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音のアーキテクチャ展

9/1、音のアーキテクチャ展に寄る。土曜日の13時あたりで、かなりの人が入っていたが、動きづらいなどはなし。会場は六本木の21_21 DESIGN SIGHT。内外装とも打ちっぱなしのコンクリート。コンクリを撮影してプリントしてトートバッグを作っている。コンクリ愛が強い美術館だ。

ミッドタウンを通り過ぎて、のんびりと橋を渡り、階段を下ると見えてくる。入口らしき自動ドアはミニマムデザイン過ぎて、どっちから開くのか、いやそもそも本当に開くのか、やばい、不安、俺はイキって美術館にきちゃったイタい大学生なのか、いやいや暇で仕方ない大人です。ドアオープン。中へ。

まず受付。観覧客のご夫婦にバイトの大学生らしきお姉さんがなにやら説明をしている。しかしなぜか目線はこっち。こわい。笑ってもにらんでも無い。無の境地。真顔。釈迦の表情。ご夫婦は気づいているのだろうか、と目をやるとパンフレットを見ている。気づいていない。バイトの女の子、相変わらず口はご夫婦だが目は私。なにこれ。まじすこぶるおっかない。この子、生き別れの妹なのかもしれん。いや、親のカタキか、それとも背後霊でも見えてんのか、などとおろおろしているうちご夫婦は無事入場。逃げ腰のままおそるおそる受付に。

「………」。「………」。
なにも言わない。双方なにも言わない。双方、釈迦の顔面。「あの……」と切り出すと「おひとりですか?」と訊かれる。よかった。「ふたり」に見えてたらどうしようかと思った。
「1100円です」。「はい」。
入館パスのシールをもらって無事入場。どうやら1階がグッズ売り場、B1が展示会場になっているようだ。1階までは無料で入れるので、シールで購買客と観覧客を区別しているらしい。
なにやらおしゃれなグッズを完全スルーして、B1へ。
メガネの青年が改札だ。胸のシールを見て「どうぞ」とパンフレットを渡してくれる。この青年は一日中ここで改札をするのか。人件費の悪魔め。

階段をスタスタ降りると、いよいよ音楽が聴こえてくる。corneliusの、あの、パズルみたいなアルゴリズム的な音はまさに構造的。アーキテクチャ。企画展の趣旨紹介に目を通して、暗やみの中へ突入する。いきなり現れたのは180度スクリーンで演奏するcornelius groupの面々。今展示会で絶えず流れる「Audio architecture」は書き下ろしだそうだ。

しかし無駄がない。corneliusの音楽を聴くといつも思う。1音でも欠けたら足りないし、1音でも増やせばくどい。絶妙なラインを突いてくるのはおそらく数学をやっているからだろう。ありがたいことに展示界ではprotoolsを用いたcorneliusのレイヤーを見られる。こんな画面は初めて見た。ベードラの波形は ぽつん ぽつん と点在しており、むしろボーカルやコーラスがバックで鳴り続けている。アクセントとバッキングが一般のバンドと逆転しとる。それでいて薄さを感じさせない。ジクソーパズルがきちんと当てはまっている感じ。めちゃくちゃ気持ちいい。アドレナリンどばどば。

ふわふわしながら隣のフロアに行くと、大画面登場。8人の映像作家が曲に合わせてムービーをつくっている。
最初に見たのは自撮りアプリを用いた作品。音楽に合わせてモニター内のおっさんの顔面がびよよんとぶれている。ときおりモヤットボールみたくとがったり、透けたり、無数に増えてふわふわ浮いたり、もうやりたい放題。やめてあげて。元に戻らなくなるから。もう見てられないから。でもおっさんは真顔で自撮りをやめない。やばい。危機管理能力と頭が薄い。

曲とともに映像が終わって次。大好きな映像作家の大西景太さん。ハイスイノナサの地下鉄の動体のMVで知ったんだけど、この人やっぱ音楽好きなんだろうなぁ。キックやカッティングのタイミングで丸三角四角などの図形を遊ばせる。この人もかなり構造的。視覚的に音が伝わる。たとえ音楽が消えても多分聴こえる。手話に近い映像。レイヤーを重ねる。

反対にめちゃ感覚的に作ってる人を紹介したかったけど、文系は多分いなかったんじゃないかしら。最寄りは勅使河原一雅さんの「オンガクミミズ」か。色彩感覚がとても文系的だった。グロテスクすら感じた。

総じて映像はユーモア満点で遊び心に溢れていて、なんかクリエイターの「楽しいぜうひひ」感が伝わるのが良い。仕事と思ってない感ね。実験的だし。

アーキテクチャ=構造的な芸術について学べるいい機会だ。デザインあ でもやってるもんね。メロンをバラしたり、鉄棒をバラしたり、和菓子をバラしたり、見えないものをバラバラにして紐解いていく快感は、わかる人にしかわからんけど、わかる人にはすんごいわかる。わかりすぎたら猟奇的になっていく。だってバラすまで分かんないんだからね。そういった意味でバラした後のカタチが完成する妙を教えてくれた「音のアーキテクチャ展」に心からの賛辞を送りたい。

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