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現在2作こちらでまとめてます。 『絶望反駁少女 希望のビジュタリア』 1億人の人口の半分が60歳以上の高齢者。そのさらに半分が外国人で占められる。 それがクライ・ビジュタリーこ… もっと読む
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2021年1月の記事一覧

絶望反駁少女 希望のビジュタリア Ⅰ-9

絶望反駁少女 希望のビジュタリア Ⅰ-9

不穏
 お嬢様のお色直しを控室の前で待っていたオレを横切ったのは──マグナ・アウストラシアの代表一団と、その輪の中心、オクタヴィア・アウグスタ。
 わざと聞こえるように言ったのだろうが、オレはそいつらの会話を一言一句、聞き逃しはしなかった。

「あれでよかったのですか? オクタヴィア様……?」

「大国のプライドをかなぐり捨ててまで国際社会に泣きつくなんて、涙ぐましい『外交努力』ではありませんか。

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絶望反駁少女 希望のビジュタリア Ⅰ-8

絶望反駁少女 希望のビジュタリア Ⅰ-8

「ここで強調しておきたいのは、少子高齢化というのはいつまでも続くものではない、という事実です」

前の話|最初から読む

『希望』のターン
 この発言で紛糾するということは、つまり会場の識者でさえビジュタリアの少子高齢化は『手遅れ』である、と内心認識していていることを如実に示している。
 少子高齢化は食い止められる──オレが知っている限り、これを明確に言うことができたヤツは一人としていない。
 そ

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絶望反駁少女 希望のビジュタリア Ⅰ-7

絶望反駁少女 希望のビジュタリア Ⅰ-7

 議場がどよめく。 
 なるほど……
 要するに国外から少子高齢化対策の費用を集めようってことね。
 お嬢様の切り札っていうのは、これのことなのか?
 国内での予算に限界があるなら、外から集めればいいじゃない──ってか。
 理屈としてはあまりにも単純明快だが……そう簡単にうまくいくかな?

 そう思っていたのはおそらくはオレだけではあるまい。
 なんとも複雑な空気の中、一人の男が挙手した。

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