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静かな感動、映画『PERFECT DAYS(パーフェクトデイズ)』

主演の役所広司さんが、カンヌ国際映画祭で男優賞を受賞した「パーフェクト・デイズ」を鑑賞。
セリフがほとんどない映画って聞いてたし、レイトショーでその前にビール2杯飲んだので(笑)うっかり寝てしまったらどうしよーなんて思ってたけど、いやいやどうして、スクリーンに釘付けだった。

起承転結のほんどない、あるにしても「日常」という言葉で収められてしまうような描写が続くにも関わらず、何故か心を揺さぶられる・・・。
気付けば私は、ちょっぴり泣いてた。
全然泣くようなストーリー展開でもないのに。
なぜ涙が出たのか?
それは

人生の美しさに心を打たれたから。

朝起きて、車で仕事(トイレ掃除)に向かい、帰ってきて銭湯に行き、お決まりの大衆居酒屋で夕飯を食べ、帰宅後古本屋で買った文庫本を読みながら眠りにつく・・・
作中ではそんな主人公・平山の日常が繰り返される。何度も何度も。

何度も同じ日々の繰り返しを見ている、ただそれだけなのに、何故か心が満たされるのだ。
なんなら、何も起こらないでいいから、永遠にこの日常を見ていたいとすら願ってしまう。

時折挟まれる木漏れ日の描写。
その光と影のコントラストから一瞬の輝きが生まれるように、一見何もないように見える平凡な毎日でも、日々の清濁併せ飲んだ中にある小さな幸せを、平山が大切に慈しみながら生活しているのが伝わる。

そんな平山に小さな羨望を覚えつつ、一方で現実世界では、淡々と過ごすどころか刺激と変化ばかり求めている自分を振り返り、複雑な気持ちになったのは、きっと私だけじゃないだろう。

「もっとやさしい人間になりたい」


映画を観ながら、ずっとそんな事を思ってた。
イラッとすることもモヤモヤすることも、単に私が日々のアンテナをどこに向けるかだけの話に過ぎない。
もっと広い心で人と接することが出来る。そんなやさしい人間になりたい。

年始から日本は大変な状況にある。

「いま在る幸せに感謝する」
そんなことは誰だって「頭」では分かってるけれど、平山の人生を通してその豊かさを、「心」で体感出来るのがこの映画の素晴らしさだ。

でもそのためには、「心のゆとり」もやっぱり必要で。
何故なら感謝は、自然に生まれるものではなくて、「どこに目を向けるか」意識である程度コントロール出来るものだから。

折しも今年の漢字一文字を「感」に決めたけど、感謝を感じる心のゆとりを保てるような環境調整をしていこうと、映画を観ながら改めて決意。


ちなみに、この映画は「渋谷トイレプロジェクト」の一環として生まれたものだそうだけど、見事に「これからは公共トイレをもっと綺麗に使おう」とも思った。
「トイレは綺麗に使いましょう」なんて、一度も作中で言っていないのにね。
声高に標語掲げられたりするより、よっぽどメッセージ伝わる。天晴!

不安や心配で心揺さぶられる出来事が続いている今だからこそ、どこに自分の意識を向けるか?に気付かせてもらえるとても素晴らしい映画だった。
この映画に感動できる自分を喪わずにいたいなあ。

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