株価が上がる株を探すために、結局決算分析はどこを見ればいいのか考えてみた
僕は元芸人の井村さんを見て、「自分もファンダメンタルズ分析で今後上がる株を見つけたい!」と思い、いろいろな勉強をしてきました。
売上、営業利益、経常利益の前期からの伸び率、利益率はよくなってるのか、悪くなってるのか。
PER,PBRは割安か割高か、配当利回りは何%か、配当性向は?
と、多くの人が発信してる指標はしっかりとチェックしましたが、じゃあ来年の業績はどうなるのか、5年後、10年後は?と考えてみても、「今と同じように伸びてくれたらいいな」くらいでしか考えていませんでした。
正直ほとんど何も考えていないのと変わらなかったと思います。
なので今回は、僕と同じように「決算発表があっても結局何を考えたらいいのかわからない」、「今後会社が成長するかどうかよくわからない」という方が、何を考えればいいのかを具体的に紹介します。
1, 業界の動向と今後の見通し
まず初めにこれが一番大事です。
「当たり前だ」と思った方は多分この記事で書く内容は普段から意識してると思うので、具体的に掘り下げて考えてみることが大事です。
僕が分析するときは、
市場規模
市場の今後の成長率の見通し
市場シェア
競争優位性(参入障壁)の高さ
を特に意識して調べて重要視しています。
株価が上がるためには利益が必要です。
利益を上げるためには売上が必要です。
そして売上は、市場規模×市場シェアで決まります。
なので、究極的には市場シェアを大きくするか、市場規模が大きくなるかのどちらかが最低限達成できないと株価はあがらないと考えられます。
だからこそ、その業界の市場規模はいくらなのか、今後どのくらいの規模で成長していくのか、市場シェアはどのくらいなのかが重要です。
まずはこの3つの数字を考えましょう。
次は市場シェアが今後上がるのか下がるのかを考えます。
ここが正直一番難しいところだと思います。
やはりその業界で働いてる人の知識の量や現場の感覚にはかなわないものがあるからです。
話は少しそれますが、これが自分の働いてる業界や、詳しい業界の株を買った方がいいといわれる理由です。
市場シェアが上がるか下がるか、これは主にその会社に競争優位性があるかどうかということになります。
これを考えることが最も大事ですが、同時に最も難しいです。
IR資料を見てもそれがどうすごいのか、ほんとにその優位性は今後も続くのかはその業界の事情に特別詳しくないと正直わかりません。
なので僕は、優位性を考えるときは参入障壁の高さを考えるようにしています。
参入障壁が低い場合、他社もすぐに模倣できるので競争が激化します。
競争が激化すると基本的に価格が下がってくるので利益率が低下してしまいます。
また、市場のプレイヤーが増えると市場シェアも低下してしまいやすくなります。
以上のことから、僕が分析をするときは市場規模と今後の成長率の見通し、市場シェア、競争優位性(参入障壁の高さ)をまず分析します。
2, 過去の業績の推移
次に考えるのは過去の業績の推移です。
基本的に3~5年分の決算資料をもちいて過去からの推移を見ます。
IPO銘柄の場合、上場前の決算の数字は簡単にしかわからないのですが、基本的には売上が増加傾向であるか、利益も増加傾向であるかを見るだけです。
市場規模が成長していく中で、シェアが増加傾向なのか減少傾向なのか大体の目安にします。
売上と利益が増収増益になっていることが望ましいです。
もし売上や利益が減少している場合、その減少が一過性のものなのかどうか考える必要があります。
コロナ後の特需によってたまたま売上が大きく上がって反動減になっているだけの場合など、問題ないこともあります。
主要な財務指標で大切なものは以下の通りです。
売上高
売上総利益・売上総利益率
営業利益・営業利益率
経常利益・経常利益率
当期純利益・当期純利益率
総資産額
純資産合計
自己資本比率
ROIC(投下資本利益率)またはROA(総資産利益率)
従業員数
(上場している場合は)PER
(ある場合は)営業キャッシュフローと営業キャッシュフローマージン
しっかりと分析する場合はこれらの分析が必要になります。
1つずつ説明していきます。
必要のない場合は飛ばしてください。
売上高
重複しますが、売上高を比べることで競合他社と比べて市場シェアが高いのか低いのかを推計することができます。
利益があがっていくのに一番大事な指標になります。
売上総利益・売上総利益率
粗利益ともいいます。
売上から製造原価を引いたものです。
売上総利益率は、同業他社と比較して高ければ高いほど儲けがでやすいことがわかります。
営業利益・営業利益率
本業の儲けのことです。
売上総利益から給料や広告費、家賃などの経費を引いたものです。
営業利益率も売上総利益率と同じく、同業他社と比較して高ければ高いほど儲けがでやすいです。
経常利益・経常利益率
本業以外で得られた利益や金利の支払いなども含む全部の利益です。
有価証券の売却や為替差益なども含みます。
当期純利益・当期純利益率
