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非IT事業会社のDX奮闘記

今世の中はDX(デジタルトランスフォーメーション)ブームに沸いている。

DX、SDGs、MaaS、スマートシティ、、、など時代的にもなんとなくキャッチーな雰囲気を持ち、かつ耳馴染みの良いコンセプトワードは、その言葉の成り立ちがどれだけ優れていても、世の中に普及し始めておおよそ3年もすればバズワードとして、いわば思考停止用語になりやすい。

大企業で、経営層に説明する資料にこうした言葉が使われるようになると、黄色信号という感じもある。

「DX」で儲けているのはコンサルタント会社だけ、というなかなか的を得たジョークも聞いたことがある。

そんなこともあるので出来るだけ「DX」という言葉は使いたくはないのだが、デジタルテクノロジーを企業活動・事業活動に取り入れいていかなければいけない、というのは今に始まったことではなく、当たり前にやらなければならないことでもある。

「DXとは何か」論争を横においておこう

私自身、自分の会社をより良くしなければいけない、目指すべき姿に向けて抱えている課題の解決にテクノロジーを使わない選択肢はないと思い、ここ3〜4年ほど前からそのことに取り組んできている。

その間、世の中でも社内でも「DXとは何か」論争は常に続いており、いろんな人の意見を読み聞きしても、どれも正しいとも感じるし、一方で、事業や企業の置かれた立場などによっても、DXをどう定義するかに唯一の答えはないようにも思える。

このnoteでは、私自身がDXに関わることについて模索してきた経緯や、現在進行形で取り組んでいることなどをメモとして残しておきたいと思った。

その理由は、いわゆる非IT事業会社(IT自体を事業の商材としてこなかった会社)が、DXをするとはどういうことなのか、何をすべきかを、成功・失敗含めて、そうした会社の中の実務者の情報が世の中にはほとんど無いためである。

・もともとITドリブンな会社の人が語るDX
 →非ITとはスタートラインが異なる。。

・有識者の語るDX
 →達観し過ぎてしまって、、、

・コンサル会社・シンクタンクの語るDX
 →あるべき論として異論ありません。。。

こうした情報は世の中溢れている。

もちろん、こうした情報は、だいたい間違った事は言っていないと思うし、それぞれ大変参考になる。

しかし、非IT事業会社の中にいる人間にとっては、上記のような情報をどう読み解き、会社の方針・戦略を描き、さらに実務に落とし込んで、初めてDXのスタートラインに立つのだと思っているが、そうした人にとって実務的に役立つ情報というのは意外にない。

その意味で、非IT会社の中で模索してきた記録と、現在進行形で取り組んでいる事、やりながら感じていることを成功・失敗含めて記録として残すのは、あくまで一つの事例に過ぎないが、そこそこ意味があるのではないかと思っている。

注意が必要なのは、これから記載する事は、私が所属している会社全体で取り組んでいる事ではなく、あくまで中間管理職としての一実務担当者の私自身が取り組んでいることだ。(もちろん会社全体の取り組みにするべく努力しているつもたりだが、そんなに甘くない)

「DXとは何か」ということは常に考えてるし、それなりにやるべきことは把握しているつもりだが、「それはDXなの?」という問いに対して必ずしも十分にできているわけではないのも自覚がある。
また、リソースは常に限られているので、やれることは限られる。つまりそうした論争はあまり意味がないし、最も優先順位が高いモノに力を割くしかないと考えている。

以下は、これまで約3〜4年ほどかけて取り組んできた/取り組んでいることのポイントだ。

①会社の方向性を作る

いろいろな考え方はあると思うが、私の場合は、まず会社の方向性を作ることに優先順位を置いた。具体の成果を出すまでに遠回りかもしれないが、結果的にはこの辺りしっかりやっておくと、後々揺るがない土台になっていく。

・自社が社会にどのような価値を提供していくべきなのか、を抽象度の高いレベルで定義する
私が所属している会社は「まちづくり」を専業としている会社なので、「まちづくり」とは何か、これまでは何で、これからは何であるかを突き詰めて整理する。ここはそもそも論なのであらゆる方法を用いて整理すべきだ。

・ITとは本質的に何かを理解する(努力をする)。

IT、デジタル、ソフトウェアなどは技術であり、道具であるため、それは一体どのような効果を生み出すものなのか、と言った初歩的だけどあまり明確な答えがないことを理解する。基本的には読書と、人と話す、ことを繰り返すしかない。

