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短い文章、詩、イラスト。 自分の中をどこまでも潜水していくように。 ■←は日記 観た映…

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短い文章、詩、イラスト。 自分の中をどこまでも潜水していくように。 ■←は日記 観た映画や、読んだ本、聴いた音楽の感想もイラストエッセイにできたらな~とか夢は無尽蔵!! 立ち止まったら、何度でも『デミアン』を読み返します。

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都市のケモノ

 あの川には巨象が沈んでいる。私には確信がある。あの川の底には四足歩行のケモノのかたちをした巨象が沈んでいる。今はただ強欲と野蛮と一緒にひと時の微睡みの中にいる。私はいつもの散歩コースの橋の上から、ケモノの寝息が聞こえやしないか、耳をそばだてている。  「やっぱりうまくいかないよ。君はいつ目覚めるの?都市を破壊するのなら、間違いのないように私のことは一瞬で仕留めてね。生存の猶予なんて与えないで。君の目覚めに気づく前に一瞬で。お願いよ」  端の上から川を眺めて、ぶつぶつ呟い

    • 要らぬ助言は、愚か者の自慰に過ぎない

      久々に自分の怒りを強く意識している。 もちろん、日々の生活での細々した不快に小さな憤りを覚えることは茶飯事だけれど、今回のように誰かにどろどろと粘度のある怒りが生まれるのは本当に久しぶりのことだ。 その人は不躾にいう、私が今、無駄なことしていると。 過去を引きずり、その結果、無駄なことをしていると。 その無駄は彼女の物差しで私の生活を図り、その結果を彼女の価値観で評価した結果導き出されたものである。しかしながら、無遠慮に品定めされた私の「無駄」から、彼女の価値観を引いてしま

      • 掬われた日のこと/ユリイカ

        私の始まりのときのことははっきりと覚えている。 それ以前、私は海だった。濃紺で、緩く固まったゼラチン状の深く広い海だった。そこに注ぐのは源を辿れない柔らかい光で、水色の広い天井に時折流れてくる朧雲が温い雨粒を落とすと、海面はとろとろと揺れた。雲が消えると、天井に亀裂が走り、そこから大きな腕が伸びてくる。腕は無遠慮に海に触れ、海を切り取って亀裂の中に帰っていく。 始まりのとき、やはり雨上がりに数本の腕がやってきた。私を切り取った腕はよく磨かれたスプーンを持っていて、不器用な

        • ■美意識のベクトルが違うとなんか噛み合わない

          最近出会った男性と食事する機会があって、いろいろと考えさせられる出来事があったので記録を残しておこうと思う。 私は31歳、男性は5、6個年上。会うのは2回目。初めて会ったときにカラオケで意気投合して、今回は落ち着いて食事でも、という流れ。男性から二人きりの食事のお誘いなんて滅多にないことなので、中学生みたいに舞い上がって、肌整えたり、筋トレにいつも以上に時間をかけたり、自宅用脱毛器で腕やら顔面やらバチバチしたり、当日浮腫みが出ないように塩分に気を使った食生活を心掛けたりと私

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        都市のケモノ

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          同窓会の記録

          数カ月前に、中学3年のクラスで同窓会が開かれると友人から連絡があった。中学時代の友人で現在でも交流があるのはその彼女くらいで、卒業から15年、今更顔もぼんやりとしか覚えていない過去の知人とどんな話題に華が咲くのか想像もつかなかった。「あなたは多分参加しないっていうだろうけど、念のためね、声をかけないのもどうかと思って」奔放な友人が珍しく気を使ったらしかった。その時の私の心境と言えば、ただ退屈だったのだ。この15年で私の人生にもそれなりの起伏があった。では、かつてただ同じ地域の

          同窓会の記録

          ■恋愛難しい

          最後に恋愛をして、早3年。というか、最後も最初のたった一度の恋愛経験なのだけど。まあ、そんなことはどうでもいいか。 元来の厭世観をぐちゃぐちゃに練り込んだ根の深い悲観主義がいくところまでいって「あ、生きる意味なんてないからとことん楽しんじゃえ~~!!」とひっくり返ったハッピー人間になれた私。それはとてもよい。よかった。夢を見ることの意味も考えすぎて、それでくたくたになって目標も見出せなくてぼんやりした日々を送っていたけれど、今は夢見た方が前を向いて上を向いていられるし、なんと

          ■恋愛難しい

          虚船より、フラジオレットを吹く天使へ

          聴こえていますか。 私が宇宙に放たれて一体どれほどの月日が経っただろうか。「どれほど」と多くの時が経っているわけではないような気もするけれど、今はなんだかノートに記した正の字を数えてみる気にもならないのだ。私はここ数日由来のわからない倦怠に襲われている。 私の文体の変化に気づいた読み手はいるだろうか。際立った意味はない。ただ、私のこの随筆が「記号」に変化して、それだけの時を旅して故郷の青い惑星に辿り着くのか、そして一体どれほどの人々に読まれるのか。出航して間もない頃は、私

          虚船より、フラジオレットを吹く天使へ

          君を見ている

          君を見ている。他でもない君を。 世界の底の底、反転して遥か頂上の果て果て、 全てがキリコの絵画めいた匿名性を抱える ゴーストタウンのようなこの場所で、 自身の尾っぽを飲み込む大蛇の蠕動を感じながら。 茹だる暑さに歪む屹立する灰色のオブジェを背景に、 いつも君を見ている。 君が正しくあろうとする行いの裏の卑しい混沌すらも見ている。 与えられた飴玉を噛み砕いて飲み込んで、 硬化した糖蜜が柔らかく温かく溶けていく前に 君は喉を掻きむしって吐き出してしまう。 涙

          君を見ている

          ■シドニアの騎士、映画、観た!!