1年間の事業の最終的な利益です。
高いほどいいのは間違いないですが、純利益だけ見ても株価が上がるかどうかはわかりません。
総資産額
自己資本と負債の合計です。
総資産が多いほど会社の規模も大きくなるので市場シェアにも影響します。
また、自己資本比率などの指標を計算するときなどにも使います。
純資産合計
資産から負債を引いたもので、誰かに返済する義務のない企業の資産のことです。
こちらも指標を計算するときによく使います。
自己資本比率
自己資本(純資産)が総資産の何%あるかを示す指標です。
一般に高いほど良いと言われますが、自己資本比率が高いとレバレッジが少なくなるので、収益性や成長性が低くなる可能性があります。
ROIC(投下資本利益率)
投下資本(自己資本+有利子負債)にたいして、いかに効率よく稼げたかを示す指標です。
同じ利益額なら投下資本が少ない会社の方が効率よく稼げているとなります。
ROA(総資産利益率)
総資産にたいして、どれだけの利益を上げられたかを示す指標です。
一般的に5%以上あると優良な会社だと判断されます。
数年で上昇傾向なのか減少傾向なのかを見ます。
従業員数
イメージ通りですが、従業員数が多いほど会社の規模が大きくなるのでメリットになりやすいです。
一人あたりの生産性などを測るときにも使います。
PER(株価収益率)
現在の株価が利益の何倍まで買われているかを示す指標です。
株価の割安性を判断する時に使います。
業界平均や同業他社と比較することで、現在の株価が割安なのか割高なのか考えます。
営業キャッシュフロー
本来の営業活動から得られた金額を示したものです。
キャッシュ(現金)がしっかりと回収できているかがわかります。
営業キャッシュフローが急激に減少したり、マイナスになっている場合は、何らかの問題を抱えている場合があるので注意が必要です。
営業キャッシュフローマージン
売上に対してどれだけのキャッシュを獲得できたかを示します。
どれだけ効率よくキャッシュを稼げているかがわかります。
以上のような指標を見て、今後も伸びそうかどうかを考えます。
売上高、営業利益などは主に成長性、ROA、ROICなどは主に経営効率性、営業キャッシュフローは主に安全性の判断に活用します。
会社が倒産する原因は資金繰りの悪化です。赤字企業でも資金繰りに問題がなければすぐに倒産することはありません。
また、黒字企業でも資金繰りが悪化してしまうと倒産することもあります。
なので安全性を考える時は主にキャッシュフローを参考にします。
営業キャッシュフローが上昇傾向になっているか、現金及び現金同等物が増加傾向にあるかというのが一番重要です。
ROAやROICなどは経営効率を考えるのに使えますので、過去の推移を見て効率がよくなっているのか、悪くなっているのかというのを確認します。
これらの指標の数字が下がっている場合は競争環境の悪化などで価格が下がってしまっている可能性などがあるので深堀りして確認します。
このように過去の決算を通して見てそれぞれの指標がどのように推移しているのかを分析することで、今後もその競争優位性が続くかどうかを考える手がかりになります。
3, 同業他社分析
最後に大切なのは同業他社分析です。
投資しようとしている会社が今後シェアを伸ばすのかどうかはその競争環境に深く関係しています。
競争優位性があるか考えるときも、同業他社分析が手助けになります。
売上規模の違い、利益率の違い、純利益額の違いなどでより儲けやすいビジネスモデルを構築できているかがわかってきます。
また、業界順位や市場シェアなどは統計資料が見つからないこともあるので、そのようなときにこれらを推計するのにとても役立ちます。
使う指標は過去との比較で使う指標と同じです。
同業他社も上場している場合は、PERやPBRなどの株価指標も参考にすると割安度合いがわかります。
同業他社の株価指標を参考にすることで、投資しようとしてる会社の目標株価をイメージできます。
他にも、同業他社と比べて経営指標に違いがあるはずなので、その違いはなぜ起こるのかを考えていきます。
その違いを徹底的に深掘っていくことが競争優位性を考えることにつながります。
例えば、売上はあまり変わらないのに利益が2倍近く大きかったらそこに競争優位性がありそうだ、と仮説を立てられます。
そうすると、売上が同じで利益に差を出すには原価が安いか経費が安いかのどちらかの要因があると考えられます。
原価が安いのはなぜか、経費が安くなるのはなぜか、と考えていくとそこに両社の戦略の違いがあって、それが競争優位性につながっていると気づくことができるのです。
このように同業他社と比較することで、その会社がどのように他社と差別化し、今後のシェアを大きくしようとしているのかを想像できるようになります。
自分の中でこのようにストーリーをたてて考えることで、短期的な値動きに流されずに握力を高めることもできるようになります。
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