見出し画像

医師の眼からみたZUMBA~山本佳奈さんインタビュー

医師の眼からみたZUMBA~山本佳奈さんインタビュー


山本佳奈さんナビタスクリニック内科医、NPO法人医療ガバナンス研究所研究員、
アエラドット・コラムニスト

―アメリカ・サンディエゴ在住の医師山本佳奈さんにお話をうかがいます。山本さん、ZUMBAに出会ったのはいつ頃ですか?

山本 昨年(2022年)の12月でした。アメリカは車社会なので、体を動かさないとどうしても運動不足になるためジム通いを始め、そこでZUMBAのクラスに出会ったんです。それまでは、外国人の知り合いが「東京の六本木にZUMBAをしに行くんだ」なんてことを聞いたくらいで、ZUMBAがどんなプログラムなのか、全然知りませんでした。


昨年のクリスマスの時のレッスン後

 サンディエゴのジムで、ZUMBAのクラスを覗いてみたら楽しそうで、昔ダンスを習ったことがあったので勇気をふりしぼり参加してみました。想像以上に楽しくて、1時間経つのがあっという間。ハードでしたが運動した感を味わえました。一番よかったのは振りを真似るだけでいいことと、音楽を聞くことの楽しさです。特にラテン系の音楽が多いのが私には合っていて、すっかりハマりました。

―サンディエゴのジムはどんな雰囲気でしょうか?

山本 サンディエゴでは日本よりもジムに通う人が多いように思います。高校生ぐらいの若い人から70、80代のお年寄りの方まで、男女も半々ぐらい。ヨガやピラティスなどのクラスもありますが、一番多いのはZUMBAのような気がします。

 私自身、日本にいた時に運動習慣をつけなければとジム通いを始めました。でも、運動経験ゼロの私にはジムはとても敷居が高く感じられて、1か月で断念してしまいました。一方、サンディエゴは移民が多い地だからかもしれませんが、ジムもオープンマインドで、ウェルカムな雰囲気を感じました。

 日本では先生に失礼のないように、遅刻はNG、5分か10分前にはスタジオに入らなければという雰囲気がありますよね。でもアメリカでは始まって30分過ぎてから来る人もいるし、2,30分で出ていく人も終了10分前に出ていく人もいるんですよ。

 クロックスで来てパパっとやって帰る人や、ウェアではなくパジャマっぽい服でトレーニングに来ている人もいます。最低限の規則を守って人に迷惑をかけなければ、自分の好きなように来ていいという雰囲気なんです。

 ZUMBAでは、先生がメンバーによってスピードや音楽のテイストを変えたり、生徒のリクエストに応えたり、別の先生が来ていると、その先生に代わってもらって自分は休憩する先生もいます (笑)。日本とは違う自由さがあって、私にはとてもハードルが低いと感じました。

 私はZUMBAがまったくの初心者で下手なので、入ったら悪いかなと思っていたけれど、「初心者?そんなの全然関係ないよ!」と言われてほっとしました。レッスンでは前列で好きに踊っている人、後ろの列で椅子に座って体を動かしている高齢の方、ZUMBAを極めたいと真剣に踊っている人などなど、それぞれの楽しみ方があるんだなと思いました。

 


 クラスには自由に出入りができて、朝寝坊したけれど行ってみようとか、予定があるからちょっとだけという感じで行っても何も言われません。むしろ「来てくれてありがとう」と言ってもらえるんですよ。体調がすぐれない日が続き、ジムに行くのが億劫になった時期がありましたが…先生から「何で来ないの?」って連絡が来たんです。


 英語が流暢に喋れなくても、ZUMBAが好きという共通点から会話をスタートすることができ、アメリカ人と距離が近付いたと感じました。私にとっては異国の地でコミュニティーが得られてとても嬉しいです。私の中ではストレス発散、全てを忘れてZUMBAをできる時間が週に1回、1時間あるのはとても大きいです。

―山本さんは内科医師として、ZUMBAの運動効果についてどのようにお考えですか?

ZUMBAの先生宅のクリスマスパーティーにて

山本 アメリカでは、日本のように細くてすらっとした体型が理想というよりは、程よく筋肉がついていて、胸や腰など体のラインにメリハリがあるのが健康的、というイメージなんですね。医療費が高いので、病気をして病院通いをしないために運動するという意識も高いようです。

 ZUMBAの運動効果について、日本では「痩せる」とか「ダイエットにいい」という評価が多いようですが、60分ほぼ踊り続けるので、いい有酸素運動になっていると私は思います。

 それから、ZUMBAではしっかりしゃがむ、手足を伸ばすなど、全身の筋肉を使うのがいいですね。重りを使うTONINGクラスもあって、やり方によっては体脂肪が減るなど、筋トレ要素も強まってくると思います。

 ただ、運動は楽しくなければ続かないですよね。例えばランニングマシンでひたすら30分、エクササイズのためだけに一人で黙々と動くのは、よほど意志の強い人でないと続けるのが難しいのではないでしょうか。

