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女性に求められる能力・その変遷

1 選ばれることが女性の目標だった

20年くらい前の書籍をよむと、「女性にもとめられることは「選ばれること」であると書いてあります。シンデレラも含め、幸せになった女性の多くはの多くは王子様に選ばれています。農村でも、ちょっと可愛いよく働く子などが、地主や名主の息子に選ばれたりしたのでしょう。

女性の社会的地位が低く、職業が確立していなかった時代は、選ばれることがすべてでした。昭和30年から50年にかけても同じです。

最高殊勲夫人DVD

この最高殊勲夫人というDVDを、当時の生活を知る必要からみる機会がありました。原作は源氏鶏太です。映画は1959年日本映画です。
あらすじ(映画ウオッチより)
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野々宮家と三原家の兄弟同士の恋愛結婚が二度も繰り返されました。どうせならトリプル結婚をと狙う長女の企てで、今度は末っ子たちが引き合いに出されますが、当事者二人はたまったもんじゃないと同盟を組みます。ところが、次第に惹かれあってゆく若い二人。幾多の障害を乗り越えて、二人の選んだ結末は一体なんなのでしょうか。
監督:増村保造 出演者:野々宮杏子(若尾文子)、三原三郎(川口浩)、三原桃子(丹阿弥谷津子)、三原一郎(船越英二)、野々宮林太郎(宮口精二)ほか
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2 昭和30年代にも支配的だった価値観

要約すれば、東京にある会社の長男と次男に嫁いでいる姉妹が、末の妹も三男と結婚させようと目論むストーリーです。やはり価値観として上位にあるのは、

1 一流会社に入社する
2 秘書課に配属される
3 社長の親族と結婚する

であるようです。
寿退社
が普通の時代なので、退職の際には少しでも良いポジションをとるために頑張る時代です。望みの相手を射止める(最近たまーに結婚式で使われる言葉です)ためには、女性同士の熾烈な争いがあります。ここでも「選ばれる」ために努力する女性の姿が見られます。
この時代の価値観を知るうえで、面白い映画でした。

3 当時の女性に求められたもの

私の母やそれよりもっと前の世代の方々のお話を聞いて思うことは、この映画は全くの誇張ではなく、当時の女性が模索した「よりよく生きる道」を示しているということです。結婚は就職なのです。
母の姉の結婚が決まったとき、近所に住んでいた従妹の女性は、少しでも自分が早く結婚するために、大急ぎで農家の男性と見合いをして、結婚したそうです。女性同士でこうした「見栄」による競争もありました。

また、「秘書課」とか「大学の研究室の教授秘書」も、当時の女性にはステイタス感の高い職場でした。教授、それも医学部の教授秘書だと、ほぼ無給うに近い給与でも、希望者が続出したものです。
そうしたマーケットでは、求められるものは能力より容姿です。お見合い写真でも、まず写真を見て、それから経歴です。また、バックグラウンドとしての生家の経済力なども、評価の対象でした。いわゆる「釣り合い」を求めたのです。
この映画ほどに極端な例でなくても。似たような行動や発言が各家庭でありました。
「30歳過ぎると、後妻の口しかなくなる」
「見合いのあとで、近所へ聞き合わせ(個人レベルでの調査)に行った」
「恋愛結婚はあとからろくなことにならない」

など、一歩間違えば人権無視の発言も聞かれたのです。

4 やや良い時代になってきたのか

そのあたりは、良い時代になったものだと思います。
雇用が保証され、女性が経済力を持つようになり、結婚は就職でなくなりました。また、離婚しても以前のように犯罪のように言う人ももういません。社会保障のおかげで、生涯独身でもなんとかなり、人口減少のおかげで兄弟二名のうち一名は親の家を相続できます。

ここまで書いてきて、ふと、大学時代にお会いしたある女性のことを思い出しました。彼女はお父様がロシア語の翻訳家で、共産主義を信奉する家庭に育ったので、価値観が私たちとは全く違いました。
雑談の中で私が「女性向けの週刊誌など、読まれますか?」と聞いたときの、彼女の返答は、「ああいう、女性を商品化するものは読まないのです」でした。驚きました。
確かに、今や結婚に向けて自らを商品化する女性が少なくなってきました。能力さえ認められれば、いわゆる「かまやつ女」でも大丈夫なのです。母や祖母が私たちにうるさく言ったように、「外に出るときはだれが見ているかわからないので、身綺麗にする」という必要はもうないのかもしれません。
男性や未来の結婚相手に対して、商品でなくなった今、女性がこの50年余りで与えられた自由をどう使うか、それも考えてゆく必要があると思います。


似内惠子(獣医師・似内産業動物診療所院長))
(この原稿の著作権は筆者に帰属します。無断転載を禁じます。)
似内のプロフィール
https://editor.note.com/notes/n1278cf05c52d/publish/
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オールアバウト「動物病院」コラム
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