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巾着と母の字と上履きの踏み跡

1年半くらい、身の危険もない代わりに出口のない、穏やかな地獄にいた。 わたしを引っ張り上げてくれた、恩人がいる。 親友、白楽の内科の先生、産業医の先生、異動先の上司、音声配信で出会った人たち。 感謝を込めて、少し、自分の話がしたくなって、文章を書き始めました。 ___ ふとした瞬間に、何度も反芻する言葉がある。 「あなたは弱い人なの、心が」 見上げた先に、涙声の彼女が立っていた。 いつも陶器のように真っ白な頬を赤く染め、真冬なのに湯気が立つような熱い涙がつたう。静

    • 2023年映画ベスト10

      「うわっ……2023年映画ランキングのnote記事を出す時期、遅すぎ……?」 物事に遅すぎるなんてことは普通にあるのだが、好き勝手やっているnoteなのでお許しください。2024年、4月も中旬に差し掛かる中、2023年の映画ランキングをまとめました。よかったら楽しんでいってくださいね。 昨年のエントリー作品は合計42作品。配信で視聴したものは除外し、試写会やイベントでみた作品を加えています。なんとなく、家から飛び出してみた映画、というのがこのランキングの対象作品。エントリ

      • 許せない人のこと

        自分の悪行について、一人の人間からとんでもなく叩かれたことがある。 例によって私がずぶずぶの恋愛関係に陥っていたあるとき、一年前くらいから親交があった年下の女性と年上の男性と三人で飲んだことがあった。私が世間話として現在の恋愛関係について話したのがそもそもの間違いではあった。今ではこの場にいた私以外の人間ふたりには地獄に落ちてほしいと素直な気持ちで望んでいるけれど、当時はそれなりに仲良くしていたつもりで、気を許して話をしてしまったのだろう。 攻撃をしてきたのはこのうちの女

        • 荒れた日のメモ

          心の調子がすこぶる悪い日々が2週間ほど続いている。人に読まれる事は全く意識せず、思うまま書いてみる。 日々の生活の中では、楽しいこと嬉しいこと気持ちがいいこと、ポジティブな感情になることが全くないわけではない。けれど、前触れもなくぬかるみに足を取られると、もがけばもがくほど暗い気持ちが押し寄せるようになる。そこはふとした瞬間に陥ってしまう場所で、闇の中で過ごす時間はとても長く感じる。 こういうときの自分の心を冷静に分析してみると、平たく言うと、私には価値があります、みたい

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          読解の補助線 今村夏子『あひる』

          今村夏子『あひる』 私がいま一番好きな作家は今村夏子です。 その傑作短編が『あひる』。 今回、読解の補助線と題して、読書メモを作ってみました。 ________ 「小説に込められた強大な熱量にねじ伏せられたかのようで、  読後しばらく生きた心地がしなかった。」 (金原ひとみ、小説『ハンチバック』に寄せて) 「小説に込められた静かな不穏さが背後にぴったりとくっついているようで、読後しばらく生きた心地がしなかった。」 (ジュラシック幼稚園、小説『あひる』に寄せて) ____

          読解の補助線 今村夏子『あひる』

          親の呪いから 映画「哀れなるものたち」

          親の呪いで考える「哀れなるものたち」。 ・まずもって映画体験として素晴らしいので、R18指定に引っかからない人(しんどいひとも含む)を除いて、ぜひ映画館で見てほしい。美術・音楽が良い映画なので、大きい映画館をお勧めします。 以下、感想。 全文ネタバレ&思考のメモの積み重ねなので箇条書きです。ご容赦ください。私が尊敬し、いつも仲良くしている髭丸免太郎さん、にどねさんとラジオトーク上でお話ししながら考えが強化された部分です。 ・「進歩した人間でも、親の呪いから逃れられないの

          親の呪いから 映画「哀れなるものたち」

          大切なともだちが、母になる夜に

          さっきInstagramを見ていたら、趣味アカウントの方でもフォローしている友人が妊娠中であることを知った。産まれる前に焼肉に行けた、とかそんな内容のストーリーだった。 一年前に会った彼女は学生時代から知っている彼女のままだった。努力家で、努力を努力と思わず、高潔で、明るくて、まっすぐな友人だ。私にないものを全部持っているな、と思うのに、私が自分の欠陥を意識しなくてよくなるくらい、素晴らしい友人だ。 そうか、彼女に子どもが生まれるのか、と思うと、私の人生で遠ざけていた子ど

          大切なともだちが、母になる夜に

          ただしくなくてもたのしくいたいよ

          冷蔵庫から賞味期限のきれた缶ビールを取り出す。 音を立てながらプルトップを起こしたとき、時計の針は午前1時をさしていて、外は雪がふる寒い夜だった。 "できないと思っている、やっていないことをやってやろう" 何日か前に、2024年の自分の目標をこっそりと改めた。 今飲んでいるビールもそのひとつ。 お酒は嫌いではないけれど、晩御飯と一緒に飲む以外の形、いわゆる「晩酌」として飲んだことがほとんどなかった。憧れがあった。 ほかにもチェンソーマンのアニメで、デンジくんをお持ち帰

