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ピンチ"が"チャンス

●ピンチとチャンスの関係性

I'm in a pinch.
=私はピンチである。


これって、"つまむ"というピンチの意味が派生して"行き先が先細りしている状態"を指すのですね。先行き怪しいので危機的状況に陥っている、という状態を指す和製英語らしいです。


へぇー!


ついでに"チャンス"という言葉の意味を考えてみると、"機会"とか"巡り合わせ"とか、なんとなく我々が使っているイメージ通りの意味でした。
ちょっぴりロマンチック。


…だからなんやねん!


ここで先に進むために整理してみましょう。

この2つの言葉は「ピンチはチャンスだ」と、よく言われるように表裏一体の関係なのか?

ということについて考えてみました。
前述した内容から実はこの2つの言葉は相関性があるようでなさそうですよね。

"先行きが細いことは巡り合わせだ"
"先行きが細い機会だ"

…なんとも変な感じですが、捉え方によってはおもしろい結論に至りそうです。
※"pinch"にも重大な局面というニュアンスはあるようです(確認しました)。

…だからどうなのだ!という話なのですが、結局は「ピンチにこそチャンスがあるのだ」という発想を持って様々なことにチャレンジした方が良い、ということを改めて感じました。

現在のような状況を"如何にして乗り越えるのか"を考えていくと、行き着く先は「今こそがチャンスなのだ」という前向きな思想でした。

●能動的な捉え方で乗り越える

ここでタイトルにあるように、

ピンチ"が"チャンス

という言葉こそが今の状況を発展させるキーワードだと考えております。

この言葉は私たちから生まれたモノではなく、一橋ビジネススクールの楠教授があるメディアで発言された言葉を受けて、我々なりに解釈してみました。
偶然にも昨年より様々な施策を生み出す際、同じような思想で取り組んでいたため、この言葉はスッと腹落ちしてきました。

どうしてもピンチと呼ばれるような状況は意図せず、捕捉することもできず、突然やってきます。だからこそピンチなのでしょうが、どちらにせよ自身にとっては危機的状況に陥りざるを得ないことが多々あります。

そんな時に「ピンチはチャンスだ」と、既に起きた出来事に対して前向きに取り組んでいく姿勢が必要になります。
ただ、往々にして人はまず落ち込み、何をしたら改善できるのか、負の感情に支配され正常に考えることができなくなります。実は意外と簡単な発想で改善できたり、もしくは身近な気付きに改善策が埋もれていたりするのですが、想像を超えた出来事に遭遇すると思考停止になってしまう。

だからこそ、前を向くために「ピンチはチャンスだ!だから今こそ踏ん張る時だ!」などと自身を鼓舞する経験をされた方も少なくないと思います。

もちろん良いことなのですが、これはあくまで受動的であり、ピンチが起きたから生まれた発想。
つまり…

ピンチはピンチ

であることに変わりはありません。

あくまで捉え方を変えただけなので、現状の対策としてクリティカルではなく、効果的な施策が生まれる可能性は低いです。中長期的に見れば、そのピンチ体験から生まれた発想で大きな改善を生むこともできそうですが、すでにピンチなのですから精神論的な改善策に頼る傾向にあります。

要するに"気合"というやつです。

では、どのように捉えることができれば危機的状況を乗り切れるのでしょうか。

そもそも目的は"危機的状況を乗り越えた先に、恒常的な成長を得る"ことだと思います。
我々ももちろんそうですが、今の危機を乗り越えることを目的に設定してしまえば、おそらく危機的状況が過ぎ去ったあとに瓦解していきます。
そうなってしまっては、せっかく乗り越えることができたのに全てが無駄な努力となってしまいます。

これは避けたい。

そのために私たちは能動的な捉え方、つまりタイトルにある"ピンチこそがチャンスを生む"というスローガンで昨年より様々な施策を行なっております。
※しかし、特に自慢できるようなイノベーションは起きていません。

自らの変革を時の流れに追随することで行うのではなく、能動的にこちらから仕掛けるような発想でピンチと向き合うと新しい世界が見えました。
※しかし、特に新しい世界に飛び込んでいるわけではありません。

これらは視点を変え、視座を高めることがポイントでした。受動的な姿勢ではおそらく間に合わなかった施策や、能動的な姿勢だったからこそ成果の生まれた施策などに出会うことができました。これは、私自身もスタッフ自身も、そして会社自身に対してもエポックメイキングです。

以下、私たちが行った施策の一部を開示できる範囲でご紹介しようと思います。
※表現はすごくボヤかしています。

●在庫処分よりも店頭鮮度を優先する

昨年の緊急事態宣言においては、全国的に街の活動が停止しました。未知のウイルスとの戦いであるため致し方ないとは感じながらも、当社の経営的には莫大な損失が懸念されていました。

その後に営業再開が認められ、財務的に大きく傷付いた当社店舗を振り返ってみた際、社内でこのような会話がありました。

営業再開して商品が同じだったらつまらない!
商品をガラッと入れ替えて、
新しい気持ちでお客様をお迎えしたい!

