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「何聴いてるの?」 - 2022年10月

そろそろ今年のAOTYでも考えるかと思ったら、今年の前半に何を聴いていたのか忘れてしまった。これからは実験的に「毎月よく聴いていた曲」と「何で聴いていたのか」を雑記としてまとめておこうと思う。タイトルは何となく『リリィ・シュシュのすべて』のセリフから取った。

Spotifyの視聴経歴が分かるアプリ、Spotistatsから、その月の再生ランキングの30位内の10曲を選んでいる。10月リリースの作品には(新譜)を付けている。10月は新譜が沢山。まだあまり新譜を聴けていないけど、音楽の秋に早く追いつきたい。

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1. Universe - Live / Official髭男dism (新譜)

新譜は今年3月のたまアリ公演のライブアルバム。昨年2月に「Universe」がシングルとしてリリースされた時から、この曲が本当に好きだった。「がんばれ」や「元気を出そう」のようなファイトソングではなくて「一緒に帰ろう」という言葉のような安心感。聴くと意味もなく元気になれる、それこそがポップソングの魔法だけど、まさにそれを体現しているのがこの曲だと思った。そんな「Universe」のライブアレンジには度肝を抜かれた。ライブではセットリストの1曲目、イントロのアレンジはフロアからの手拍子とピアノのソロから始まり、徐々に加わっていく楽器隊、これから始まる期待感に胸が躍る。元々、強度があるのにここまで完璧になるのかと聴きながら思わず「ウワ〜!」と声が出る。というか凄まじ過ぎてちょっと引いた。アイデア的には少しくるりの上海蟹っぽい入りだなとも思う。

2. Looking For Somebody(To Love) / The 1975(新譜)

真実の愛を探してって…コト!? 待ちに待ったThe 1975の新譜。あまり熱狂的なファンではいたくないのだけど、先行シングル含め全曲が良い。「どれが先行シングルでもおかしくないじゃん!」って思ってしまうぐらいだからやっぱり熱狂的なファンなのかもしれない。特にこの「Looking for Somebody (To Love)」は、青春映画で主人公たちが街中を走っている時に流れてそうな音楽でめちゃくちゃ良かった。今作はパフォーマンスMVのような動画も多く配信されているけど、その映像もとても良い。音楽的にはなんとなく映画『Footloose』のメインテーマを思い出す。マックのCMに使われていたアレ。今回の新譜はU2だったりTOTOだったり思い浮かぶ音楽が多くて楽しい。

3. Daydreaming / The Big Moon(新譜)

The 1975と同じ週にリリースのThe Big Moonの新譜から。もやもやとしていた日に、たまたまThe Big Moonのライブがあって、観に行ったがこれが大正解。未だに本調子とは言えないけれど、確実にメンタルに効いた。彼女たちは本当に楽しそうに楽器を弾いて歌を歌う。それでその歌が上手いのなんの。音源よりも上手くてびっくりしてしまった。マタニティフォトが印象的なジャケ写の通り、今作は妊娠を通して母親になるという経験をもとに構成されているらしい。同級生の子たちがちらほらと結婚し始めた今年、早い人だと、もう既に子宝に恵まれている人もいる。正直全く想像がつかない。そんな話を聞くたびに嬉しい気持ちを抱きながらも、僕はどうなるのかと怖くなっては「どんな後悔を持っていこうとも 家に帰ったらとにかく私を愛してね」と歌う彼女たちのしなやかさに憧れている。

4. potage / tricot

9月に観に行ったtricotロンドン公演のラストナンバー。家に帰って、聴き直していたら、思っていた以上にしっくり来てしまった。自分のものにはならない人への諦めのような曲に見えて、最後の歌詞が「あたしの一生をあげる」で終わることが本当に良い。直近の失恋で気づいたことと同じだった。自分を破滅させる勢いで好きな人に全てを捧げてしまう自分がいる。自分勝手に全てを捧げるくせに、相手の全てが欲しくなってしまう。まさに不健康。先日、友人と結婚観の話をしていて「紙切れ一枚で相手の身も心も縛れる結婚は、最高で最低」と話したことを思い出した。安野モヨコの『ハッピーマニア』にもあったな。愛に飢えてるの?

5. There's So Many People That Want To Be Loved / Sorry(新譜)

「♪ 愛されたい人がたくさんいるの♪」、北ロンドンからSorryの新譜。歌い出しが「愛されたい人は沢山いるのに、あなたは誰にも触れない」だったり、寂しさの象徴として「宇宙飛行士」って言葉が出てきたことに、なんとなくAlabama Shakes「Sound & Color」のMVを思い出した。あの曲にも「人に触れたい」って歌詞が出てくるし、MVはもう誰にも会えなくなった宇宙飛行士の話だったような。この曲の「トイレの個室で頭を抱えて、灯台のように突っ立って電車を待っている」という歌詞ほど寂しい歌詞もないと思った。ドラマチックにならない寂しさの象徴を、端的に捉えていてウッとなる。身に覚えはないのに身に覚えがあって、鬱々と苦しくなってくる。今思うとイギリス来てから寂しくない日なんてなかったような気がするからか。やっぱり愛に飢えてるの?

