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#6 最後に生徒に会った日


涙が出て教室に入れなくなり、5日目。

約束通り、昨日はじめて鍼に行ってみた感想と今後についてをスクールカウンセラーの先生とお話しするため、学校に来ました。


朝から職員室から離れた別の部屋で、事務の方や支援員の先生とお話しし、すこし事務仕事を手伝ったりして過ごしました。


この日は鍼の効果もあったのか、表情筋も戻ってきて、会話に少しずつ相槌も打てるようになってきていました。



わたしの学校では、教室に入りづらい生徒が通う、登校支援教室が週に2回開かれています。

倒れた時にわたしを助けてくれた支援員のベテラン先生は、そこの先生をしている方です。


わたしのクラスにも1人、1学期の最後の方にぱったり学校に来れなくなった子がいました。

制服に着替えて行く準備まではできるけれど、玄関でうずくまってしまう…と。

(今ならその気持ち、とてもよくわかる…。
わたしも一緒なんだ。つらかったね、毎日準備までできて、本当によく頑張ったねって、心の底から言えます。
隣にすわって言ってあげられたらなぁ…)



面談や家庭訪問を重ねた末、その子は、2学期からは自宅でオンライン授業を受けつつ、週1回はその教室に通うことに決め、
わたしが倒れた週に、はじめて支援教室に参加できたのでした。(すごい!)


中学の頃のわたしと同じ悩みを抱えている子だったから、とても思い入れのある生徒でした。


会えるなら会いたいな。
でも今のわたしの状態で、普通に会えるだろうか…


支援員の先生に

「自信がないなら会わない方がいいよ。
生徒が心配しちゃうから。
でもいけそうなら、プリントだけ渡してちょっと話してみたらどうかな?
きっと喜ぶよ😊」

と声をかけていただいたこともあり、意を決してその子に会ってみることにしました。





人の輪に入るのが少し苦手なその子は、わたしが支援教室に入って行った時、同じ教室に通う生徒数人が話している中にいて、ちょこんと座っていました。

それだけでも感動したわたし。

「いま、だいじょうぶ?」

と声をかけると、静かにこっくりうなずいて、夏休み中のことや頑張っていることをお話ししてくれました。


「夏休みは怪我なく病気なく過ごせたんだね、元気そうでよかった〜!」

「数学予習してるの!?ひとりで!?
独学ってこと…!?えっ!
じゃあ今の数学の授業は楽勝なの!?
すごいじゃ〜〜〜〜ん!」

「オンライン授業もおうちでコツコツ受けてるんだねぇ、
すごいねぇ…!
せんせいでさえ、長時間パソコンの画面見てると頭くらくらしてくるから、ほどほどでいいからね。
でもすごいじゃ〜〜〜〜ん!」

「登校支援教室は来てよかった?
そっかぁ〜よかった〜☺️
次はいつ来る? えっ、次も来る!?
すごいじゃ〜〜〜〜ん!」
(週1は頑張って来るという話だったのに、週2で来たいと本人は言ったのです。
すごいですよね…こどもって…)


クラスでは硬い表情をしていたその子は、支援教室では少し安心した様子で話をしてくれました。

わたしは、その子にあげたかった言葉を、精一杯の笑顔で伝えました。

やっと、学校でほっとできる居場所をこの子に作れたような気がして、すごく嬉しかったのです。


しかし、その子を玄関まで見送った直後、
急に身体の力がガクッと抜けました。
ちょうど給食の時間だったのですが、ご飯を食べるよりもまず、休みたい…


フラフラと椅子に座って、机に突っ伏しました。

あれ?
あの子と会えて嬉しいのに、身体の力が抜けて動けない…



その様子を見たスクールカウンセラーの先生は、わたしに言いました。


「せんせい、やっぱり、
心療内科を受診しましょう。
そして、カウンセリングも受けてみましょう。

自分を守る盾と、自分に合った戦う武器をオーダーメイドしてもらうために…
行くべきだと思います。
このままエネルギーがないままここで働いていたら、

せんせいは壊れてしまいますから…」



休みがまた1週間延長され、
わたしは心療内科を受けることになりました。


つづく…

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