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【作家性】角田光代と川上弘美は、よく似てるけど、実は違う。

この世の本は大きく
2つの要素に分けられますね。
①は、とんでもないホラ話。
②は、現実と地続きの話。

①が100%の本か、
②が100%の本か、
という本もあるけれど、
①が60%で②も40%の本があったら、
それこそもしかしたら
凄い名作かもしれない。
どんなブレンドぶりになっているか、
それが大きなカギになる。

①は、アーサークラークや
レイ・ブラッドベリ、
フィリップ・ディックなど
SFが最たるものですね。
また、じわじわと狂気を描く
エドガー・アラン・ポーや
ラブ・クラフト、
日本なら、上田秋成なども
「ホラ話」タイプでしょうか。

私はどちらかというと、
②の要素が好きでした。
太宰治のような自身にまつわる話や
身近な現実のお話を書く作家。
あるいは、角田光代さんのような
一見、普通の平凡な人の中にある
大切なことを書く作家も好き。
角田さんは②の要素が多いですね。

でも、ふっと、先日、
コメント欄で、
突飛な発想やイメージの
作家で誰かいい作家はいませんか?
と聞かれた時、名案がぱっと浮かばず、
ええと、ええと、ええと、と、
頭をグルグルさせながら
お答えしたんです。

それがなんだか、
自分として不甲斐なくて、
これはアカンな、ダメだな、
もっととんでもない要素をもった
作品をたくさん読もうと
心に誓った次第です。

そう思いながら本屋を回ると、
新潮文庫の「か行」で、
角田光代さんと川上弘美さんが
わっと同時に目に入りました。

角田さんは現実に地続きな作品が
多い気がする。
川上弘美は、一見、現実に地続きかと
騙されそうになりますが、
実は不穏なラストやら
人物が不穏な空気をはらんでたり、
ともすれば、SF気味なんですよね。

角田光代さんはいつも
安定した読書をさせてくれる、
達意の作家。上手い、実に上手い。

川上弘美さんは、冒頭で
いきなり、熊から晩ご飯に誘われる、
みたいな話がいくつもあるし、
2010年3月11日の惨禍を、
自分の過去作に盛り込んで
いち早く原発問題を世に問う小説を
文芸誌で発表しました。
あまりに早い段階で、
原発問題を小説世界で
フィクションとして訴えたのは
川上弘美だった。
この作家の反骨さを知りました。

角田光代と川上弘美。
世代的には、川上さんが角田さんより
ひと回り上ですが、
なぜか柔らかい温もりある文体は
二人ともよく似て見える。
でも、もってる世界観は
ぜんぜん違うことは
最近になってわかってきました。

そういえば
同じ「か行」の作家に
川上未映子さんもいましたね。
でも、川上未映子は
何%は現実に地続きで、
何%はとんでもないホラ話か?
という取り上げ方では、
ちょっとあの世界観は、
説明がつかないような、
キラキラとドロドロが
一緒になっているような気が…。
まあ、川上未映子は別格かぁ。

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