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Vol.5 指示ではなく、シェアを。歯科クリニック経営において大切な「チーム力」を伸ばすために

暑い日が続いていますね。みなさんこんにちは。歯科コンサルタント角 祥太郎のマネージャーを担当しております、高橋です。

前回のnoteは、ご覧いただけましたか?歯科クリニックを長く続けていくために必要不可欠な「集患」についてお届けしました。つい SNSなどを活用して劇的に集患力を伸ばしたいと夢を見てしまいがちですが、やはり目の前の患者さんに真摯に向き合うことこそが、「集患力」につながるのですね。

今回は、歯科クリニック経営において大切な「チーム論」について。院長の指針をどうスタッフに伝えるのか?スタッフ一人ひとりに主体性を持ってもらうためにはどうすればいいのか?など、チーム力を高めるためのコツを歯科コンサルタントである角 祥太郎に聞きました!

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チーム力を伸ばすためには、「ルール」「フィールド」「ポジション」を知る

ーー 歯科医院という組織の体質を改善する場合、「人」が重要になると思います。その際に、角さんはコンサルタントとして人材育成やスタッフの指導も行うのですか?

人材育成とは少し違うのですが、意識を変えるためにアドバイスに入ることはありますね。人と人とが働く場ですから、チームワークがとても重要です。

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指導の際に、まず最初に取組むのは、自分たちが働くクリニックのルールを把握してもらうこと。サッカーや野球と同じように、自分たちがやろうとしているスポーツのルールを知らなければ、適切な動き方もわかりませんからね。

ーー なんというか…….。結構当たり前のことを言っているような……。

ここでいう「ルール」とは業務内のマニュアルではなく、歯科クリニックの行動指針をさします。ここのクリニックの院長はどんな方針のもとに日々、治療を行なっているのか。受付や歯科衛生士さんといったスタッフにどういったことを求めているのかなど、院長先生のマインドを言語化していくんです。

ーー 確かに、自分が働いている歯科クリニックの院長が普段どんな考え方や価値観で働いているのかを聞く機会って、あまりないかもしれないですね。

そうなんですよね。ただそのルール自体が、そもそも曖昧だったり、ぼやっとしているクリニックが多いのも事実なんです。

ーーということは、院長に明確な答えがないということですか?

どんな歯科クリニックを作っていきたいか、治療を通してどうしていきたいかなどをスパッと発言できない。答えがないわけではなく、言語化できていないというほうが正しいでしょうか。ただ、これは同情ではないのですが、クリニックの最高責任者という立場の院長が、ビジョンを答えれないことって、この業界では仕方ない面もあるんですよ。

ーーといいますと?

一般企業では当たり前になっている「ボトムアップ型」の働き方が、歯科クリニックでは難しいんです。なぜなら、医療は基本的に、検査・診察結果をもとに医師が診断し、指示を出すからです。これって典型的なトップダウンですよね。むしろ診療に関しては、絶対にトップダウンでなければいけません。

一方で、クリニック内にある業務のすべてが「診療」かというとそうではないですよね。業務は「診療」と「診療以外」に分かれているんです。しかし、そのふたつを一緒くたにして、全てをトップダウンで進めているクリニックが多いんです。

ーー チーム力を活かすために、ボトムアップ型の働き方を採用する一般企業が増えていますが、こと歯科クリニックにおいては、トップダウンとボトムアップを両立させる必要があるのですね。

「この業務は診療だから、先生の指示を待ちましょう」「診療以外の業務は、スタッフが意見を出し合い、報告しましょう」と、区別できていれば問題ないのですが、トップダウン型に慣れてしまっている場合、スタッフは戸惑います。

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診療に関係のない些細なことも、院長の指示を仰ごうとしてしまうクリニックもあるくらいです。それに、リーダー格のスタッフが「院長先生の指示をあおぎましょう」というと、他のスタッフからは、とたんに意見が出なくなってしまいます

ーー ベテランスタッフの方ほど、これまでの考えを切り替えるまでに時間がかかりそうですね……。でもなぜ、いわゆる“指示待ち状態”になってしまうのでしょうか。

「先生が正しい答えをもっている」と考えるからではないでしょうか。

「診療」には、数学のように明確な答えがあるんです。そしてその答えを、先生が出すことで、診療が成立しているわけです。

ところが、診療以外の業務で発生する問題には、明確な答えはありません。その都度、自分たちで試行錯誤する必要があります。仕事って基本、答えのない問いの連続ですからね。

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試行錯誤って、多様な意見をかけ合わせながら策を練る、掛け算のようなものだと思うんです。でも、その試行錯誤を繰り返す過程に、マイナス意見を持ったストッパーが一人でもいると、試行錯誤どころか思考停止状態になってしまう。考えられないので、院長の指示を仰ごう、となってしまうわけです。

でも、みんなラクしたくて待っているわけではないんですよ。先生を信じて、善意のもとでそうしてしまうんです。

そうすると院長は、すべての判断を背負うことになります。ただ、歯科経営で生じる日々の悩みを分析すると、問題は診療以外の仕事に潜んでいることが大半なんです。

ということは、診療以外の問題解決に院長のリソースを割くことは、本業である診療を圧迫することにも繋がるんです。

ーー 歯科医院の経営に関わる重大な問題ですね。そこまでトップダウン体質が浸透してしまっている歯科クリニックに指導に入るとき、まず何から始めるのですか?

