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幸せな結末

9歳の姉がほしい。

手を引いて家のそばにある小さな丘まで連れて行ってほしい。
おねえちゃんの手を握って散歩。探検。
誰もいない草原。
背の低い草木がそよそよと風に揺れる見晴らしの良い場所。
9歳のおねえちゃんと私だけの完璧な空間に

居たい。


中腹でちょっと休んで、摘んできた白いお花で編んだ花輪の王冠をプレゼントしてくれて、そうしている内に日は暮れ初めて、暗くなる前に家に着いて、家に着いたら2人で一緒に手を洗う。

そして一緒の食卓でご飯を食べて、おかあさんに見つからないように私の苦手なお野菜なんかをこっそり食べてくれて、おやすみなさいと言い合って一緒の布団で眠るんだ。

そんな人生でありたい。

庭にはおとうさんお手製のブランコ。
7歳のお姉ちゃんはケガしないように優しく背中を押してくれて、心地よい風が吹いて。
それで、それで、


幼い娘がほしい。

パパ!パパ!って
パパみて!って
100%の、純度100%の濁り曇り淀みが1ミリもないそんな満天の笑顔で私に話しかけてきてほしい。
小さな手で私を呼んでほしい。

陽だまりのなかへ 陽だまりのなかへ

まだ幼い娘を連れてピクニック。
季節は秋。
見晴らしの良いどこか。どこか遠いところ。
駆け回る幼い娘の笑顔。笑う声。
小さな手。小さな足。
笑顔。笑顔。笑顔。
パパ!パパ!

って



肥溜めみたいな職場。
男帽の待合室。
異性愛者の私には心が耐えきれなくなって辞めて。
まともな仕事を探し始めても、前科者はどこも雇ってもらえなくて結局男娼。

肥溜めみたいな職場。
口蓋に滑り込んでくる生ぬるい異物。
30も歳の離れた男の舌。
口蓋に滑り込んでくる生ぬるい液体。
30も歳の離れた男の精液。
幾度となく突かれ、抱かれている内に、私の小さな体は汚れていく。それはどうやっても落ちない。

野の花は優しい色を湛えていて、まだ小さい私は7歳のお姉ちゃんと一緒に陽だまりのなかにいるんだよ。
草木の中を私はお姉ちゃんとどこまでも進んで行くんだよな。

ふたりはシロツメクサの花で作った髪飾りをして手をつないで家へ帰る。
お姉ちゃんは俺 私の歩幅に合わせて歩いてくれる。


肥溜めみたいな職場。
排泄物は何度も何度も食べさせられた。
騙されて夜通し何人もの人間に弄ばれた。
そんな毎日だった。
何よりもまず痛みが勝った。
夜が来るのが怖かった。


おねえちゃんおねえちゃんって私は9歳のお姉ちゃんの手を引いてどこまでも歩いていく。
おねえちゃんは私の知らないことを何でも知っていて、だから私はいつも言うんだよ。

「お姉ちゃんはなんでも知ってるね」

って。
そしたら9歳のお姉ちゃんはちょっと照れて言う。

「そうだよ」って


そんなことだけをずっとずっと考えて、
ただ終わるのを待ってる。

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