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エンジニアリング組織論への招待①~思考のリファクタリング~

こんにちは。たけぶち(@k_takebuchii)です。

今日は「エンジニアリング組織論への招待」(著:広木大地さん)について共有します!!

インプットの量が多いので、章ごとにまとめていきます。今回は第一章「思考のリファクタリング」について。

リファクタリング・・・機能を変えずにプログラムコードをわかりやすく組み替えること。本書では、「思考の中で発生する無駄なプロセスを排除して、考えるときの指針をもつ」という意味合いで使われています。


1. 問題を「解決」するより重要なこと

問題を「解決」することより、「認知」「明晰化」「発見」することが重要である。これが、本章で繰り返し述べられてることです。

難しいのは、問題を正しく認知することです。人は自分が間違っているかもしれないことを無意識に避けてしまい、正しい情報を認知できません。「自分は間違っているかもしれないが、それに早く気付くほうがよい」と思考のパターンを変える必要があります。(p.33)
必要十分な情報が揃っている状態で、問題を解決することはそれほど難しいことではありません。しかし、社会で取り組む問題の多くは、情報が不完全な状態から始まります。そのため、問題解決よりも先に「どのような問題なのか」をはっきりとさせる経験主義の考え方と仮説思考が重要なのです。(p.50)
与えられた問題を与えられた範囲で解決できるのであれば、それは比較的簡単なことです。しかし、世の中は複雑な相互関係をもっています。そのため、合理的に見える解決策が、もっと別の問題を引き起こしたり、想定しない悪化をもたらす可能性があります。私たちができることは、対立に見える問題を、対立にならない全体像をあぶりだすことと、その解決を個人の問題にせず、関係性の問題に変換して、本当の問題を発見することです。(p.66)

これから紹介する「論理的思考の盲点」「経験主義と仮説思考」「全体論とシステム思考」は全てここに繋がっています。

それでは、片っ端から整理していきましょう!


2.論理的思考の盲点

本書では、論理的思考には2つの前提があるとされています。

・ルールと事象を正しく認知できること
・正しく演繹できること

「正しく演繹できること」は大前提として、事実を正しく認知することは難しいです。できるだけ正しく事実を認知するためには、自分の認知が歪むパターンを知る必要があります。

本章では、認知が歪むパターンについて数多く紹介していますが、重要なのは「認知は歪むもの」「誰しも非論理的思考になりうる」というのを受け入れた上で、歪みに気付いたら思考を切り替えることです。認知の歪みに気付くためにも、自分の認知が歪むパターンを知っておく必要があるということですね。


3.経験主義と仮説思考

堂々巡りの議論で時間を浪費するくらいなら、同じコストで、可能性を一つでも潰す方が前に進みます。ところが「わからない」ということが、ネガティブなことではないかと思い込んでしまうと、「考えたらわかるのではないか」という発想に陥ってしまいます。可能性について論じることはできますが、絶対に正解にたどり着きません。それは、未来や市場は「不確実性」で満ちているからで、人には決して予測のできないことだからです。この「不確実性」を確実なものにするには、未来を現在にすること、つまり、行動して確かめる以外の方法はないのです。(p.34)

「考えたら絶対分かるはず」という前提で問題と向き合ってしまうと、思考の外にある結論にはたどり着けない。だから「考える→行動」の過程に時間をかけすぎるのではなく、行動することで思考の外にある不確実性に踏み込んでみる。これが経験主義の本質だと思います。

この経験主義をさらに生産的な方向にいかす(不確実性を減少させる)ものにするために、仮説検証を高速でまわす。これが仮説思考へと繋がっていきます。


4.全体論とシステム思考

西洋の自然科学は、「より細かい要素」に分解し、その要素の性質を知ることで、すべての自然現象が説明できると考えていました。それに対して、要素の性質よりも、要素同士の関係性に注目する考え方を全体論(ホーリズム)といいます。

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システム思考は、全体論の「ネットワーク構造」「非線形な関係性」「要素の総和では全体の性質を捉えられない」から導かれる思考法です。

筆者は、このシステム思考から問題提起します。

私たちが日々仕事を進めていくときに、一定の対立が発生するのは、なぜでしょうか。上司と部下、部署と部署、個人と個人など、多くの場合、その対立はそれぞれがそれぞれにとっての「部分」しか認識してないために発生することが多いのではないでしょうか。このような局所最適解(システム全体の一部分において最適な答え)が、全体にとって最適な答えかどうかの判断がつかないために、局所最適解同士が争うことになります。(p.54)
私たちはつい、自分から見える世界の中に閉じこもって、正しさや合理性を判断してしまいます。しかし、人間が認知している範囲というのは、全体のごく一部にすぎません。何かが「正しい」と判断したその背後には、必ずその背後に隠されたシステムの外部性を切り捨てることが発生しています。正しく認知できる範囲の広さを「視野の広さ」「視座の高さ」などと表現することがあります。限定された範囲の合理性では本当の問題を解決できません。(p.64)

システム思考が欠けていると、「問題の個別化」や「全体像を見失った局所最適解」に陥りやすいということですね。


5.個人的な見解

第一章を通読していて感じたことは、この章のテーマが「不確実性の存在と向き合い方」であることです。

人はわからないものがコワい。というか、そもそも「自分には何がわからないのか」をわかってないことも多い。それもコワい。そして、なんかわからないモヤモヤを抱えたまま、問題解決しようとして失敗する。

だからこそまず、わかりにくい「不確実性」を理解し、それと向き合った上で問題を「認知」「明晰化」「発見」していく。問題解決はそれから。

これが本章のテーマだと思いました~!

最後に一言!
間違った問題の正しい答えほど、始末に負えないものはない。
- ピーター・ドラッカー -


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