そこで冒頭にお話した「ルール」に戻るんです。まず、診療と診療以外を明確に区別し、各スタッフが、それぞれのフィールドを守るためにどうすればいいかを一緒になって考えます。

歯科医師と歯科衛生士という有資格者は、歯科医院経営における“生産”を担う役割をもっている。彼らは「診療側」ですよね。そして受付や歯科助手といったスタッフが、「診療以外の業務」を担うわけです。彼ら彼女らに話すのは、「診療は医師と歯科衛生士のフィールド。そして診療以外の業務があなたたちのフィールドです。それぞれの持ち場を理解し、円滑に動かすことで、診療に集中できる環境をつくることができます」と、筋道立てて説明するんです。

ーー トップダウン、ボトムアップ以前に、「ルール」を把握することで、自分の役割が自然と理解できそうですね。

「クリニック=診療」だから、診療以外の業務に携わるスタッフたちは、そもそも自分のフィールドなんて無いと思い込んでいるんです。だから指示を待ってしまう。

きちんと一人ひとりに活躍できるフィールドとポジションがあることを、しっかり伝えるところからはじめていきます。チームが動きだすのは、そこからですね。

スタッフを動かすのは、院長のビジョン。

ーーとはいえ、スタッフ一人ひとりがすぐに行動を変えるなんて、簡単にできるものなのでしょうか?

もちろん、なぜ変えるのか理由もわからずに、行動を変えろと言われて難しいでしょう。そのためにも、院長自身が自分の考えを言語化して、スタッフに伝えなくてはいけません。つまり「ルールの明確化」です。

医院を構成するスタッフの強み・特色を理解し、どういうチームを作りたいかを考える。これは、監督である院長にしかできませんからね。院長の考えに共感し、ゴールを共有できれば、スタッフたちの行動は、自然と変わっていくんです。

ーー 院長のビジョンを明確にして、スタッフに共有することが大切だと。

たくさんのクリニックを見てきましたが、活気のあるクリニックには共通して「やわらかさ」があるんです。強さ・大きさ・深さではなく、やわらかさ。それが何かというと、意見を柔軟に取り入れる“吸い上げ力”なんです。

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誰もが自由に意見を発信し、多様なアイデアを取り入れる環境が整っている。その環境を維持できるのは、スタッフの心理的安全性が担保されているからなんですよ。

ーー 心理的安全性……。それは人間関係が良好という意味でしょうか?

それもありますが、安心して自分の意見を提案できる仕組みが整っているかどうかということ。

例えば、なにか意見を募ったときに、あるスタッフの意見が採用されたとします。でもそれが、匿名性のない状態で上層部まで伝わり、「あれ、あの子が言ったらしいよ」みたいに変な噂が立ってしまうと、台無しですよね。スタッフが自発的に意見を出すようになっていたとしても、一瞬で元通りになってしまいます。

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ルールや院長のビジョンを共有しても動かない組織は、心理的安全性がすごく低いケースが多いですね。心理的安全性を高めるためには、結構テクニカルなスキルが必要になるので、私のような存在が外部から入って、第三者として指導するほうが効果的です。

ーー 第三者のアドバイスを素直に受け入れてもらえるものなのでしょうか?不信感を持たれたことはありませんか?

案外、外部からの意見のほうが、素直に聞き入れられるものなんですよ。歯科医院の経営者をしていた頃に、自分で身を持って体感しましたから。外部から講師を招き、定期的に研修会をやっていたのですが、私が何度言っても聞く耳をもたなかったことでも、外部の講師から言われると、スタッフみんなが素直に受け入れてくれるんですよ。

ーーあー、でもわかる気がします。指導には、客観性も必要なのかもしれませんね。ちなみに、今日お話いただいたような指導を行うときに、改善までにはどのくらいの時間を要すのでしょうか?

それはクリニックによりますね。でも、私がやっている指導は、徐々に体質を改善していく、漢方薬のようなものなんです。だから「劇的に変わった!」という印象をうけるクリニックは、逆に危ないと思っています。とくに、クリニック全体が忙しい雰囲気になってしまう場合は特に良くないです。「外部から言われたから、やらないといけない!」と、無理をして立ち回ろうとしていた場合、一時的に改善できたとしても、長続きはしないでしょう。

自分たちには自覚はないけれど、第三者から見て変わってきているな、というくらいがちょうどいいんです。

ダイエットに近いかもしれません。生活習慣を改善することで、自然と体重が減っていくのが健康的にも理想ですよね。無理な食事制限やキャパを越えた運動は、そもそも続けることが大変じゃないですか。

歯科クリニックの経営もそれと同じ。一時的な目的を達成するだけではなく、ずっと続けていかなくてはいけないものですからね。


【マネージャー 後記】

今回は、クリニックの「チーム力」を伸ばすために、実践している指導内容についてお話いただきました。

歯科経営におけるトップダウン体質には、医療という組織の体質上、難しい課題があったのですね。活躍できるフィールドがわかり、自分の仕事にやりがいを感じられれば、歯科クリニックに勤めるすべてのひとが主体性を持ち、徐々にクリニック全体の雰囲気も変わっていくのかもしれません。

さて次回は、歯科医院のオリジナリティ」についてお聞きしました。クリニックの個性ってどうやって出せばいいの?そんな疑問に、角祥太郎がお答えしていきます!次回の更新をお楽しみに。

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