6. 変身 / バズマザーズ

先月からまともにバズマザーズを聴き始めた。バズマザーズでフロントマンを務めている山田亮一の前身バンド、ハヌマーンが本当に好きで、ハヌマーンこそが彼の完成形だと思っていたけれど、バズマザーズはさらにねじ曲がっていった怪物バンドだったことに気づく。ハヌマーンは学生時代の憂鬱の全てだった僕にとって、バズマザーズは20代の憂鬱の全てなのかもしれない。他人の人生に歯軋りばかり、何もしないくせに明日には何かが変わると信じている。だからかサビ前の「嗚呼 今日も世界は俺の才能には気付かない」に全てが込められ過ぎてて泣けてしまう。脳死で麻雀ゲームをしている時に、ぴったりなBGMなことも救いようがなくて本当に好き。彼の作る音楽が本当に好きだけど、売れないからこそいつまでも鈍い輝きがあるのかもしれない。山田亮一は今どこで何をしているんだろう。

7. Los Chrismos / Los Bitchos(新曲)

今年2月にデビューアルバムをリリースしたてのLos Bitchosの新曲。アルバムを聴いてから、ずっと観たいと思っていたら、グッドタイミングで先月観に行ったPavementの前座を務めていた。そのライブでも披露していたこの曲は、ホリデーシーズンに合わせた新曲らしい。途中で入ってくる謎のフレーズ「Christmas Time, Sexy Time!」の語幹が面白過ぎてジワジワと来ている。なんなんだ「Christmas Time, Sexy Time」って。これでコールアンドレスポンスしてたぞ。サーフでサイケな音楽性もあって、風邪を引いた時に見る夢のようなカオス感があって面白い。Twitterで調べていたらハライチの澤部が好きという謎情報も出てきた。確かに来年あたりのフジロックに出ていそうな気もする。

8. 秋の夜  / FOMARE

展開も分かりやすいし、歌詞も分かり易すぎるけど、たまに聴くと大学生の時はこういう音楽が好きだったな、と思い出してほっこりとする。大体の大学軽音サークルは秋の学祭に合わせて引退があると思うけど、最近の大学生の中では、この曲が思い出の一曲になる人も多いんだろうな。FOMAREも売れてるし、秋がテーマだし。軽音サークル出身の人はみんなそういう思い出の一曲がちゃんとあって、社会人になってもそれを聴くたびにサークルのこと思い出したりするのかな、と考えていた。きっと趣味も変わるし、滅多に聴かなくなるんだろうけど。自分の引退枠はマイヘアだったが最近は聴かなくなった。でも聴くと思い出補正でとんでもなく良かったりする。ライブもそうだし前後のスタジオの時間や安酒を飲んでいる時間も今は愛おしい。

 9. ぼくのコリーダ / ドレスコーズ(新譜)

ドレスコーズの8thアルバム『戀愛大全』がリリース。夏がすっかり終わってから、夏がメインテーマのようなアルバムを出す志磨遼平がニクい。タイトル通り恋愛ソングで固められた今作は、彼のソングライティングの魅せ所。「ぼくのコリーダ」も夏に終わってしまったような恋の曲だけど、クサいぐらいの歌詞にめちゃくちゃ入れ込んでいる。自分が今年の夏に会えずじまいのまま失恋してしまったことや、もしかしたら失恋せずに過ごせた夏があったかもしれないことがキツくて、聴きながらアホみたいに泣いた。勝手にこうやって、一方通行に思っていたところが嫌われる要因なんだろうけど。あとはギターソロが異常にカッコいい。涙腺に刺さる。過ぎ去った今年の夏に想いを馳せながら、来年の夏にどんな気持ちで聴く事ができるのかを心待ちにしている。

10. 歌の生まれる場所 / 寺尾紗穂

人を憎んで生きがちだから、本当に綺麗なものに触れると簡単に涙が出てしまう。10月のある日の朝、外を歩きながら、たまたま流れてきたこの曲でボロボロと泣いてしまった。僕にとってそれは音楽だった。遠い昔、大切にしていた人に「優しい人のふりをするな」と陰口を言われていたことがあって、人に優しくするぐらいしか取り柄のない僕は本当に悲しかった。時間は経てど、未だに考えると黒いもやで溢れるような気持ちになる。けれども、それ受け入れられてこその優しい人なのかとも思う。だから黒いもやがふっと湧き上がるたびに聴いて、白に戻す特効薬のような音楽。どうせ傷つくなら自分だけでいいし、擦り切れるたびに、少しづつ受け入れられるような気がする。全てを許せる人になって、ちゃんと自分を救ってあげたい。聴くたびに、もう会えない人や、自分のことを嫌っている人の幸せを祈る。

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11月も続けられますように!

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