これは当社バイヤーたちからの提案でした。

はっきり申し上げて最初は…

え?マジ?お金ヤバくない?

私は狼狽するしかありませんでした。

一般的に(あくまで一般的に)消化率を高めなければ粗利は増えません。
私たちは生活雑貨を多く取り揃えております。
定番的な需要に対するMD設計により、販売期間が長く、キャッシュフローも"売れたら仕入れる"ので比較的シンプルです。
しかし、商品を入れ替えるとなると簡単ではありません。昨年は4/8-5/18まで当社80%の店舗が休業しました。つまり、収入も80%減です。
そこへきて更に仕入れて店頭商品を入れ替えるなんて狂気の沙汰!

…しかし、お客様目線で考えるならば確かにその発想が最も豊かでありました。

なぜなら、休業前にご来店いただいた方々が営業再開時に再来店いただいても、店頭が4月と同じ商品ならば全く面白くない。
例え値引きしてお求めやすい価格になっていたとしても、店頭でお買物する際のワクワク感は棄損され、結果残るのは会社側の「在庫が減って(消化率が高まって)良かった」という自利的な満足。
これでは"危機を乗り越えた先の成長"は程遠いのではないでしょうか。

スタッフの顧客目線にハッとした私は、思い切って指示をしました。

店頭商品を全て入れ替えよう!

その結果、スタッフたちのモチベーションにより営業再開後は大いに盛り上がることができました。既存の顧客様との再会や新しいお客様との出会いなど、粗利以上に得るものが大きかったと感じています。コンセプトを地で突き進むスタッフたちのマインドは素晴らしく、そこから当社店舗の逆襲が始まりました。
※今年はどうしよう…

●必要以上の値引きは抑制する

前述の商品入れ替え作戦によって、在庫がたくさん残ってしまいました。

一般的に考えると在庫はあまり喜ばれません。
しかし、当社は在庫は資産であるとそもそも認識していたので、むしろSALE在庫があることで売上が見込める!という前向きな発想でSALEスケジュールを組んでいました。

そこへきて、またしても社内ではこのような会話が聞こえてきました。

周りのお店はずーっとSALEしてますよね。
プロパーで購入された方は悲しいし、
そこまで値引きされた商品が可哀想ですよ。

…私はハッとしました。
※どれだけハッとしとんねん。

誰よりもお客様のことを考えて、自分たちの仕事に誇りを持っているスタッフたちだからこそ生まれたこの発想に目が覚めました。

実際、私自身もそうですが、悩んで購入したモノがかなりの値引き率(50%offなど)で店頭に並んでいる姿を見るとガッカリします。
とはいえ、我々もビジネス目線で考えるならば在庫は現金化すべきであるので、残ってしまった商品のSALEに対しては前向きです。

しかし、過度な値引きは逆効果。

お客様の信頼を失うだけでなく、その商品を提供していただいたお取引先様にも失礼だし、何よりスタッフたちのモチベーションが下がってしまう。その場の一瞬は数字が伸びるので喜ばしいことかもしれませんが、後々を考えると私たちのお店の魅力度を下げてしまうことにも繋がりかねません。

そこで、値引き率の抑制とSALE対象商品の見直しを行いました。

幸いにもSALE時期になるまでに消化してしまった商品がたくさんあったため、さほど課題にはなりませんでしたが、あのまま大多数の商品に大きな値引きを入れてしまっていたら今のこの環境はなかったかもしれません。

ただ、7月はそれであまりSALEになるモノが少なく、新たにシーズン先物の仕入れをすることにしたので売上が大きく伸びることはありませんでした。
しかし、お客様やスタッフの心の健康的には良かったように思えます。
売上以上の収穫があったのだと、その時を振り返ってみても後悔はありません。