 その点、ZUMBAは楽しくてハッピーになれて、続けることもできる。特にストレスが多い現代では意味のあるプログラムだと思います。アメリカで人気があるのもよく分かります。

―アメリカではZUMBAが健康に及ぼす影響に関する研究が進んでいるとお聞きしています。

山本 アメリカの医学界では、ジョギングやサイクリングなどの有酸素運動を2分から60分行うことで、集中力や学習能力、記憶力がアップしたという報告があります。また、有酸素運動を行うことで偏頭痛の症状が顕著に改善したという報告もあります。

 私自身、ジムでトレーニングを始めてから、いつの間にか、それまで薬頼みだった偏頭痛が改善されました。ZUMBAも有酸素運動なので、十分に効果はあると思っています。

 アメリカでは朝、仕事前に10分か20分ジムに行って運動をして、頭がすっきりした状態で職場に向かう人が多いようです。昼休みの1時間でも、日本ではスタバに行って携帯を見たりメールに返信したりしていることが多いですよね。アメリカではこの1時間を職場の近くのジムで汗をかいて気分転換するのに使います。

 PubMedという英語の医学論文の検索サイトで「ZUMBA」を検索すると、かなりの数の論文が出てきます。例えば11の論文をレビューした調査によると、ZUMBAが有酸素能力を向上させる効果的な身体活動であることが考えられること、また体重の減少に関して小さいながらもプラスの効果が認められたことが報告されています。

 また、週3回、8週間のZUMBAを実践した後とそれ以前を評価した調査によると、有酸素運動能力の向上 (+3.6%)、体力の自己認識 (+16.3%)、筋肉の発達 (+18.6%)、自主性の向上 (+8.0%)、そして人生の目的に大きなプラスの変化をもたらした ( +4.4%)という結果が得られています。

―日本でZUMBAが始まって16年になります。その間、パンデミックを経て日本人の健康意識が変わっている中で、今後より多くの方にZUMBAを楽しんでいただくためには、山本さんが紹介してくださったようなエビデンスが必要と痛感しています。

山本 私もZUMBAがどんどん広がってほしいと思います。もっともっと日本人がハッピーになってほしいですね。日本に帰ってきて久しぶりに電車に乗ってみると、ずっと下を向いて携帯を見ている人が多いことに気がつきました。

 アメリカ人はオンオフの切り替えがはっきりしていて、多くの人が生活を楽しむことを考えているような気がしています。笑顔が多いんですよね。日本に帰ると独特な雰囲気があって、もっと生活を楽しんでもいいんじゃないかなとZUMBAから学びました。

 ZUMBAは上手下手も年齢も関係なくできますし、ラテンの音楽って、聞き心地がよくて奥が深いですよね。ジムやフィットネスクラブだけでなく、身近な場所でZUMBAがもっと広まって欲しいと思います。私も日本に帰って来た時に「公民館でZUMBAやります」というポスターが貼ってあるのを見て嬉しくなりました。

 ジムって、私がそうだったように敷居が高くて入りにくいと感じる人も多いと思います。公民館や体育館だったら年配の人も行きやすいし、ダンススタジオだったら若い人たちが入りやすいかもしれません。街のあちこちにZUMBAスタジオがある、なんて素敵ですよね。

―JWIでは小学生、中学生や高校生など子どもたちにもZUMBAを広めていくための取り組みを進めています。

山本 子どものうちからラテンの音楽や言葉に触れるのは世界が広がると思います。私が通っているサンディエゴのジムには、2人のお子さんがお母さんと一緒に来ていますよ。2人とも障がいのあるお子さんのようですが、好きな音楽になるとテンションが上がって前に出て踊り出すんです。

 子どもが体を動かしたい時に自由に踊れる場っていいなと思います。日本にもそういう環境がもっと増えるといいですね。普通のダンスでは、型をしっかり覚えてみんなで一緒に踊りましょう、となって難しいと思う子も多いかもしれないけれど、先生の真似をして思い思いに楽しく踊ることができるのがZUMBAの魅力だと思います。

 パパと一緒に来ている高校生ぐらいのお嬢さんもいます。最初はパパに連れられて来て、子どもは「えー!」みたいな感じだけれど最後はノリノリに踊っている。家族の距離感も縮まりますよね。

 みんなで楽しくZUMBAをやって、それが家族やさらにコミュニティーにも繋がっていく。ラテンの音楽の力もあると思います。私も医師の立場から、これからもZUMBAの良さをもっと発信していきたいと思っています。

―貴重なお話いただきまして、ありがとうございました。

2013年12月5日・12日 JWIコネクト掲載
※JWIコネクトは、フィットネスに関わるすべての皆様の活動をサポートするスマートフォンアプリです!ダウンロードはこちらから https://yappli.plus/jwi_sh

※ZUMBAは商標登録されたプログラムです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?