見出し画像

【読書感想】西洋美術史入門

画像はメタリックな梅です。もうすぐ春ですね。

毎月月末になると続々と読書感想を投稿する謎の秘密結社でおなじみジェイラボのけろたんです。今月も組織構成員のゆーろっぷさんとイヤープラグさざなみさんと一緒に本を読みました。取り上げたのは『西洋美術入門』(以下、本書) です。イヤープラグざざなみさんによる書評、イヤープラグさざなみさんとゆーろっぷさんによる読書感想note記事は次のリンク先です。

ゆーろっぷさん、さざなみさんとは 英国 The National Galleryのバーチャル見学にも行きました。本書をきっかけにして楽しい時間を過ごすことができました。ありがとうございました。

この記事では、まずこの本の概要と、副読本としておすすめの書籍を紹介します。そして、「描いてあるけれども意味が明らかではないものを解釈する営み」から着想を得た短いエッセイを書きます。

本の概要とおすすめの副読本

本書は主に3パートで構成されています。
美術史の方法論や概念を紹介する導入パート、それらの視点にもとづいて実際に絵画を解釈していく実践パート、最後にジャンルごとの代表作をまとめて紹介する通史パートです。コンパクトな一冊で中世から20世紀までの絵画の歴史と着目点を一気通貫で知れるので、美術史の雰囲気を掴むのにおすすめです。新書ということで紙幅、色彩表現には限りがあるため、絵画のディティールはインターネットの画像や他の書籍を参考にしながら読みました。
なかでも『超絶技巧の美術史』は、本書の副読本としておすすめです。(共著者の一人が本書の著者です。)本書で扱われている作品の多くがフルカラーで収録されており、1作品につき、フルサイズの作品+作者の紹介+着目点へのズームアップ画像というまとまりで解説されています。モノクロ画像だけではものたりないという場合は、ぜひ一緒に読んでみるとよいと思います。

難しい本を読むには

さて、絵になにが描かれているかは、それがポルノ的であろうとなかろうと「見ればわかる」ものだと思います。ただ、見たままでわかるとは限りません。美術史が必要になるのは、生きる時代も場所も違う人が、生きる時代も場所も違う人のために描いたものに意味を見出す手がかりとなるからです。ただ絵を眺めるだけでも、この人物の手はなぜこんな形をしているのだろうか?この変なお面はなぜそこにあるのか?その表情にはどんな意味があるのか?作者はなんでお面を置こうと思ったんだ?などなど、疑問はつきません。本書の手引に沿って、絵がかかれた時代背景や、物体の意味付けから、という視点から絵画全体のメッセージの解釈を試みることができます。

ところで、絵画でなければ、読めないものを読むにはどうしたらいいのでしょうか?以下、目下『ゲーデル、エッシャー、バッハ あるいは不思議の環』を読んでいるのですが、わかったようなわからないような状態が続いておりストレスが増してきています。ストレスを解消し、精神衛生を取りもどすために現状を整理してみます。わからないわからないと言ってもしょうがないので、まず、著者がなにかを言いたい、そのためにこの本を書いている、ということを仮定します。何がしたいのかわからない、ということと何をしているのかわからないといことを分離してそれぞれ攻略するためです。

著者の意図

『ゲーデル、エッシャー、バッハ』(20周年記念版) の前書きには、意識と論理の関係云々という記述がありました。初版への誤読を解き、読者のための読解の手引となることを意図して新版で追加された記述です。一方、自分が現在呼んでいる第1部の後半では論理学的ななにかを再構築しています。本書も1/3を終えるところまで読んでも意識の話は比喩的に語られているのかいないのかわかったようなわからないような形でしか説明されません。まえがきに対する答えを探すように本を読んでいましたが、論理パズル的色彩が強いパートは、あくまで意味づけだけをトレースするように読んだほうがよい気がします。そもそも、アタマの中で起きていることを形式化しているのだから、読めばサクッとわかるはず、という見通しが甘かったかもしれません。記号操作の訓練は足りていないのを自覚して、パズル的な楽しみは2周めにとっておいて先に進むのが吉!

著者の方法論について。音楽、数学、絵の間の同型対応、というのも繰り返されるテーマですが、それぞれの対応づけは、結構雑です!!!プログラムを書く人には、レシピはプログラムである、とか、楽譜はプログラムである、ぐらいの言明だと思うとよいのではないかと思いました。

知性の秘密とか、意識の不思議とか、そういうことを考え始めると自分の頭の良さに意識が向くので読書に集中できなくなります。そういうことはひとまず忘れて、単に引き続き読もうと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?