妄想:世界皇帝誕生

*****  中国は科学技術で食料問題を解決するだろう。遺伝子操作で早く成長する豚やその餌となる家畜用穀物類。農業機械の近代化で、小さな耕作地でも収穫量を上げ人手に頼らない技術を開発する。同時に、都市集中の是正を行う。中国共産党の指導の下、小さな都市に住み続けられるようにインフラ整備を行い物流改革を推進する。いわゆる、科学技術による論理と物理のネットワーク化事業の展開である。

これらは、数世代前の半導体を大量に生産することで実現できる。発動機は電気化され、エネルギーは広大な砂漠から太陽光と天山山脈などから得られた水から、電気分解された水素と窒素によるアンモニアにより、電子の供給と熱量の供給を同時に行い、世界に冠たる「環境大国」を自任するようになる。

アメリカ合衆国が「MAGA」で足踏みしている間、「環境大国=中国と中国共産党」は世界を席巻し、食料問題で苦しんでいる小国に救いの手を差し伸べる。同時に、思うように進まない環境問題に苦慮している西側諸国にも手を差し伸べ、かつてない広範囲な「環境貿易圏」を作り上げる。

もはや、中国共産党のほかに環境問題を解決する集団はなく、「感情の坩堝」と化かしたアメリカ合衆国の衰退をしり目に、基軸通貨ドルから人民元デジタル環境通貨への置き換えを着実に行い、世界貿易の首領として頭角を現す。アメリカ合衆国は貿易関税によって対抗するものの、ドルの価値はかつてないほどに下がり続け、アメリカ経済は低迷を続ける。やがて軍事行動による瀬戸際政策に頼るようになり、同盟国の顰蹙を買う。

中国共産党の信用度はだれも予想しなかった程に高くなり、同時に党主席は神格化した存在になっていく。その姻戚関係は巨大な利権を手中に収め「世界帝国」を形成していく。国際連合の後続の組織から「世界皇帝」の称号を与えられ、世界は統一への道を歩み始める。

その唯一の抵抗勢力である、アメリカ合衆国とロシアが手を結び、持ちうるすべての軍事力を駆使し「打倒!世界帝国」へ跳躍する。

突然、アメリカ合衆国大統領は「世界皇帝に告ぐ。世界秩序を乱すのであれば、我々が貴殿を追放する。期限は明日だ。」と宣戦布告をする。

今日はその日だ。1時間ほど前に大統領の重大発表があり、10分ほど前に1万発を超える核兵器が世界を飛び交っている。ぼくは焼け死ぬ。彼女もそのご両親も、なにより彼女に宿ったぼくの子供も、蒸発する。

ニンゲンは、地球の生物は、あと90秒で終るのだ。  *****


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