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積もらない雪、つのる寂しさ

今年の冬は暖かくて、春のはじまりのような気温と天候が続いている。

例年の2月といえば、曇天または降雪が続き、妻有はグレーの空に包まれている。
節分を過ぎても春の気配は遠く、もうこのまま一生冬なんじゃないかと思うくらいとにかく雪が降る。
雪が落ち着くのは3月頭。朝、窓際に射す朝日が眩しくて尊くて、夢を見ているようなふわふわとした気持ちで目を覚ます。
4月になると青い空に浮かぶ雲と、道の脇に残るまだらな雪がなんとも言えない切なさを誘う。数ヶ月に渡り生活を共にした雪にはなんだかんだ愛着があって、陽に照らされながら少しずつ消えていく白に痛みを感じるのだ。

今年はほんとうに雪が少ない。全く降らないわけではないのだけれど、着込んだら暑さを感じてしまうくらいに陽射しが暖かく、雪は積もっても数日で消えてしまう。見慣れたグレーの空はなかなか現れず、雪の代わりに雨が降る。季節の変わり目みたいな生ぬるい昼間に遭遇すると、カレンダーの日付を思わず疑ってしまう。

妻有に来てから、5回目の冬。豪雪地帯だからこそ成り立つ生活が仕事にも日常にもある風景に、住む人の逞しさと優しさを感じてきた。
どれだけ降っても通勤時間帯に整備された雪道、流雪溝(降った雪を排水路に落として消すためにエリアごとに水を流す時間が割り振られている)に合わせた生活リズム、他人知人関係なく雪で困る人に差し伸べられる手。
2mも3mも街に雪が降るなんて都会では考えられないけれど、実際にここで暮らしている人たちがいる。「自分も自然の中の一部なんだ」と思わせられる圧倒的な環境。それらはすべて、雪から知った感動だった。


雪が積もらなくて寂しい2月。
今日は久しぶりに、ふわっともこっとした白が空から沢山落ちている。
明日起きたら、窓の外はどんな景色が広がっているんだろうか。

#エッセイ #地方移住
#女子サッカー #地域リーグ
#十日町 #津南町 #越後妻有

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