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【ちょっとでいいのだ】 

 ちょっとでいいのだ。
 冷蔵庫の奥に追いやられてやがてはゴミ箱に行く末路の変わったタレも、3連パックの方が安くて選んでいる納豆も、目が痒いなと思って買ってきたアイボンも。ワガママだと思うけれど、本当は、ちょっとがいい。

 実家のお歳暮でいただいた特量の万能タレ。使い切るまでに一年以上かかった。やれやれ、賞味期限が少し過ぎたあたりで、どうにか料理に忍ばせて使い切った矢先、よく似た新しいものが巡ってくる。同様にして、徳用ジャムも冷蔵庫の奥に眠っている。食材はとてもありがたいけれど、余らせてしまう特量サイズや徳用パック。そうしたものを私は断れなくてずっと貰っている。とはいうものの、「使いそう」「使うかも」という可能性もある。100%いらないわけでも、さりとて必要不可欠なわけでもない。頑張れば食べられるし、嫌いな食べ物もない。そういうわけで、貰ってすぐに捨てたりもしないし、そもそも染み付いている「もったいない」精神がそうさせない。
 将来的な食糧難がささやかれているこの時代に、贅沢なことだとは思うけれど、このような一見些細なフードロスの積み重ね、たくさんの方がしていることかもしれない。(意地でも使い切ってやるわよ!というスーパーダンドリ上手の人もいるかも)
 
 さて、四十を回って「増量」という言葉に惹かれなくなった。増量なんてするのなら、少なくなってもいいから価格を抑えて欲しいというのが、私の子なし夫婦のライフスタイルの中で響いてくる本音。
 少し前、ローソンはお弁当やスイーツを47%増量していたけれど、購買意欲がまったくそそられない私のような人も多かったのではないか。

 先日、購入する牛乳を1Lからハーフサイズの500mlパックに変えたところ。目を洗浄するのに期限内に使いきれないアイボンも、ミニサイズに変えた。むろん、どちらも割高になるのはわかっているが、美味しく味わう適量が我が家ではそのサイズとなる。もちろん、それらが余りやすい傾向にあるとわかるには少なくとも2年以上リピートして購入して導き出した結果だ。
 自分の身の回りのものだと、こうして調整することができる。

 とはいうものの、突発的にやってくるのが、食べ助け。たくさんいただいて…という前置きで、助けて欲しいという本音を匂わせ、困り顔のち懇願モード、やがて笑顔を向けられると、ほぼ受け取る。その時に発している「ありがとう」は「頑張って食べます」という義務感のようなものを含んでいるような気もするんだけれど。
 さて、ニコニコと受け取って、扉を閉めた後には、どうやって使い切ろうか、食べ切れるか。と不安の波が押し寄せるが、やがて奥へ奥へ追いやられ、期限が来るまで冷蔵庫で眠らせてしまい、遂には……。
 贅沢な悩みと知りながら、やはり思ってしまうのだ。

 ちょっとだけでいい、
 ちょっとだけがいい、と。


【あとがき】
 いっそのこと、お歳暮・お中元・お土産文化をやめて「好きなものは自分で買う」というのが定着すればいいのに……。
 でもでも、ちょっと待って!
「あの店のパン美味しかったから、今日会うあの人に持っていこう」なんて、ギフト選びができることも楽しみだったりするんですよね。そのあたりは負担にならない適量を選べたらいいな。

 
2023年3月29日 香月にいな

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