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【短編小説】東京の朝

今日も中央線に乗って大学へ行く。
そんな毎日に嫌気がさしていた。

中学高校と自転車通学していた私にとって電車はストレスだった。
毎日毎日、電車の時間に合わせる自分が嫌だった。
俺の来る時間に電車が来い。
そう何度も思った。

しかしながら、2年生になり唯一楽しみができた。

それは毎週月曜日と水曜日にだけ
同じ電車の同じ車両で同じ駅で降りる彼女の存在だった。

毎回目だけが合い、会釈もないが
とにかく清楚で可愛い女の子だった。
同じ大学ではなかったため、
近くの大学か専門の1年生なんだろうか。
やっぱり東京は女の子のレベルが高いなぁ。
そう思っていた。

私たちは入口付近の対角に立つ。
これが2年目、いつも通りの日常だった。

大学生になった私は相変わらず頭が悪く必須科目の単位を落としたため1年生と同じ講義を受けていた。
だから月曜と水曜は1限から受ける必要があった。

そんな日常が過ぎ、前期最後の講義の水曜日。
寝坊してしまい、間に合わず電車が閉まった。
遅刻確定もお構いなしに発進する電車。
目の前で去っていく彼女。
恥ずかしくて熱くなる顔。
そして彼女はこちらに気付き、
少し微笑んでいるように見えた。

・・・その日を境に彼女は変わってしまった。

大学は翌週から夏休みになった。
東京の夏はそこまで暑くなかった。
実家へ帰ると、関西暑すぎ~っと、都会人感を出すために毎年言っていたな。
そして夏休みを満喫し、東京へ戻ってきた。

後期の必須科目の単位も当然のことながら落としていたため
月曜日と水曜日は朝から中央線に乗り込む。
そして後期の初日。

いつもいるはずの彼女はどこにもいなかった。

ああ、時間割が変わったんだな。
そう思っていた。対角にはギャルが立っていた。
ん?え?

そう。彼女は変わり果てた姿になっていた。

私があの日電車に乗り遅れなければ
私があの日寝坊しなければ
私が、、私がと後悔した。

彼女はこんな子じゃない。
元の彼女を返せ。
ひたすら後悔した。

水曜日にもやはり同じ電車だった。
やはり彼女で間違いではない。
ただ私の知っている彼女ではない。
私の知っている彼女は
巻き巻きした金髪で
ケバケバした化粧姿ではない。

この日から私は変わった。
もう電車通学辞めようと。

私はバイクの免許を取得した。

そして甲州街道を走って通学した。

彼女との思い出を背に。


#何言ってんだこいつ
#ただの他人の話
#大学デビュー

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