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映画『花束みたいな恋をした』を演出するアイテムたち【観たひと用】

とんでもなく面白かった映画『花束みたいな恋をした』ですが、特徴的だったのがさすが坂元裕二さんによる脚本でバンバン飛び交う固有名詞たち。

その中でも本や映画やマンガや駅とか、具体的な名称やタイトルが登場人物たちを物語る上ですごく役立っています。
映画を演出したこのキーアイテムたちにフォーカスして今回はnoteを書いてみたいと思います。


固有名詞を出す効果

まず固有名詞を出す効果なんですが、すごく時代性を出すことができると思います。その世代なんだとか、その時期ってそうだったよねっていうのがすごく具体的に分かります。

それにその登場人物の好みや嗜好、思想なんかがはっきり分かるのでキャラクター造形がすごくはっきりします。

ここ刺さるとめちゃくちゃ感情移入するし、「分かる〜!」ってなります。
『花束〜』ではここがすごい良かったです。

しかし、

これってすごいリスクでもあるなーと思いました。
具体的な固有名詞をだすと、それが刺さればかなりの効果を発揮しますが、刺さらないと「は?」ってなっちゃいます。

もうここってセンスになっちゃうので、相当なリサーチや情報量の中から何を選ぶのかってすごく重要です。
それに実際に映画化する場合は許可取りとかすげー大変そう。。


映画パンフレットが充実

花束パンフ

基本的には本作のパンフレットにアイテム名は色々と書いてありますのでそこから中心にピックアップしていきたいと思います。
他にもインタビューやコラムやおまけまでついててかなり充実していてマストバイな内容になっていますのでこの作品が大好きなのにパンフ買ってない方は今からでもまだ公開中のうちに劇場に駆け込むことをおすすめします。


京王線

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まず二人が出会うのが京王線の明大前駅
ここで終電を逃したことがキッカケでこの物語は進み出します。

そして飲み屋を出た後に、京王線に並行する甲州街道を二人で調布駅まで歩いていきます。
調布駅前のパルコをゴールにしてるんですが、明大前から調布まで歩いたら2時間〜3時間くらいはかけてるんじゃないでしょうか。
麦くんの部屋は調布ですが、絹ちゃんの家はそこから二駅の飛田給駅です。

その後同棲するようになった二人が選んだのは多摩川が見渡せる駅から徒歩30分(!)というマンション。
実際の舞台地は小田急線の和泉多摩川駅なんだとか。


映画や映画館

やはり映画好きとしては麦と絹の会話に登場する映画たちがめっちゃ気になります!

・押井守
いきなり映画名じゃないですが笑、二人が付き合うキッカケになったのがなんと押井守。終電を逃した明大前のカフェで"神"こと押井守を目撃します。

・『ショーシャンクの空に』と『魔女の宅急便』(実写版)
明大前のカフェでサラリーマンとOLが映画について語り合う時のタイトル。
話の流れから、麦と絹の感性とは違うことが見える。

・『希望のかなた』(アキ・カウリスマキ)@ユーロスペース
これは麦と絹がデートで観ていた作品です。カウリスマキ監督の作品をチョイスするあたりが、いい。それにカウリスマキ作品はほぼユーロスペースが配給しているので劇場もユーロスペースで観ておきたいやつなんで絶妙なセレクト!

・『自由が丘で』(ホン・サンス)
麦が本にしおりとしてはさんでおいた映画の半券

・『毛皮のヴィーナス』(ロマン・ポランスキー)
絹が本にしおりとしてはさんでおいた映画の半券

・『牯嶺街少年殺人事件 』(デジタル・リマスター版)
エドワード・ヤン監督の大傑作が2017年にデジタルリマスター版で再上映されていた
牯嶺街は、「クーリンチェ」と読みます

・『ストレンジャー・シングス』、『マスター・オブ・ゼロ』(Netflix)
麦は仕事で忙しいが、絹はNetflixの人気ドラマをチェックしてる

早稲田松竹
高田馬場にある二本立ての名画座、この2本に組み合わせの妙が早稲田松竹の魅力

下高井戸シネマ
ここのチラシのラインナップを見て盛り上がる二人。とてもいいセレクトをする二番館。
下高井戸駅でもチラシがゲットできます。


二人の音楽

・「クロノスタシス」(きのこ帝国)
出会った夜にカラオケで熱唱する曲

・「NIGHT TOWN」(フレンズ)
こちらも後半にカラオケで熱唱する曲
二人の関係性も変わってきている頃

・「粋な夜電波」(菊地成孔)
二人が愛聴する深夜ラジオ

・Awesome City Club
ファミレスのバイトのお姉さんがPORINとしてその後活躍する姿を二人は応援する

<Awesome City Clubの劇中使用曲>
Lesson
Don't Think, Feel
今夜だけ間違いじゃなかったことにしてあげる
ダンシングファイター
アウトサイダー
勿忘(わすれな)

阿佐ヶ谷 Roji
麦と絹の会話に登場するカフェバー


本と作家

この本と作家は数がめちゃ出てきますので聞き逃してしまったところも多かったと思います。

・「ピクニック」(今村夏子)
「こちらあみ子」に収録されている短編。劇中で二人の価値観を表すのに何回も出てくるタイトルで、気になりすぎるやつです。

・「ゴールデンカムイ」(野田サトル)
連載中のマンガで、麦は就職してから忙しく7巻で止まっている

・「宝石の国」(市川春子)
二人して泣いたマンガ

・「茄子の輝き」(滝口悠生)
仕事で忙しくなった麦の出張に絹が手渡した本

<麦と絹が好きな作家たち>
穂村弘
長嶋有
いしいしんじ
堀江敏幸
柴崎友香
小山田浩子
今村夏子
小川洋子
多和田葉子
舞城王太郎
佐藤亜紀
野田サトル
ほしよりこ
市川春子
滝口悠生
小川哲
近藤聡乃
西村ツチカ


ジャックパーセル

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二人が共通して履いているコンバースのスニーカー。劇中に名称は出てこないんですが、ジャックパーセル好きには一発で分かる。


その他

他にも天竺鼠のライブだとか、書ききれない映画や音楽や作家のタイトルも細かく網羅されているのが本作のパンフレットです。
三浦しをんによるレビューや、二人の部屋が図解してあったり、インタビューだとか本作をより知れる内容が充実していますので、わざわざ映画館に舞い戻って買う価値があると思います。


朝野ペコ

麦が描いていたイラストを担当したイラストレーター。

神戸のミニシアター・元町映画館でイラストを担当しているのだとか。


石井勇一

本作のチラシやパンフをデザインしたアートディレクター。
『mid90s』、『燃ゆる女の肖像』、『WAVES』など話題作を次々と手掛けている要チェックなデザイナーさんです。


最後に

もう完全に観たひと用に書いているので、この映画のキャストが誰でどんなストーリーかというのを一切書いてません笑
作品についてよりも作品を彩るアイテムにフォーカスした方が面白いと思いましたので(自分の備忘録も兼ねてですが)こういう形式にしてみました。

書いているうちに細かい部分が気になってしまったので、恐らくもう一回映画館に観にいくと思います。

今年は邦画が年初から傑作ぞろいですがその中の代表格の作品かなと思います。観たひと誰もがどこかに自分を重ね合わせて感情移入してしまうんじゃないでしょうか。こんなに若者のラブストーリーを観てキュンキュンするとは思いませんでした。 出てくるアイテムのチョイスが本当に絶妙だったので知らなかった本やマンガも読んでみようと思いました。

ぜひこういうところからも映画を楽しんでもらえると嬉しいです。


最後までありがとうございます。



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