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月に祈りを、干物女ver.|散文

なぁ、俺は死ぬんかな……

……は?
なにを馬鹿なことを言っておるのだ、と
顔をみれば彼は至って真面目な面持ちで
あたかも死の宣告でも受けて参りました
のような絶望の眼差しを僕にむけている

……何があったのか話してみろ
とでも訊いて欲しいのであろう、沈黙
さすがの僕でもそうするべきだと読めた

中学んとき行方不明になったあいつ……

……あいつ? あ、思い出した
たしか彼と仲良しだった友達のうちが
家族ごと行方をくらました過去があった
それが何の前触れもなしに行方を知った

……それは良かったじゃないか
いや其れだけではないのだ、と彼はいう
何十年も交流がなかった旧友からの電話
どうしたと訊けばやっと見つけたと返事
かと思えば、何十年も音信不通だった
これまた古い友達からのワン切りにあい
用事かと折り返せば間違えたと、苦笑い

喧嘩は絶えんし……
引っ越しは余儀なくされるし怖えぇ……

そう、
昭和のおっさんが本気でびびっている
だから墓参りでもして御先祖さまにでも
すがろうと帰ってきたのだと鼻をかく

……そ、そんなの迷信だよ
と笑い飛ばしてやりましたとも、僕は
しかしながら心の内では青ざめておった
何を隠そう、この僕も
ここのところ不思議なほどに夢に旧友が
現れては意味深な態度をとってくる……
どうかすれば、夢への出演をもって
その友達の存在を思い出したりもする

ええ、そうです
昭和のおばんが本気でびびってたりして
また、やたらとリアルな夢が続いてたり
なんなんだ? 僕たちに何かあるのか?
迷信だよな? うん、そうに決まってる

これは……あれだ、
月に祈ったりとかしてみることにするか
それがいい、……うん、そうしよう。

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