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中国はスマホ不要の「決済3.0時代」へ

■支付(決済)3.0時代が到来

まず中国の支払手段の変遷からみていこう。アリババが成功した要因の一つは、売り手と買い手の信用をつなぐ資金プール、支付宝(Ali Pay)を開発したことにある。今では、モバイル決済プラットフォームとして必携の存在であり、双11(独身の日セール)での支払いの主力ツールでもある。この支付宝アプリのアクティブユーザー数はグローバルで、9億人に達する(2018年12月現在)。

しかし5年前の双11では、消費者はパソコンの前にいて、注文の75%はパソコン経由だった。それが今は、ほぼ100%に近い人がモバイル決済を選んでいる。そして今年の双11では、60.3%の人が、生体(指紋、虹彩)認証を本人確認に用いて決済したという。

中国メディアはこの趨勢を「支付(決済)3.0時代の到来」と表現している。1.0時代とは、2014年以前を指す。まだ双11(2013年)のモバイル決済は24%にとどまっていた。2.0時代は2015~17年。2015年の双11でモバイル決済シェアが70%に急上昇。そして2018年には生物認証が60%を超えた。

支付宝は2011年まで、新認証技術の方向性として音声識別を考えていたが、2012年からは指紋認証へと重点を移す。初めて指紋認証決済した人は2014年6月、ファーウエイmate7機のユーザーだ。これはiPhone 5SのApple Payより4か月早いという。

そして支付宝は2018年5月、正式に虹彩認証による決済機能を追加した。

■広がる虹彩認証

虹彩認証システムを採用したというニュースは、途切れることがない。いくつかピックアップしてみよう。

10月に開通した珠海ー香港ーマカオを結ぶ港珠澳大橋では、虹彩認証システムを全面採用し、「虹彩通行」による「8秒通関」を目指す。システムは日本のNEC、ドイツのコグニテック社を抑え、中国の「的盧深視」が受注した。同社の3D光彩認証技術は、テロ防止など防犯分野に採用され、その誤認率は10億分の1で世界最先端という。
深圳市塩田区の聴海図書館は「スマート分館」を開設した。光彩認証技術で認証を受けた利用者は、最新技術を存分に享受できる。貸出し返却には自動認証一体型機が活躍しており、とても簡単だ。また電子書籍は認証1回で、すべて閲覧できる。図書消毒機まで備えた未来型図書館である。
北京市海淀区の北京二十中学は3カ所合計5400人分の学生食堂を持つマンモス校で、現在、生徒と教師の利便性を高めるため、学園のスマート化を進めている。光彩認証導入もその一環だ。光彩認証、従来の学生証、教職員の勤怠管理を一体化されたオンラインシステムに取り込むことで、学園の安全を図る。そのため生徒たちは登下校の際、光彩認証が必要となる。

日本では、「虹彩認証」で検索しても、機器と技術の解説ばかりで、このようなニュースはヒットしない。

■5年後はスマホ不要に?

虹彩認証技術は爆発的に普及する時代に入るだろう。2017年9月、ケンタッキー中国は、支付宝による虹彩認証決済を実店舗に初めて導入した。

今後1年以内に100都市で100万台の虹彩認証機器が導入されるとみられる。ファストフード店にとどまらず、薬局、スーパー、コンビニなど多くの実店舗で使用されるだろう。レジ効率は50%上がり、北京、上海、広州、深圳の一線級都市では、機器1台当たり毎年10万元以上のコスト削減に寄与するという。すでに100万人をこえる消費者が虹彩認証決済をデモ体験した。

さらに虹彩識別技術は行政サービスにも広く応用される。100を超える都市で支付宝の虹彩による本人確認を利用する。社会保険、納税、年金資格取得、証明種類交付などに利用する。

実店舗での生体認証が急速に普及する決済3.0時代は、スマホ不要の時代でもある。複雑な操作やパスワードは必要なく、高齢者層には朗報だ。支付宝も高齢者の取り込みに注力しているという。

5年後には多くのパスワードを管理する必要もなく、外出にはスマホも必要なくなる、先陣を切る中国の動向からは目が離せない。

参照
https://www.ithome.com/0/394/353.htm
http://finance.sina.com.cn/roll/2018-11-15/doc-ihmutuec0255865.shtml
http://news.stcn.com/2018/1116/14667508.shtml
http://www.caigou.com.cn/news/201811068.shtml


コスパ・テクノロジーズCEO / BtoB企業のブランディングと海外向け施策が得意なWeb制作会社 / SNS総フォロワー5万 / HP→ https://cospa-tech.com/