バトンの渡し方が大事
ご無沙汰しています。
最近は本業の方でアウトプットする事が多かったため、ちょっとこちらはサボってしまいました。しかし、ここのところの仕事関係で思う事がありましたので、こちらでアウトプットをしたいと思います。
●精密機器の仕事で学んだ「物の渡し方」
かつて、精密機器の製造の仕事に携わっていたことがありました。いわゆる「ナノテクノロジー」の関係なのですが、その機械に使う部品が、0.1mm以下の傷や歪みも性能に影響するほど、取り扱いに気を使うものでした。
ある日、資材の方から注文していた品物が届いたという連絡を受け、受け取りに行った時の事。普段は指定の棚に来ている資材を、自分で持っていくだけだったので気が付かなかったのですが、その資材担当の方の渡し方が、とても丁寧に感じました。
それは、以下のような事をきっちり行っていたからです。
・物を渡す前に、置き場所があるか確認する
・渡す前に、物の大きさや重さ、持ち方を伝える
・こちらがちゃんと受け取ったことを確認してから手を離す
もしかしたら、品物を運ぶ物流関係の人にとっては、当たり前の事なのかもしれません。しかし、普段物の受け渡しにそれほど気を使ったことが無かった素人の私は、とても感心してしまったのです。
●渡す側の責任
例えば、物を受け取った人が、それを落として壊れてしまったとしたら、どちらの責任になるでしょうか。普通の感覚では、
「物を渡されたのに、しっかり持っていなかったのが悪い。」
と考えるのではないでしょうか。
しかし、もし渡す側が、相手が受け取る準備ができているかどうか確認もせずに、放り投げるように物を渡したとしたらどうでしょう。これは、渡す側に責任があると言えるのではないでしょうか。
私はこの一件から、物の渡し方についてとても気を使うようになりました。ここまで丁寧にやらなくても、少なくとも
・相手が受け取れる状態かどうか
・相手がしっかり受け取ったかどうか
を確認するように、心がけるようになりました。
●仕事も渡し方で結果が変わる
そしてこれは、物だけの事でしょうか。おそらく、仕事の「依頼」や「申し送り」といった、「仕事の渡し方」にも同じことが言えるのではないかと思います。
例えば、ある資料の作成を依頼するとします。その時、ただ
「来週の部内プレゼン向けに、〇〇の資料をまとめておいて。」
と依頼する事は無いでしょうか。
それまで一緒に仕事をしていて、経緯などもよく分かっている相手であれば、それでもある程度伝わるとは思います。しかしそれでも、まず今のあなたの仕事と相手の仕事のプライオリティが異なるかもしれません。
なので、少なくともなるべく無理のない期限を伝えるのが基本です。
さらに、資料の中身にしても、観点だとか、結論を方向付けるための見せ方など、若干の認識のずれがあったりするものです。
その認識がずれたまま、上がってきた資料を見たとき
「何か違うな」
とか、
「わかってないのかな」
という疑問が相手に生まれてしまったりするわけです。
そこであえて、相手がわかっていたとしても、
「来週部内で方針を決めるために、〇〇について具体的な収益モデルを軸として、各案毎の情報を整理した資料を準備しておいて。水曜日の会議に間に合えばいいのだけど、なるべく事前にレビューもしたいから、できれば火曜日の午前中までに作ってもらえると助かる。
ちなみに、今の感じだとB案が一番早く形になりそうだから、この案で合意できるようにまとめられるといいよね。」
と、一言二言だけでも意図を伝えるだけで、上がってくる資料の精度が改善すると思います。
●細かな事にも気を配る
資料を提供する側も、例えば
「メールで送っておいたので見てください。」
で済ませてしまう事はないでしょうか。
相手がメールをゆっくり探している時間が無いかもしれません。なので、少なくとも、資料について聞かれた時に、
「何日の何時頃に資料を送っています。もし今すぐ必要でしたら再送しましょうか。」
くらいの気遣いはあってもいいと思います。
そして、最近は共有ドライブに保存しておくという手段もよく行われるので、そのリンクに案内するというのも、親切なやり方です。さらに、詳細な資料はあるにしても、サマリーという形で伝えておくというのも、一つの気遣いです。
とにかく、資料を受け取る相手がどんな状態なのかに応じた渡し方をするのが大事です。フィードバックが欲しければ、なおさら相手に見てもらえるように、工夫をすることが必要です。
●組織全体を意識する
このような事は、最近多く出ているビジネス本にも結構書いてあったりします。しかし、これが出来るようになるには、どんな意識が必要なのかを考察しているケースが少ないと思います。
私が考えるに、それは
「自分の仕事のアウトプットが、何のためなのか」
を意識する事だと思います。
個人で仕事をするのであれば、自分のために全て自分で行えばいいのです。しかし、会社などの組織では、そうではありません。
最終的に、
「組織全体で仕事がうまく回り、利益につながること」
が目的になります。
当たり前のことかも知れませんが、一方で、会社などでは組織の中で相対的な「個人の評価」というのがあります。この個人の評価をどう捉えているか、またはどのような基準で評価されるかが問題です。
そして、
個人の評価 = 仕事のアウトプット量
と考えている人は、人に仕事がうまく渡せていない傾向があると感じています。
もちろん、自分がより多く稼ぎたいと考えている人は、短絡的な思考で
「渡し方に気を使うよりも、アウトプットを増やさなければ」
と思ってしまうのかもしれません。しかし、
組織のパフォーマンス = 個人のアウトプット
ではなく、組織の中の様々な仕事がうまく回って、組織としてのアウトプットの質と量が、最終的に利益をもたらすものになります。
なので、自分の収入を上げるためにも、組織の利益を上げるためにも、仕事の渡し方が一つ大事な事であり、そこまで含めて「仕事の質」として、評価を考える事が、人にも組織にも大事なのではないかと思うのです。
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