          ※ネタバレあり  待ってました!来世も是非出会いたい、大好きな漫画! 『シドニアの騎士 あいつむぐほし』観ました。初めてのドルビーシネマってことで、なにやら音響やら、映像やらがすんごいらしいぞ!ぐらいに認識だったんだけど、想像を超えて本当に凄まじいものがありました。 最初にドルビーシネマのなんたるかをたっぷり時間をかけて説明してくれる映像が流れて、「黒」の違いや、音の繊細さに驚いたな。本編とは関係ないんだけど、あの映像と音はプラネタリウムにいるみたいで、なんだか神秘的な

          ■シドニアの騎士、映画、観た!!

          或る、別れ

          思うに、私たちには顔がなかったんじゃないかな。 君が私を見るとき、なんだかのっぺらぼうみたいだな、なんて思ったこともあったんだよ。つるんとしていて、唇だけ赤くてぬるぬる動いて、その蠕動から目が離せなくなって、やっと解放されたと思ったら眼窩にはよく磨かれた眼球サイズのパチンコ玉が埋まっていたんだんだ。その中の魚眼レンズで歪んで、誇張された私の右目が、こっち側の私を食い入るように見ているのがとても怖かった。 それでもぬるぬるの唇は私が欲しくてたまらなかった言葉を次々に吐き出し

          或る、別れ

          虚船より、未知のあなたへ

          聴こえていますか。 星流しの刑に処されて、あの青い惑星から宇宙空間に放たれて、どうやらもうひとつきが経つようですね。閉鎖的な空間に閉じ込められた人間が壁を傷つけて日にちを数える様子は、様々な物語で描かれているのを何度も観ました。幾何か憧れはあったものの、私には古風にもシャープペンシルとノートが与えられています。 私の住んでいた極東の島国では、極刑には「死」が据えられているので、「星流し」の私には、生きる権利があります。だから、この船にはトイレやシャワールームがあって、キッ

          虚船より、未知のあなたへ

          虚船より、青い惑星へ愛を込めて

          聴こえていますか。 私はこの「虚船」で無限の宇宙を旅しています。 いくつか、淡い桃色の約束を携えて。桜の咲くころにきっと会いましょう、徒然、空白の時を彩った交々の話に花を咲かせましょうと、空(くう)で指を切った大切な人が両手、両足に指では足りないくらいいるのです。 視界は、出航の日と変わらず良好であります。人類の罪を可視化した無数のデブリが、宇宙の爛漫な風景を汚している様を私は目に焼き付けています。 私の生まれ故郷である青いあの惑星で、最も美しいものは極東の島国の芽生

          虚船より、青い惑星へ愛を込めて

          世界のたまご

           この世界の秩序に疑問を抱くものなど、存在しないはずだった。  なぜなら、そのように人は生まれ、そのように教えられ、そのように生きてゆくように、生きてゆけるように創られてたからだ。  その秩序は綻び始めている。  世界を生み出した創造主がその力を少しずつ失いつつあるのだ。  知らぬままなら、そのまま。世界は完全で、平静なる円を成していると信じたままその生命を全うすることができた。  しかし、世界の亀裂を見てしまったものは、そこから零れ出る未知に触れずにはいられなくな

          世界のたまご

          ■A.B.C-Zに感謝したい

          生まれてこのかた、といえば大げさがすぎるかもしれないけれど、先月14日まで「アイドル」に関心を持ったことはほとんどなかった。 好きな音楽といえば、汗をびしゃびしゃにかいて、顔をくしゃくしゃにした余裕のない表情で歌い、弾き、語るバンド系だったり、前のめりのなって降霊術でも使っているんじゃないかってくらいの狂気を纏った裸足の歌姫にしか関心がなかった。 むしろ、小声で、今となっては公開と反省の気持ちも込めて正直に言ってしまえは、「爽やか」な笑顔を張り付けて歌って踊る「アイドル」

          ■A.B.C-Zに感謝したい

          完璧な世界についての草稿

           かつてこの世界は閉じられたいくつものシマで分かたれていたという。青のシマ、緑のシマ、赤のシマ、黄のシマ、黒のシマ。それぞれ濃淡、混色様々なパターンを持って、いく通りも存在していた。シマの生物はそれぞれの環境に適応するように塑像されていて、意思疎通の方法も様々だった。あるシマでは、時代の為政者が音や記号に「意味」を縫い付けてシマの生物の思考の縛っていた。  このような世界の在り方はすいぶんと長い間続いたが、ある時の長雨によって青、緑、赤、黄のシマの輪郭が朧になり始めた。透明

          完璧な世界についての草稿

          都市のケモノⅡ/君を掬う

           私は地に足をつけて生きているふりをしている。都市を愛し愛されているような振る舞いをして。彼岸の門をこじ開けるその日まで、あるいはケモノが私を食べるその日まで。私はこのように都市に溶け込んでいなければならない。大丈夫、やれる。私はこれから混雑度120%という悪名高い地下鉄に乗り込もうとしている。  満員電車の攻略法として私が考え出した最良のものはこれだ。頭の中に暗い宇宙を想像する。そこは宇宙の果て。星々も光を受け取れない。ブラックホールの裏側のような、なにもかもが真っ黒な混

          都市のケモノⅡ/君を掬う