場合と、高級品を買う場合で、後者の方が時間をかけて検討することに似ています。

特徴2.個々のニーズに寄り添う
金額が大きいほど、寄付の納得感が重要になってきます。その納得感は、支援者個々で異なります。そのため、上記のリードタイムと相まって、ゆっくり時間をかけながら、「この人は、私たちに何を期待しているのか。そうしたら叶えられるのか。」などを聴いて、個々にパーソナライズされたコミュニケーションを丁寧にとることが求められます。

特徴3.戦略性にある行動
上記1,2のように、時間をかけてパーソナライズされたコミュニケーションを行うには、戦略をたてた上での行動が効率的かつ効果的になります。

2.大口寄付者獲得に向けた戦略

具体的な方法として、以下の4つのステップに分けられます。そして、これらを一つのサイクルとして、だいたい半年から1年をかけて回していきます。

STEP1:大口支援者を把握する
支援者データをもとに、人数と金額との関係を見て、対象者を抽出しリストアップします。このとき、団体によって割合が1:9になることもあれば、3:7になることもあります。もし対象者数が多い場合は、金額上位50人だけ、30万円以上の寄付者だけ、と基準を設けるとよいかもしれません。

-ワンポイント-
一回限りの寄付金額で考えずに、年間での合計寄付金額で考えるとよいでしょう。複数回にわたって寄付している人も忘れずに。
直近1年間だけで考えずに、過去3年分ぐらいの範囲で考えるとよいでしょう。昨年に寄付して、今年寄付していない人も忘れず。

ちなみに「大口寄付者は何円以上を指しますか?」という質問をしばしば受けます。一般的には10万円以上の寄付者と言われていますが、パレートの法則を踏まえて考えることをお勧めします。大切なことは、総額の大部分を占める一部の寄付者が誰か、を把握することです。

STEP2:大口支援者との関係を深める
リストアップした支援者ごとに、担当割りとコミュニケーション方法を検討します。例えば、大口寄付者A氏は、理事のBさんと知り合いのため、Bさんを担当に据える(担当まで難しい場合は、出来る範囲の協力を確約してもらう)など。コミュニケーション方法もパーソナライズすべきですが、ここでは以下の例をあげます。

①個別に電話・メール・手紙を送る。
手紙を送って、数日後に電話でフォローアップする、などと組み合わせるとよいでしょう。

②個別の対面での面会を行う。
相手1人(またはご家族)に対して、必ず2人以上のスタッフで会いましょう。二人のうち一人は、理事または事務局長などの上役の人にしましょう。時間は30分から1時間ぐらいがよいでしょう。

③活動内容に接する機会を提供する。
活動報告会やスタディツアーなど、実際の活動を肌で感じてもらいましょう。

④ボランティア・アンバサダーに誘う。
団体の一員であることを感じてもらいましょう。

⑤定期的にコミュニケーションをとる。
最低でも年2回は、個別に会うか、電話で話しましょう。

このような方法もありますので、参考にされるとよいかもしれません。


-ワンポイント-
支援者の人となりや関心分野、寄付への思いなどを聞いて、いつ寄付の依頼をしたらよいか、いくらの寄付金額を提示したらよいか、を想像すると良いかもしれません。これは打算的という面もありますが、支援者側からすると、気持ちよく寄付したいものです。そのためには、タイミングと金額の温度感を合わせるのが大切になります。


STEP3:依頼する
寄付の依頼をしましょう。


STEP4:感謝する
寄付のお礼をします。電話または手紙でお礼をしましょう。メールの場合は、極めてパーソナルにしましょう。また、表彰状を送る、年1回の寄付者イベントを開催してその場で想いを語ってもらう、など特別感を演出すると良いかもしれません。
さらに、寄付金がどのように使われたのか(使われるのか)を伝えることを意識しましょう。例えば、活動報告のために個別に会うなどして、継続して関係を築いていきましょう。

-ワンポイント-
大口寄付者は、しばしば通常の寄付者に比べて、寄付することで得たい欲求が異なることがあります。例えば、社会課題への積極的な関与であったり、新しいネットワークの構築であったりします。そのため、高額寄付者だけを集めた理事との懇親会を提供するなど、彼らのニーズに応える機会を検討するとよいかもしれません。

3.新規獲得の方法

上記のステップは、既存の大口寄付者に対するアプローチになります。大口対応をしたことがない場合は、このサイクルを回すことから始めるのがよいかと思います。慣れてきたら、新規獲得に向けたステップを組み込みましょう。ちなみに、新規獲得に向けたステップの例を簡単にまとめてみました。

追加STEP:候補の研究
大口寄付者の特徴を抽出します。

追加STEP:潜在層の発掘
上記の特徴に合致する人を、支援者リストからリストアップします。

リストアップの結果、
・通常の支援者
・大口候補の支援者
・大口の支援者
という大きく3カテゴリーに分かれます(実務的にはドナーピラミッドなどを構築している場合が多いので、カテゴリーはもう少し細分化されているかもしれません)。その上で、それぞれに異なるアプローチを行うとよいでしょう。


参考
「Major Donor Fundraising 101」
http://www.thefundraisingauthority.com/individual-fundraising/major-donor-fundraising-101/

「MAJOR DONORS」
https://knowhow.ncvo.org.uk/funding/fundraising/majordonors

「8 Ways to Better Engage Your Major Donors and Foundations」
https://blog.hubspot.com/marketing/engage-major-donors-foundations-list

「Small Organizations: Where Do You Find Major Donors? Part 1 of 2」
https://veritusgroup.com/small-organizations-where-do-you-find-major-donors-part-1-of-2/

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