・国内外で進んでいる事例をできる限り調べ、その全体感や、構造的な変化などを読み取る。

できる限り具体的なものを現地現物で見ておくこと、幅広く見ておくことが、そのあとの社内説明するときの納得感、説得感が変わってくる。

・上記3点を踏まえて、「仮説」を作る。
仮説づくりは、なるべく社内外のメンバーとのディスカッションを繰り返し、将来の大まかな姿(社会の姿と、自社の姿)と、大きなロードマップ、それと、まず一歩目にすべき具体的施策の「仮説」を作る。
正直、多少間違っててもよい。

・会社の方向性に位置づける。
作った仮説を、なるべく話を聞いてくれる、かつ影響力のある経営に近い人(一人である必要はない)に理解してもらい、そうした人たちを巻き込み、会社の方向性(っぽく)にしてもらう。

②具体的にアクションする

企業によっては、大きな方向性まで作る事は比較的容易でも、その後の施策を進めるのが難しいことが多いかもしれないが、ここでもいろいろな模索や壁にぶつかりまくったが(今もぶつかっているが)、今から振り返ると、とにかく形にすることを優先したことは良い判断だった。

・デジタル分野の有識者にアドバイザーについてもらう。
会社の方向性を作ったは良いが、各論に入るまでにはまだまだ距離がある。そして何よりも非IT会社の場合、会社全体のITに関する経験もなくリテラシーも低い。内部社員だけがどれだけ騒いでも効果は薄いため、こういう時は「権威」の力に頼るのが一番だし、素人だけで進めても上手くいくものでもない。

・戦略の本丸を経営層との議論を積み重ねながら、一方で、具体的な施策を仕込んでおく。
会社によっても、人によっても異なると思うが、経営に近い方の中には、なるべく大きな成果につながる話を期待する人もいる。そうした人に、アジャイル開発だの、「まずは小さく」と言ってもあまり興味持ってもらえないこともある。大きめ・太めの本丸の議論をしっかりすることが重要だ。
その一方で、具体的な施策を仕込んでおくことも同じく重要だ。前者だけだと、1年後も何も成果が起きていないリスクがあるためだ。

・具体的な施策に全力を注ぐ。正しくやる。
DXでも何でも、新しいことをする時には、とにかく形にすることが何よりも説得力を持つ。時間は有限であり、最も大事にすべきものだ。最終的には、仮にそれが失敗したとしても、具体的なアクションをしたことで得られる経験こそが、最も時間を費やして得られる価値の高いものだと思う。
私自身は今この状態まできて1年ほど経つが、最終的には、行動を起こすか起こさないか、が大事になる。その施策は、自分自身が考える最も重要な課題を解決することであり、かつ実現可能性が高いものであること良いと考えている。参考までに、私の場合、ネイティブアプリをアジャイル開発で進めるというチャレンジをしている。
この際注意したいのは、アドバイザー含めなるべくITドリブンな社外からの声を聞ける状態を作っておくことだ。これまでのやり方と同じやり方で上手くいくほど甘くない。一番のベストは「正しいこと」を「正しくやる」ことだが、このフェーズにおいては「正しいこと」を見つける事は難しいが、「正しくやる」事は決して難しいことではないし、「正しくやる」ことは最も重視すべきだと思っている。

・リアルオプション思考で取り組む。
おそらく歴史ある企業の場合、意思決定の判断基準はそれなりに確立されている場合が多いと思う。一方で、新しいことをやるときの意思決定の考え方も同じような判断基準にされてしまうこともあるかもしれない。そうした場合に持つべき思考はリアルオプションという考え方が参考になる。以下は過去にまとめたnote。

③日常に組み込む

以下は、非IT会社のサラリーマンができる取り組みである。正解はなく、常に新鮮な情報を入れながら、自分が今できることをするのが一番だと思う。

・なるべく最先端の情報を日常的に取るようにする。
ニュース、本、そうした業界の人をSNSでフォローする、などの情報を日々浴びる。本は気になったものをひたすら買う。斜め読みでも良いので、世の中の先端のキーワードを俯瞰して、全体感を理解することが大事だと思っている。

・資格をとる。研修を受ける。
なんでも良いと思う。ただニュースなどの情報をインプットするだけでなく、仕事以外のところアウトプット、手を動かす機会をなるべく多く作れると良い。私自身も1年ほど前から、ITパスポート、情報セキュリティマネジメント、データサイエンティスト検定など簡単なものから積み上げている。

以上、思いつくポイントを並べてみた。

あくまで私自身のケースであるため、会社によっても置かれた立場によっても状況は異なるため、再現性のあるものでもないと思う。

そして、今もいろんな問題に直面していて、心が折れそうな時も何度もある。

そんな中でも将来に向かって楽しくは取り組むことができているのも事実である

現在進行形なのでこれが良いプロセスなのかどうかは、数年しないと見えてこないが、一つのケースとしてご覧になっていただければ幸いです。




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