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画面向こうのトートロジー

写真は「私が見ている画面向こう」

 単純なことを態々複雑化する。複雑なことを過度に単純化するのを感じることがままございます。
 ある日TVを点けると「ロシアによるウクライナ侵攻後2年目の今」というものが放送されていた。傷創し、四肢欠損するものの「再び前線に立ちたい」と、病室ベットの上で口にする兵士の声。次に映し出されたのは徴兵逃れを行うウクライナ人というもので、戦争当事国の当時者の明暗を対比させる編集というものだった。
 これが劇場型国家ないし文化圏であれば、「傷つくものの何のその」という映像で終わり、国家の仇をなす兵役逃れという存在はないことにされるのだろう。ありていの美談はこういった時に頻繁に濫造されがちだ。
 兵役逃れ斡旋業者が直接的なのか間接的なのかは知る由もないが、結局のところロシアを利することには変わらない。業者に支払われる資金は資本の流出に繋がり、同時に兵士が一人減るわけだ。侵攻を開始したロシア側が得をするというのは、痛し痒しである。
 では自身が当事者だった場合、勇ましいことを口にし戦場へ参じるかというと、それより先に現実感のある恐怖に慄くだろう。しかし、放っておいても好転する兆候を感じ得ない相手。痛し痒しならぬ、致し還しである。
 望んで始めたわけではない動乱に巻き込まれ、土地が燃え、街が燃え、瓦解するニュース。見知った土地か否かでその深度は大きく差が生じるかと想像する。画面向こうは一人称FPSではないと、当事国やその周辺国は強く認識している筈だ。
 もう一歩踏み込み想像するならば、自身の生活圏、目前に着弾したかどうかで更に違ってくる筈だ。画面向こうのこととはいえ、戦争は広域に人を辛辣にさせ、不愉快にさせる。
 ウクライナ現地の映像からスタジオに戻り、言い渋られる現状に向けられた司会者のコメントに、私は再び辛辣な思いに駆られた。
「ウクライナや西側のプライドが停戦を遠ざけた」 こう口にする司会者から逡巡は感じ得ず、侵略を被った側に向けられた言葉に苛立つ。何故ならばそこには私が記憶しているこの侵略戦争の始まりと、現在との認識に大きな差があるためだ。
 侵攻を受けたウクライナは各国の想定以上に善戦し、首都を防衛。その渦中にもウクライナ、ロシア間の戦争交渉は開催されてきた。
「出席しないことで『ほらみろ、ウクライナは交渉も出来ない国だ』と
するロシア側の策謀を払拭するため」 交渉の席に向かうゼレンスキー大統領の発言を私は記憶している。因みにその席に現れなかったのはロシアの大統領ウラジミール・プーチンだったとこも合わせて覚えている。これではプライドが高いのはどちらだろうか。
 侵略後「ウクライナが核廃棄物や環境に厳し目の廃棄物をぎゅう詰めにし爆散させる兵器こと『ダーティーボム』や、化学兵器を使おうとしている」などの流言が形を変えロシアから幾つも発表された。首都防衛を達成した側がなぜ「死なば諸共!」自国領土を核や化学兵器で汚染するのか。別では、原発を不法に占拠し、臨界が近づたことが幾度もありましたね。
 想定以上の抗戦を受けたロシアはバレバレの嘘を臆することなく発言し、その狙いとは「核や化学兵器の使用を直接的に恫喝出来ないため、匂わせてます。何故なら侵略しているのは此方で、被害者然として立ち回ることが出来ないし」というものが煤けて見えていた。
 これらは私見に留まらない。ロシアが打ち上げる数々の嘘を、専門家がSNSや衛星放送番組、次第に地上波放送に登壇し、打ち消してきたことにも合致している。
 ここまでが2022年頃の記憶。では2024年付近の記憶を掘り起こしてみたい。
 胸糞悪くなる戦争は2年目に突入。ゼレンスキーが停戦交渉を遠ざけているということを私は未だ知らない。
 番組司会者がいうところの「プライドの高い西側」の奴らは「停戦を決めるのは当事国の決定を優先する」という発表を繰り返していたと記憶している。
 プライドが高いんだから上から目線で「停戦しろ! と命令すればいいではないか。何他国の主権を尊重してんだよ。謙虚にすんなよ、プライドが高えんだろ?」と、思った。
 私の思い込みかどうかを検証するため、BBCというプライドの高そうな放送局が制作した、2年目に突入したウクライナ戦争をまとめた動画を鑑賞した。そこには停戦交渉に応じていないのはプーチン大統領とされていた。
☆YouTube BBC New Japan 『プーチン氏の目標は、ロシアの人たちの思いは……ウクライナ全面侵攻開始から2年』

 微塵も思うことはないが、ここでウクライナや、西側のプライドが戦争を長引かせたという論理に基づき考えてみたい。
 ロシアによる侵攻の目標と目的は別にあるはずだ。目標とは大義名分と読み変えてもらっても差し支えはない。
 目標は、プーチン大統領が侵略前に掲げた民族私観。併せてウクライナのナチ公がロシア系住民を虐殺しているため保護するといった内容。
 ではロシアの目的とはなんだったのか。仮に影響力の拡大だったとしよう。影響力を最大で10cm延伸したかったが、ウクライナの抗戦による押し引きで7cmに押し戻され、現状は3cmから3.5cmが妥結点となりそうだ。最大目標以下ではあるが、ウクライナ東部と、以前よりも増してウクライナ南部クリミア半島の統治の強化は可能である。
 致し方ない。人権や国家主権など手間がかかり面倒なことを口にする、自由と民主主義にかまけたアホと交渉し、ここいらで止めておこう。今後のため損耗した軍備の回復に努めたい。
 惚れ惚れとする。求める目標を現実的な範囲に落とし込み、物分かりがいいような話に帰着させる。ウクライナは民主主義を求めたら侵略を受けた。結果ロシアは周囲に威力誇示を図れた。
 プライドの高そうなのはどちらかというと……という思いをぐっと噛み締め、逆の立場、ウクライナ側が侵略した場合を考えてみたい。
 目標は、「本質的な民主主義を!」錦に抱え、尊厳革命マイダン後、ロシアのナチ公がウクライナ系住民を虐殺しているため民保護するといった内容。
 ではウクライナの目的とはなんだろうか。ロシア領土に近い首都キーウ北方の安全圏の拡大。領土を北方に拡大。干渉圏獲得のため侵攻を開始。停戦交渉を重ね、キーウ北方3.5〜3cmの拡大を可能とした。ここを干渉地にしよう。

 侵略行為の本質は「侵略行為は悪い」というそれ以上のことはない。それ故に私はロシアによるウクライナ侵攻は、ロシアだから悪いとは考えていない。侵略した側が悪い。それがロシアだった。ということを繰り返し書いてきた。今後もこの問題を取り上げる毎に書くつもりだ。何故ならば私信にかまけ、安易に正義を取り出すと安直に独善と化す物だから。

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