会社からの「過誤記憶」と「洗脳」について

ハンナアーレントの映画を観ていたら、挿入されているアイヒマンの裁判映像と、PIP・退職勧奨を進める役員や人事に消極的加担をし続けていた直属上司やメンターの姿勢があまりに重なって見えてしまい、理解に役立ちそうな本を2冊借りてきた。
そのうちの1冊目「悪について誰もが知るべき10の事実」(著者:ジュリア・ショウ)を読み始めた。

まだ、「はじめに」の11ページしか読んでいないが、付箋だらけだ。
率直な心境を言うと「読んでいてぞくぞくする」。

”これまでにしでかした最悪のことを思い浮かべてほしい。”(P4)
”本書の対象はあなただ。私はあなたに自分自身の思考と考え方の癖を理解してもらいたいのであり、他の人たちの犯罪の事例を具体的に上げて非難したいわけではない。”(P6)

無学な素人ではあるが、私は、人は誰でも無意識に(時には不作為、見て見ぬふりをするという形で)悪に加担してしまうバイアスが働きやすいと考えている。
その答えの一つが得られそうな興奮と、自分自身の直視したくない一面にも向き合わざるを得なくなる緊張感が堪らない。

前置きが長くなったが、タイトルの「過誤記憶」である。
これは本書のP7に出て来る「起こっていないことを実際にあったかのように感じる記憶」のことであり、「過誤記憶はごくありふれたものだ」と書かれている。
また、事例として、アルコール依存症の治療中に「原因のひとつは子供時代の性的虐待歴だ」とセラピスト等から繰り返し吹き込まれた男性が、実際にその記憶を抱いてしまい、加害者であると思った父親を刺殺してしまったという件が記載されている。

ここまで(ほんの11ページだが)を読んで、私は2つのことを考えた。

①「あなたには不足点がある。会社の期待値に達していない」と再三、人事部や役員に言われたが、客観的な根拠が提示されなかったこと。また、労災申請にあたり主治医に開示してもらったカルテに記載されていた「指導の名を借りた洗脳活動のように解釈されうるストレス」という文言。

意図的かそうでないかは会社にしか分からないが、パワハラ・PIP・退職強要での指導は従業員にマイナスの過誤記憶を起こしかねないのではないだろうか。
その場合、誰が過誤記憶を修正しうるのか。吹き込まれている本人には難しいだろう。吹き込んでいる側は、本当にうっかりでやってしまったのなら、誰かから指摘をされれば止めるだろう。だが、指摘が出来る人物が必要だ。
また、意図的に吹き込んでいる場合は、その適切性を問える人が必要だ。
では組織において誰がそれを担えるのか。
それは一般的な倫理の観点で言えば別の上司等であり、機能しているのならコンプライアンス担当部門であり、精神的な医学の側面で言えば産業医・主治医ではないだろうか。(少なくとも私の主治医は気づいていた)

②パワハラ・PIP・退職強要で不適切な対応があったという私の記憶が過誤記憶である可能性。
もしそうであれば、会社の主張どおり「適切なPIP・退職勧奨」であり「安全配慮もされていた」ことになる。
こちらについては検証が比較的容易だ。録音した音声やスクリーンショットの確認である。労基署への申立時にも確認し、また、一部の証拠は提出もしているため、「なかった」ことの記憶が「あった」と変わっていることはないと思うが、念のため改めて確認を行い、この本にあるとおり「自分自身の思考と考え方の癖の理解」をしてみたいと思う。

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