大切なのは真摯にお客様と向き合う姿勢、そして、現場の空気感を掴む思想なのだと改めて勉強になりました。

●厳しい時こそ新規開拓をする

これが最も頭を悩ませた決断の一つでした。

パンデミック下において、営業自粛に代表される小売業/実店舗への逆風は凄まじい。
明確なエビデンスもなく、強力な支援もなく(あるだけ助かっています)、40日強もお店を締めれば小売業者に及ぼす影響は計り知れません。
世間の眼や声は厳しく、お店を営業していることがまるで悪かのような錯覚に陥ってしまいます。
医療体制を確保するために仕方のないことだと割り切ってなんとか堪えましたが、やはりダメージは多大なるものでした。

新たに借入を行い、返済リスクを抱えて営業を再開しました。しかし、再開してすぐは各施策によりある程度の成果が出ましたが、やはりパンデミック下のため目立った集客はできません。
というか、集客がありません。

この状況をどのように打破するのか。

試行錯誤の末、視座を現在から未来へと高めた時にある発想に至りました。

そもそも、私たちの未来はどうあるべきか?

今を乗り切るための絶好のアイデアなんて、そんなにポンポン生まれてきません。そもそも私はそんなに賢くはないし、驚くような行動力を兼ね備えているわけでもありません。
だから、今の自分たちよりも未来の自分たちに眼を向ければきっと何か解決策が見つかると考えました。

災害のようにマーケット全体が過酷な状況に陥った際、厳しいのはどの事業者も同じ。
つまり、大資本の小売企業も新規出店には消極的。小売業は生活インフラの一部ですが、不要不急なモノなんてそんなに存在しません。
つまり、マーケットに我々のような小さな企業が入り込むチャンスなのです。

そして、私たちのコンセプトに立ち返って考えると、やはり行き着く先はここでした。

私たちは人々の暮らしが豊かになるために
まだ見ぬ新しいお客様の元へ行くべきだ。

私たちができることを真摯に考えました。

そもそも我々の商品は一般的に見れば高単価です。もちろんラグジュアリーとは比較にもなりませんが、日用品の中では上質かつ丁寧な商品ばかり。
つまり不要不急ではあるものの、キチンと整理されたブランディングの元で生まれたモノたちは人々の心を満たす個性に溢れています。
これこそが私たちのメッセージでもあり、コンセプトです。

マーケットが落ち込んでいる今こそが新規出店のチャンス。
特に都心のようなトレンド満載の立地ではなく、地域のお客様に愛されるような暮らしのど真ん中。そんな目線で新しい場所を探しました。

そこで幸いにも、様々な偶然が重なり合って出会えた場所が高槻市。

まさしく、私たちの新しいお客様との出会いの場所になりました。

ここから先はドドドとあっという間に過ぎ去りました。いきなり新規出店を掲げたものですから、スタッフたちやお取引先様にはかなり無理を強いてしまいました。
しかし、みなさまの協力があってなんとか無事にオープンを迎えることができ、なんとか売上も軌道に乗り、会心の新規出店になることになりました。

みんな本当にありがとう!
お取引先のみなさまもありがとうございました!

これからもっと良いお店になるように、もっともっと愛されるお店になれるように尽力していきます。

●スタッフの力と逆張りの発想

振り返ると20年度は怒涛の1年でした。

それを乗り越えれたのは、まさしくスタッフたちの力であることは間違いありません。
現場のメンバーたちの視点は常にお客様目線であり、小売業としての的を得ていると思います。

それを最大限に発揮することが経営者としての役割であり、唯一の武器でもあります。
今回の件で大きく学ぶことができました。

そして、ピンチこそがチャンスであると信じて新たな道を模索する逆張りの発想。
これらがしっかりと結びつけば、まるで化学反応のように大きな成果を挙げることができるのだと、これもまた勉強になりました。


タイトルにもある、

ピンチ"が"チャンス

という言葉は、ただのレトリックではありません。

未来を見据え、仲間を信じて託すこと。
視座を高め、自らチャンスを生み出すこと。

私にとってはそんなアツいメッセージなのです。

さて、またしても営業自粛が始まっています。
そして、ウイルスによる猛威の魔の手がすぐそこまで迫っています。

スタッフたちの心と身体の健康を守りながら、会社としてどのような未来を見据えるのか。
怒涛の20年が終わって少しホッとしていた私にとって、地獄のような21年が続くことになりました。

でも、今回もきっと乗り切ることができるはずです。

ピンチ"が"チャンスなのですから!

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