          ただしくなくてもたのしくいたいよ

          バカには勝てない

          おめでとう、なんて言える気分じゃない新年ですね。2024年、初めてのnoteの更新です。開いてくださったそこのあなた、ありがとうございます。よかったら、読んでいってください。 1月1日に、能登半島で大きな地震があった。翌日には羽田空港で飛行機の事故があり、そして東京では都内のターミナル駅で刃傷沙汰のニュースが立て続けに飛び込んでくる……など、落ち着かない日々。私は、年明けから体調を崩してほぼ寝込んでいたせいで、よくニュース番組をみていて、余計に世相に詳しくなっている。 風

          バカには勝てない

          愛せるとか、愛せないとか

          ※ジュラシック幼稚園のポエミーな恋模様を期待された方、すみません。ほぼ、筋トレの話です。 2023年が終わってゆく。ということで、noteの更新をするぞ。それと、前回のnoteでとても嬉しいリアクションをいただけたのに、きちんとお返事ができていなかった。読んでくださっている方、本当にありがとうございます。 どんな一年だったか?みたいな振り返りをしてみようと思うと、難しい。相変わらず、誰かに憎まれたり、誰かを憎んだり、誰かを愛したり、愛さなかったり、愛されたり、愛されなかっ

          愛せるとか、愛せないとか

          誰かを”排除したい”という誘惑に

          ここ3ヵ月くらい、哲学対話を何度も行っている。心理的安全が確保された場で、テーマを考える。そして参加した人の話を聞く。また考える。 そういった場で、自分の話が聞かれる。そういう、一連の体験をする。私とあなたは別の人間なのだ、と考えていく営みが見えてきたところで、対話はふっと終わる。 砂のような粒子がなにかを形作ろうとしていて、それを言葉で表現できるかできないかくらいに大きくなっていったときくらいに、突然終わる。なんの結論も、生産性もないままの帰り道、自分の中の”悪”のような

          誰かを”排除したい”という誘惑に

          ノベライズ『怪物』 感想

          小説版、というよりは、脚本を起こした感じでやや読みづらかったけれど、IIIの描写がよかった。一部抜粋。 P.261 「本当はね、のぐちみなこさんていう女の人と、温泉行って、事故死したの」〜略〜 湊は笑ってしまいながら、母親が教えてくれたのぐちさん情報を告げた。 「のぐちみなこさんはね、ダサいニット着てるんだよ」 →IIIでよかったのは、子どもから見たときの、湊の母親やホリ先生への冷めた見方。子どもは子どもなりに大人をあなどっているし、大人のダメなところは、わりとバレている。

          ノベライズ『怪物』 感想

          メモ)哲学対話「許せないとはなにか?」

          哲学対話のメモです。 いつか清書します。 対話テーマ「許せないとは何か?」 許せないとは何か? 許せるとはなにか? →どうなったら、人を許せるのか? ・相手が反省する? ・相手がそれ相応の罰を受ける? ・相手が悪いところを直して変わる? ・許せない相手本人にとって、反省とはなにか? 自分ごとで考えると、なにかをやらかして、「もうしない!」と謝るときは、相手をこれ以上傷つけたくなくて発する、反応、であって、反省ではないのでは。(本人の本人性は、全く変わっていない) 反

          メモ)哲学対話「許せないとはなにか?」

          上高地でみた生き物(8月の記録)

          生物図鑑風のレポートは以上。 この後は上高地の風景を載せます。撮影はすべてFUJIFILM X-S10でした。ご覧いただき、ありがとうございました。

          上高地でみた生き物(8月の記録)

          死んでいく一匹のホモ・サピエンスとして(『人類の起源』を読んで)

          リハビリがてら、箇条書きでnoteを更新するぞ。やっと読み終わった、『人類の起源 古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」』について。 ・中公新書『人類の起源 古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」』を読んだ。著者は篠田謙一さんで、東京・上野の国立科学博物館の館長。先日、国内で最も規模・集客力の強い博物館がクラウドファンディングをする必要に追い込まれている、というニュースで話題になり、館長としてインタビューにもこたえていた。 ・いきなり別の話になって恐縮

          死んでいく一匹のホモ・サピエンスとして(『人類の起源』を読んで)

          二千年前、地球の反対側で、これを作った人がいる。眺めた人がいる。いつのまにか捨てられて、埋まったこれを、掘り出した人がいる。 そして、いま、わたしの目の前にいる。目も眩むような長い積み重なりに、人間は偉いと思う。 悲しい夜に、写真に向かってささやいてみる。ここは寂しくないですか。

          二千年前、地球の反対側で、これを作った人がいる。眺めた人がいる。いつのまにか捨てられて、埋まったこれを、掘り出した人がいる。 そして、いま、わたしの目の前にいる。目も眩むような長い積み重なりに、人間は偉いと思う。 悲しい夜に、写真に向かってささやいてみる。ここは寂しくないですか。